<28>
目を閉じて、そっと開く。
―――瓦礫の山が見える。
上を見て、横を見て、深呼吸してから前を見る。
―――瓦礫の山がある。
首を傾げ、逆立ちして、くるくる三度回って目を回し、俯いて心を落ち着かせてから……ゆっくりと顔を上げ確認する。
―――瓦礫の山で道が塞がれている。
「うがあああ!! ふざけんなっ!!!」
瓦礫の山に手をかけ、手当たり次第に瓦礫を掘り返す。
「冗談じゃない! こんな終わりなんて認めないっ!!」
手が血に染まり、ズキズキと痛むが、そんなことはどうでも良い。
衝動に突き動かされるまま……八つ当たりするかのごとく、オレは瓦礫の山を崩していく。
崩れた端から、新たな箇所で崩落が起こるも、気に留めることなく我武者羅に作業を続ける。
そして……大きく崩落した土砂に巻き込まれ、オレは意識を閉ざした。
―――
――
―
それからどれだけ経ったか分からない。
辺りは真っ暗だ。
「くっ痛っ……」
体の節々が痛み、感覚がおかしい。
全身に強い圧迫感が有り、身体が僅かにしか動かせない。
これは? ……ああ、そうか崩落に巻き込まれ、瓦礫に埋まったか……そして、死に損なった……っと。
はははっ……このまま死にたい。
死に戻りじゃなく……ガチで死にたい。
崩落の規模は不明だが、重機も人出も無い現状では、瓦礫の除去なんて不可能だ。
コボルトどもを脅して作業させるか?
いや、無理だな。コボルトもゴブリンも非力だ。
オークやオーガならいけそうだが……奴らを脅して従えるのは、オレの実力じゃ無理がある。
3Fに被害者がいるのに助けが来ないのも道理だろう……おそらくすでに見捨てられている。
救出作業……誰かが瓦礫の撤去を行っているなら、何か物音がするはずだ。
しかしオレの耳に聞こえるのは、風の音くらいで、時々獣の咆哮が聞こえるだけで、人の気配は一切感じられない。
孤独だ……こんな時あいつらならどうしただろう?
親友というより悪友と呼ぶべきバカ。
黙ってればイケメンなキモオタ。
口も態度も悪いが根は真面目なツンデレ番長。
嫌われてもないが好かれてもない微妙な関係の幼なじみ。
生意気だが可愛い……かもしれない妹。
普段は優しいが怒らせると死を覚悟させられる母親。
影も薄く、頭も薄いが、イザという時は頼れる父親。
―――ああ、せめてもう一度、会いたい。
「……く……うぉ、まぶし!?」
嗚咽を漏らし、僅かに身動ぎした時、カツンと何かが転がり……パッと明かりが灯る。
「なんだなんだ!? ……って、スマホか」
懐からこぼれ落ちたスマホを、改めて手に取る。
画面をタップして、電話帳を開く。
アンテナは当然の如く立っていない。ネットにも繋がってはいない。
それでもオレは、電話帳をワイプして自宅の番号を表示させる。
無駄だとは分かっている。
それでも試さずにはいられなかった。
番号をタップする。
コール音が閉ざされた空間に響く……コールはしたか、でも直ぐにエラーメッセージが……。
―――出ない?
コール音が止まり、電話が繋がった……。
これは奇跡か? それとも幻覚か?
何でもいい、コレで話ができる! 助けが呼べる!!
父さんか母さんか、この際妹でも一向に構わんっ!
声を震わせ、オレはスマホに呼びかける。
「……も、もしもし? オレだよオレっ!」
「誰じゃ?」
「……誰だよ!?」
スマホから聞こえてきた声は、父でも母でも妹でもない……聞いたことのない声だった。




