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「少年よ、この先に居られるお方が我が主君である。
先触れと口上は我が済ませるが故に、お前は呼ばれるまで口を閉じたまま平伏していれば良い」
「……分かった。
だけど言葉遣いはどうすれば良い? オレは敬語とか苦手なんだけど……」
「学の無い平民……いや、常識の異なる異世界の者に、儀礼を求めだけ無駄な事など承知している
重要なのは言葉使いではなく態度である。
愚者であろうと、畏敬の念を持って接するならば、多少の無礼など問題にはならぬ」
「そりゃよかった」
聖騎士に相談した結果。
主君である女神様なら、ダンジョンコアを破壊せずとも、オレが元の世界に帰る方法を識っているかもしれないらしいので、オレは聖騎士に頼み、女神様と合うことに成った。
なんで、こんな所に女神が居るのか疑問に思い尋ねてみると、魔王のせいだと返ってきた。
詳し話はごまかされ聞けなかったが、どうやらこの世界では、神より魔王の方が強いらしい。
「付いたのであるが……くれぐれも無礼な真似はせず、慎むが良い」
「了解っ!」
「……」
敬意を態度で示すため、本やTVで見た、額に手刀を当てるタイプの敬礼してみたが、無言で首を振られた……解せぬ。
豪華で質素な宮殿の奥にある離宮っぽい所に辿り着き、入口となるドアの前で、聖騎士が前口上を述べる。
シミも傷もない新品のようにまっさらな白磁の扉をオレは仰ぎ見る。
この先に女神が居るのか……どんなだろうな?
やっぱりよくあるシーツに穴を開けて、頭から着たみたいな感じのファンタジーにありがちな服装をした美女かな?
それとも美少女? 美熟女?
いやまて、人間型とは限らない。
もしかすると動物とか、植物とか、まるっきりバケモノみたいな造形をしてるかもしれない。
あーでも、この宮殿の感じからするとかなりベタな雰囲気があるから、普通にベタな女神が居そうだな……。
しかし、人気がないな? 使用人……天使とかいないのか?
「何をキョロキョロしている?」
「あ? いや、誰も居ないなーっと、思ってね」
「ああ、ココには女神様と我しか存在せぬ」
「へ? 二人っきり?」
「少し違う。尊き一柱と卑なる一人と言うべきである」
「……天使とかいないの?」
なんでも魔王に捕まったのは、時の女神の一柱だけで、天使や他の神々は、魔王に討ち取られたか天界の奥で隠棲してるそうだ……なんじゃそりゃ?
ちなみに聖騎士は、魔王軍との戦いに敗れた後。女神の世話役として魔王に拾われたらしい。
魔王……強すぎだろ!?
「さて、お喋りもここまでだ……控えるが良い」
「分かった」
離宮の奥。一際、豪華な部屋に案内されたオレは、女神と対面する。
そこには、絶世の美女であり。言葉でも絵画や写真ですらも表現しきれないほどに隔絶した美貌を持つ女神が居た。
「あら? ちょうどいいところにきたわ! さあ、部屋の片付けをしてちょう……だ…い……え、誰っ!?」
「我が主よ! 客人を連れてきたのであるが……またであるか? はぁ……」
「……腐海?」
女神自身に文句はない。目の前にいる圧倒的な存在感に非の打ち所など無い。
しかし、場所が問題だった。
元は豪華で、静謐な部屋であったと思われるが……今のオレの目には腐海にしかみえない。
どうやら女神は女神でも、残念女神であり。
今話題のような気がする、片付けられない系女子であった。




