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キラキラとやたら眩しいお宝の影から覗き見る先には、二頭の竜がいる。
片方は、元からいた方と比べ、二回りは小さく。恐らく仔竜だろう。
まあ小さいと言っても、体長4~5mはあるから十分デカイし、オレが勝てるビジョンが見えない。
いちおう爺さんから助言を貰い、添付された資料を読んでみたが……。
竜種は、爬虫類と鳥類と哺乳類の良い所を集めた優成種である。
体格は個体差が大きく。トカゲに近い四足歩行タイプと、腕の生えた蛇に近い蛇足タイプに分けられる。
竜眼は、高純度の水晶体である。魔力を詠み。人には見えないモノをも捉える力があるとされている。
竜鱗と称される外皮は、鋼鉄に勝る強度を持ち。耐熱耐火耐刃耐酸耐冷耐毒など、様々な耐性を持つが、衝撃に弱く剥がれやすい。
竜骨と呼ばれる骨格は、軽くて頑丈で魔力の通りも良く、その延長線上にある竜牙や竜爪も同様に鋭く堅い。
竜血は体色により異なるが、赤竜なら高温で、熱湯に近く。緑竜なら猛毒で、強酸であるように、対策なし浴びるとひどい目に会う。
竜角は、竜の躯の中で最も頑強で、天然の高性能発動体でも有り。魔法抵抗の要とされる。
竜髭は、蛇足タイプに多く見られる特徴で、目を頼らない超感覚的な知覚力を発揮するために必要だと言われている。
竜翼は、皮膜と骨から構成され。見た目以上に柔軟且つ強固な作りであり。妖力と合せることで航空力学を無視した軌道で飛ぶ事が出来る。
また、翼竜など、羽毛が生えている種も存在するが、それらはよく似た別種ではないかと議論されているが結論は、まだ出ていない。
竜息は、体色によって大きく異なり、赤竜は豪炎。白竜は閃熱など。体色に即した属性の息を吐く事が確認されている。
魔術能力に関しては不明だが、古竜など一部の上位種が、角を発動体として魔法を使うことが記録には残されている。
また、魔術を使える個体を、竜ではなく龍と呼び。近似種として扱うべきではないかとの意見もある。
討伐法としては、攻城兵器や専用の対竜兵器を用いる力押し。
物量によるゴリ押しで、竜鱗を剥がしきってからの特攻。
逆鱗を狙った一撃必殺。などが挙げられるが、ドレも現実的ではない。
強力な兵器を用いようと、それを扱う者や、兵器そのものを破壊されては無意味であり。幾人がかりであろうと、まとめて薙ぎ払われて仕舞えば終わりである。
竜には、一つだけ逆さに付いた鱗があり。それは心臓の位置に等しい。故に逆鱗を貫く事が出来れば、心臓を射抜き即死させる事ができる。
しかし、逆鱗は他の鱗と違い、そう簡単に剥がれることも無く。貫くにはかなりの技量と幸運が必要になる。
さらに、ソコが弱点であると竜自身が知っているため、迂闊に手を出すと竜を激高させ、“本気”にさせてしまうので注意が必要である。
竜の性格もまた、個体差が激しいが、概ね高慢で、人如きが何をしようと本気になる事は無く。それが唯一付け入る隙でもある。
逆に言えば、竜を本気にさせてしまえば人に勝ち目は無いので注意が必要である。
とは言え。竜が本気になることなど滅多に無く。高いプライド故に、不利になろうと逃げることもなければ、卑怯と罵る事もなく。
たとえ自身が討ち取られる寸前になろうとも、怒りに我を忘れるような醜態をみせることはないので、普通に戦う分には“本気”にさせてしまう心配はない。
ただし、逆鱗にふれた場合と、仔竜や竜卵に手を出した場合は話は別であり。
人に友好的で、博愛の白銀竜と呼ばれた古竜ですら、怒りに我を忘れ。三日三晩暴れ尽くし。三国を滅ぼしたと言う故事が残されている。
討伐せしめるなら、攻城兵器を揃え先制。軍による物量で竜鱗を剥がし。屍山血河を越えて、英雄が対竜兵器で脳天を撃ちぬく……くらいはする必要があり。
たとえ勇者であろうとも、単独での討伐は夢物語に等しいと心得るべきである。
―――オレに、どうしろと?
対竜兵器はおろか、攻城兵器すらなく……。
軍隊どころか仲間もいない。ぼっち街道まっしぐらなオレに……どうしろと!
しかも相手の竜は二頭いる。
一対一でも絶望的なのに……オレに、どうしろとっ!?
[増援プリーズ]
[物理的に無理じゃ]
[なら魔法的にプリーズ]
[魔法的にも無理じゃよ?]
[\(^o^)/]
残る可能性は一つ。逆鱗の撃破だ。
失敗すればどの道終わりなら、一縷の望みに掛けるのも有りかもしれない。
一縷も無いかもしれないが、そこは敢えて考えない。
それにおあつらえ向きな“武器”も有る……。
絶望から視線を反らし、お宝の山の方に目を向ける。
きらめく金銀財宝ではなく、その影に埋もれるように。それでいて異常に、存在感の有る剣をオレは見る。
他にも槍や弓、斧などもあるが……オレが最も目を惹きつけられた逸品。
白銀の剣身に、金で飾り付けられた長い柄。刃渡り1m程の片手半剣。
見目麗しく静謐も感じさせるデザインの剣なのだが……纏う雰囲気は“邪”そのもの。
剣身周りの空気が歪み、毒々しい色の陽炎が立ち上り。じっと見てると吸い込まれそうな感覚を与えてくれる……。
―――もうこれ、本能的にヤバさしか感じないだけど!?
恐らくは妖刀や魔剣に類する、禍々しくも強力な必殺武器……。
コレを使えば……もしかすると……。




