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それから4日。
ダンジョンアタックを始めてから一週間が経った。
戦いにも馴れ。撃破数も、二桁を超えた。
―――連コインは、三桁を越えたが些細な事だ。
しかしながら、だからと言って強くなった実感は無い。
どうやら……レベルアップは無いようだ。
そりゃ流石に、装備も揃え、戦闘経験もそこそこ積んだ理由なので、一週間前のオレとは比べ物にならないくらい戦えるようにはなった。
しかし、それは純粋に馴れでしかなく。ゲームチックなレベルアップによる身体的な強化や、魔法や特技の習得の兆しは全く無い。
未だに殴られたら普通に痛いし、むしろ死ぬ。あっさり死ぬ。
―――防具が欲しい。切実に防具が要る。
全身甲冑とか落ちてないか?
大きくて逞しい子鬼とか倒せば手に入るだろうか?
某有名ゲームと違って、倒したところで宝箱を落としたりしないからありえないか……。
もっとも、手に入ったとしても、重くて動けないどころか、装着すらままならないだろうから意味が無い。
そんなオレの現在の装備はコレだっ!
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頭部 地毛
胴部 レザージャケット
カッターシャツ
腹部 週刊雑誌
背部 背嚢
腕部 鉄定規
手部 指貫レザーグラブ
脚部 レギンスジーンズ
手鏡
足部 ヒモ止め改造スリッパ
主武器 錆びた長剣
副武器 黒曜石の斧
背嚢内部
飲みかけのペットボトル
タオルケット
月刊雑誌
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お、おぅ……。
―――ろくなもんがねぇ!?
せめてもの防具にと、逆手に鉄定規。腹と背中に雑誌を仕込んでみたが効果は微妙だ。
それでもまあ、無いよりマシだろう……。
オレは軽くため息を付き、脳内で地図作り作業をしながら、光源不明の仄暗い通路を進む。
そして、某ステルスゲームの伝説の傭兵ばりに、壁貼り付きからの背後からの刺殺を太ましい豚面に決める。
剣術の経験なんて、それこそ学校で少し習った剣道くらいなモノだが、力任せに刺す程度ならば誰だって出来る、オレにだって出来る。
それでも、射程を考えれば、黒曜石の槍の方が良いが、敢えて剣を使う事にした。
これは別に剣がかっこいいからとかヌルい理由ではない。
石の槍と、錆びてるとはいえ金属のどちらが頑丈か? それが答えだ。
それに槍術や棍術を習ってるわけでもないオレじゃ、懐に入られたら詰む上に両手が塞がるのは厳しい。
なぜ金属バットではなく、奪いとった錆びた剣を使ってるかといえば、理由は単純だ。
金属バットも悪くは無いが、鈍器とナマクラとはいえ刃物なら、どっちの方が殺傷力が高いか分かるだろ?
そんな理由でオレは、錆びた剣をメインに使うことにした。
ちなみに石斧は投擲用だ。
本当なら槍と剣を状況に応じて使い分けるのがベストなんだろうが……鞘が無いので、剣をむき身で持つしか無いため断念せざるを得ない。
しかしこいつら何匹いるんだ?
……まさかと思うが無限湧きって事は無いよな?
3体倒したところで、増援に囲まれて逃げ場を失ったオレは―――
迷宮の奥で多くのオークに樫の木の棒で撲殺され、死後の世界に送られる……ってか?
―――などと、下らないダジャレを思い浮かべながら意識を閉ざしたのだった。