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門番が出してきた問い掛けの答えは普通に「人間」で正解だった。
ベタなシチュエーションに、ベタなクイズなら、答えもベタで良いんじゃないかと考えた結果だ。
「汝を賢者と認めよう。
―――先に進むが良い」
「お、おう……」
正解はしたが、どうにも釈然としない気持ちのまま生返事を返し、開いた扉への中に、オレは足を進める。
入った先は広いホールであり、見上げた際には色とりどりのステンドグラスで飾られ、正面と左右に通路が伸びている。
しかし、中央には白馬に乗った聖騎士の立像がある。
どうせ動くんだろうな……と、オレはため息をつく。
しかして、実際に立像は動き出すが……それは想定とは異なり。立像に亀裂が走り、内側から閃光が漏れ始める。
「おおっ!?」
パラパラと剥がれ落ちるように崩れた立像から、生々しい白馬の騎士が飛び出す。
「やーやー! 我こそは! 時の女神に剣を捧げ! 神の庭に住まうことを許されし者!!
―――主の安寧を祈り! 主の守護を担いし天の使徒である!!
「お、おおう……?」
「罪深き、邪悪なる侵入者よ……断罪を下す!
―――疾く滅びよっ!!」
「は? ……あぶなっ!?」
予想外の展開に頭が追いつかないまま、オレは突き出された騎兵槍を間一髪で避ける。
「抗うか……愚かな!
―――贖罪と断罪を与える我が剣に抗えば、その分だけ罪は重くなるだけだっ!!」
「ふざけんな! 何処が剣だ! 槍じゃねーか!?」
「……贖罪と断罪を与える我が槍に抗えば、その分だけ罪は重くなるだけだっ!!」
「言い直してんじゃねーよ!?
―――我は人生を呪……」
攻撃を受けたことで、オレは反射的に詠唱を始め。流れるように杖で方陣を描き魔法を行使する。
「……我が言葉は正された。
―――次は、汝の性根を正すとしよう!」
言葉による応酬に続けながらも、相手は攻撃の手を緩める事はなかった。
しかし、騎槍突撃は、一度避けてしまえば隙だらけだ。
「……よ 嗤え―――火を放てっ!」
ましてや広いとはいえ、ココは室内。馬を乗り回すには不向きな場所だ。
助走が足りないので突進力は鈍るし、迂闊に突撃すれば壁や柱に激突して自爆する。
言動や対応からも垣間見れたが……もしかして、この騎士、アホなのではなかろうか?
そんな事を考えながら、オレはお馴染みの攻撃魔法を打ち出した。
爺さんからのアドバイスで、魔術戦のコツを聞いた。
移動すると魔力が霧散するのは、方陣が崩れるからだ。
ならば方陣を崩さずに移動できれば、なんの問題もない。
しかし、それをするには精密な魔力操作が必要で、魔術師でも無いオレに出来るはずもない。
だが、もう一つ方法がある。
それが、発動体を使うことだ。
発動体には魔力を一時的に保持する機能があり。それを経由して使えば、方陣は発動体に合わせて移動するようになる。
そして、オレが今持っている杖。コレは当然だが発動体だ。
魔杖としての特殊能力は不明だが、単なる発動体として使えば問題はないっ!
「牽制か知らぬが初級魔術なぞ使いおって……真面目に戦わぬつもりか?
―――小童が! 我を愚弄するかっ!!」
迫り来る攻撃を避けながら、カウンター気味に打ち出したファイアショットは、聖騎士の顔面に直撃したが、怯ませることすら出来ない。
まあ真の問題は、オレが使える程度の魔法じゃたいした威力が無いってことだ……。
「違う! コレがオレの全力だっ!!」
「全力? はははっ! ……この程度で全力だと? 巫山戯るでない!」
「ふざけてねーよ! お前こそ、オレ如き子供あいてに本気になるなんて恥ずかしくないのか!」
「ふん! 小童が……だが我を欺こうとしても無駄である!
姿形こそ貧弱なれど、その邪悪なる気配は誤魔化せぬ……我を舐めるでないっ!!」
剣もない、魔法も通じない。
このまま避け続けても、打つ手がなければ勝ち目はない。
―――しかし、どういうことだ?
どうもコイツは、残念な感じだが、騎士は騎士。それも聖騎士だ。
コレが入り口に有ったような試練とかそういった類ならば、戦いは避けられそうにもない。
だが、どうも違うっぽい。
オレのことを邪悪な罪人扱いしている事から、ソレがコイツが戦う理由だろうと思う。
「何の気配だよ! オレはタダの迷い子。普通の高校生! 一般ピーポーだっ!!」
だったら、オレが邪悪ではない。罪人ではないと釈明できれば戦いは避けられるはずだ!
「はっ! 邪神の祭器である屍蝿の王笏を携えた邪教徒が何を言う!!」
「……え、コレのせいかよっ!?」
オレは思わず手元の杖を見る。尖端に意匠された髑髏がケタケタと嗤う。オレも釣られて力なく笑った。
……さあ、どう言い逃れようか?




