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「ふはははははっ! これは愉快じゃ! まさか斯様な手で不死の魔人を討伐しようとはっ!!」
静謐な研究塔。その最上階に哄笑が響く。
年甲斐もなく、子供のように老魔術師は笑い転げる。
手に持つスマートホンに映し出された映像。
迷宮に仕掛けた術式と連動し、迷宮に配置された兇手を介して中継させることでリアルタイムでの表示を可能とする。
これは、偶然と必然が生み出した邂逅。
老魔術師と異郷の少年の思惑は擦れ違い……そして、運命は流転する。
「……はっ……ぜー……は……くくくっ……実に懐かしい」
笑い疲れ肩で息をする老魔術師。笑いは拷問に使われるほど体力や気力を奪い取る。
魔術によって生命を強化し延命しているとは言え、老体には堪えた。
ふらつく身体を支えるように、老魔術師は椅子に深く座り。天井を仰ぎ見て遠い目を浮かべる。
脳裏に浮かぶ、勇者との旅の思い出を振り返り苦笑を漏らす。
しかし郷愁の念に囚われること無く、老魔術師は目の前で起きた事象の分析を始める。
「―――ふむ、しかしコレは盲点じゃったな……。
関節の可動域に干渉しないように、精密な障壁を構築すれば防げるじゃろうが……初見ではワシでも対処は無理じゃ。
―――しかし、面白い! 実に良い!!
彼の勇者と言い、彼の少年と言い。実に突飛な発想と行動をするものよ……真に興味深いのぉ」
老魔術師が思い返すのは、先ほど見た戦い。
死闘と言うには滑稽で、決戦と言うには道半ば……それで有りながら重要な転機と成りうる。駒と駒の戦いであった。
関節技を極められ、苦痛に喘ぐ魔人は、少年を振り払らう。
見た目こそ痩躯だが、魔人の腕力は決して低くはない。
なぜならば、強化魔法が自身に掛けられているからである。
人の身を捨て、魔に墜ちた魔人の妖力は大きい。
魔人に限らず、魔に属するモノは総じてオドが高い傾向にある。
オドの量が十分に有るならば、わざわざ魔力に干渉せずとも、独力で魔法行使することも可能となる。
それが、魔術の対となる妖術。
妖魔と総称される魔物の持つ特殊な能力を体系化したモノであり……人外にのみ許された秘術である。
魔術と異なり、妖術は外より内に作用するのが特徴で、自己の身体強化は、基本的な妖術であった。
人は魔術しか使えないのに、妖魔は魔術も妖術も使うことが出来る。
これは人類にとって大きなハンデキャップとなり、真っ向勝負で、人は人外には勝てないとされる由縁でもあった。
その証左として、魔人は、少年の決めた関節技を、純粋な膂力の差で跳ね除けたのだ。
しかし、崩れた体勢と、傷めつけられた傷が癒えたわけではない。
そのため、魔人は再び少年から間合いを離そうと考え、実行に移した。
―――だが遅い。
振り向くことより、距離を話すことを優先したが……それでも遅かった。
魔人の背後から、少年が飛びかかり首を捕らえた。
窮鼠に噛まれ狼狽したモノと、徹頭徹尾、必死だったモノとの差が勝敗を分けた。
―――首挫き。
それが決まり手となり、魔人は意識を手放したのだった……。
魔法名やモンスター名などが一定ではないのは、語り手が違うからです。
主人公視点での名称は、主人公が便宜的にと外見イメージから適当につけた名前です。
世界的に一般的なのは、老魔術師視点で語られる方です。
ただし、地方や時代によっても呼び名は微妙に変わり、異名や別名も普通にあります。
世界観的に、良い意味でも、悪い意味でも“日本語”がベースです。
老魔術師と主人公の会話が成立するのは、方言や俗語的な差異はあれど……使われてる“言語”が“同じ”だからです。
それ故に、老魔術師と主人公で、モンスター名の齟齬が少ないのです。
この辺りの詳細設定もありますが……現時点では無意味ですので、解説は割愛します。
結局のところ何が言いたいかというと―――
こまけぇこたぁいいんだよ!!(AAry
―――って、ことです^^




