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万魔殿。
666万の軍勢を率いた魔王の残した遺跡であり……数ある迷宮の一つにすぎない。
迷宮の規模自体も、他の大迷宮と銘打たれた遺跡に比べれば小規模と言えるだろう。
しかし、それでも特殊性及び、攻略難度の高さは随一であり。勇者すら攻略を断念した事からもソレを疑う余地はない。
もっとも、勇者でなくとも、一介の冒険者であろうと迷宮の現状を知れば攻略は不可能だと断言するだろう。
迷宮を攻略するには、迷宮に挑むには方法はどう有れ、内部に侵入する必要がある。
裏を返せば、侵入出来なければ……攻略以前に挑戦すら許されなければ……ソレは不可侵と言って良い。
「ふむ……やはり難しいか……」
「いえ、老師様。介入には成功しております」
「姉弟子よ、途中で遮断され……予定の半分も書き換えていないのだ……成功とは言えない」
「末弟、現状報告せよ」
「了解。術式を再解析します……コードネーム“ジューダス”の存在を確認」
「了解した。目標の精査を開始する……分析失敗。ダメです拒否されました」
「位相を落とし、精査をやり直します……分析成功《success》。旗印の反転を確認しました」
「……軍旗の改竄は成功したか……ならば、最低限の目的は果たせたのぉ……ふぅむ、良し一旦、帰還するぞ!」
「「「「了解」」」」
実のところ。万魔殿は、攻略難度はさほど高くはない。
万魔殿の名に相応しい特殊性として、多種多様の魔物の存在が確認されているが、勇者にとっては脅威ではなく。
一般の冒険者から見ても、危険性は高いが、攻略不可能と断じる程の存在は確認されていない。
―――なのになぜ、難攻不落。勇者すら攻略を断念したのか?
答えは単純だ。いかな勇者とて……不可能を可能にするのが勇者と言えども限度は有る。
上層部が完全に崩落し、土砂と瓦礫で埋もれた迷宮を、新たに掘り返し攻略する事など出来ようもない。
否。長い長い時間をかければ掘り返すことも出来ただろうが……勇者に……魔王の脅威が迫った世界に時間など無い。
ならば迷宮の攻略を後回しにするのは必然であり……魔王の脅威が取り除かれた後も、壊された世界の復旧が優先されるのも当然の話である。
そうこうしてる間に時が経ち、勇者は去り。世界も平穏を取り戻し、安定し始めた頃……残された迷宮の存在が浮き彫りとなった。
殆どの迷宮は、勇者の志を継ぐ冒険者……立ち向かうものと呼ばれる彼らが攻略したのだが……。
―――今だに、万魔殿だけは、攻略できずにいた。
トンネルを掘り、内部への侵入を果たしても……すぐさま新たな崩落によって無為に帰す。
転移魔法を使っても、常とは理の違う、閉じた世界である迷宮への出入りは困難であり。なんとか侵入出来ても、脱出は不可能であった。
こうして数多の冒険者が犠牲となり、攻略は中断。されど、迷宮の放置は出来無い。
迷宮を司る核、それは世界を軋ませる楔。理を歪め、魔を優する唾棄すべき魔法装置。
迷宮はソコに有るだけで、世界にとって害悪となる。
各国の首脳陣は会議に会議を重ね。結論を出した。
勇者の仲間であり。世界最高の魔術師に攻略を委ねよう……と。
―――人、ソレを丸投げと言う。
かくして世界の命運は、またしても一人の手腕に委ねられたのであった……。
勇者「俺の時から、まるで成長していない…………」 AAry




