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<38>

 竜の巨体を見た瞬間、オレは死を覚悟したが……どうやら眠っているようだ。

 

 目を閉じて、鼻提灯をふくらませる姿はコミカルで、可愛く……は、ないな、やっぱ怖いわ。

 

 ソレはソレとして、今オレが気になるのは、眠る竜の向うに側に見える金銀財宝らしきモノだ。

 

 黄金色に輝く宝の山は、非現実的なほどに美しく。見ていると、胸が高鳴るのが分かる。

 

 しかし、手に入れたところで持ち帰りようもなければ、それ以前に、目の前の障害を越えれる気がしない。

 

 ―――竜殺し(ドラゴンスレイヤー)


 

 それは対竜武器(ドラゴンバスター)を持った英雄にのみ許される御業であって、高校生(オレ)如きに成せる業じゃない。

 

 ―――オレに反則技(チート)は無い。

 

 死に戻り(リセット)は、十分チートのような気もするが、コレは深く考えてはいけない。

 

 薄々そんな気がしてるけど、気づいてしまったら心が折れるので……考えちゃいけない。

 


 

 ―――さて、思考を戻そう。

 

 ココは行き止まり。

 目の前にいるモンスターは超強敵。

 つまりお宝はあるけど、あれは酸っぱい葡萄に違いない。

 

 ココが最下層であるならば、目の前にいる火竜の心臓が“コア”と言うことになる……。

 

 しかし、まだこの階層の全域を調べたわけではない。他に下層に降りる道があってもオカシクはない。

 

 引き返して、他の道を探すか?

 

 いやまてよ、せっかく寝ているんだから……今のうちにコッソリお宝を持ち出せないか?

 

 金銀財宝は興味が無い……とまでは言わないが、現時点では不要。

 

 しかし、遠目に見えるお宝には、剣や槍などの武具も含まれている。

 

 もしかすると、魔法の品が手に入るかもしれない。

 

 爺さん曰く……「レベルアップ? 経験値? 無いぞ。そんな便利な仕組みがあれば苦労はせんよ」……だそうだ。

 

 つまり短期間で、オレがパワーアップするには、強力なアイテムを手に入れるしか無い。

 

 ―――コレはチャンスだ。

 

 幸いなことに、目の前の竜が起きる様子はない……忍び足には自信があるし、実績も有る。

 

 ―――よし! イケる!!

 

 一歩踏み出す…………変化なし

 二歩踏み出す……………………変化なし。

 三歩踏み出す………………………………鼻提灯が割れた!?


 「………?」

 

 肝を冷やしたが、起きる様子はなく、新しい鼻提灯が生成された。


 「…………(おっし! せぇぇぇーふっ!!)」

 

 改めて、オレは歩き出す。

 

 抜き足差し足忍び足……。

 

 オレは蛇。個体な蛇……。

 

 「……っ!?」

 

 ブオンと尻尾が振られた。

 鼻先を掠め、風圧で倒れそうになるも何とか堪える。

 

 ―――気づかれたか!?

 

 いや、寝ている。

 

 どうやら寝返りみたいなモノだったらしい……。

 

 イケる逝ける往けるって、大丈夫!

 何処かで聞いた、炎の妖精の幻聴に励まされながらオレはゆっくりと竜の横を通り抜ける。


 しかし、オレはこの時。失念していた。


 そもそも、どうしてオレはこの場所に来たのか?


 どうして梟小路に追い込まれたのか?


 なんの事はない、要はお宝に目が眩んでいたってことだろう。


 お宝まであと一歩! ……と言った所で、足元が揺れた。


 「そういや、そうだった……竜は一匹じゃなかったんだ……」


 こうしてオレは、二頭の竜に退路を断たれたのだった……。





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