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迫り来る無数の亡霊どもは強かった。
何が強いかと言えば、障害物を全く気にせずに追ってくる上に、掠っただけでもダメージを受ける鬼畜仕様なのがエグい。
そのダメージもまた嫌らしく。触れた箇所から体温が奪われ壊死していく感覚で、緩やかだが確実に死に向かっていると実感できるのがまたキツイ。
救いと言うならば、向こうは完全に遊び気分らしく隙だらけで、逃げ出すチャンスが無数にあるって事だろう。
なにせ、実体が無いのだから強行突破も簡単だ。……それをすると、シャレにならないレベルの寒気に襲われるのが難点だが。
もっとも、遊び気分とは言っても、奴らも館っぽいこの場所から取り逃がす気は無いらしく……。
包囲網を敷いたまま、敢えて逃げるチャンスを与えては、先回りするかのように現れ。逃げても逃げても無駄だと言わんばかりに利を活かし、ジワジワと追い詰め。オレの心を折りに来ている……救いはないんですか!?
そんな感じに亡霊館の中を駆けまわり逃げまわって、精魂尽き果てフラフラになった所をバーゲストに襲われて遊びは終了した……。
―――もちろん遊んでいたのは奴らで、遊ばれてたのはオレだ。ドチクショー!
「……うん、無理」
部屋で目を覚ましたオレは、スマホをタップして画像ビューワーを起動する。
写っているのは、亡霊屋敷の調度品、床、壁、シャンデリア、そして、追いかけてきた死霊どもだ。
逃げ惑いながらも、情報収集を第一目標として、要所々々でシャッターを切った成果がコレとなる。
残念ながら某ゲームと違って、撮影しても亡霊に効果はなく。怯むどころか、ピースしてきたり余裕だった。ぐぬぬ……。
まあ、それはさておき。写真は手ブレも酷いし、ピントも甘いが……それでも貴重な資料となるはずだ。
しかし、亡霊館の攻略は無理だ。不可能だ。
一対一なら、なんとかなる。なんとかしてみせるが……数十体相手は無理ゲー過ぎる。
1Fの攻略は、現時点では無理ゲーレベルではなく、完全に攻略不可と言って良いだろう。
これは詰んだか? いや……。
―――収穫は有った。
館の構造的と敵の強さを考えるに、2Fから1Fに進むほうが正道だと想定出来る。
よくよく考えてみると、3Fの鬼の城塞も、オレが捕まったのは裏庭で、連れて行かれたのは裏口だったように思える。
つまりココは、上から下に向かって攻略する……地下迷宮である可能性が高い。
上に向かえば地上……出口に近づくのは間違いなさそうだ。
それと上に人がいたのも大事なポイントだ。
鬼の城塞の拷問部屋には、オレ以外にも人がいたのは間違いない。
助けだしたところで、言葉が通じるか不明な上に、どうみても正気ではないが……それでも無視するには惜しい。
実利的にも、利己的にも、人情的にも見捨てる気にはなれない。
出口が上だとほぼ確定した以上、鬼の城塞の攻略は必須。だったら、ついでに人助けも悪くはない。
―――問題は、どうやって死ぬかだ。
次に捕獲されたら詰む。
これはもう、間違いない。
奥歯に毒薬でも仕込めれば楽なんだが……あーマジでどうしよう?
ちなみにレイスは、スマホも撮影機能も知りません。
ですが、こっちを探ろうとしてる主人公の意思を覚っていたので、小馬鹿にする意味でピースを返しました。
彼ら……モンスターには、知性はあれど、理性はありません。
ついでに本能すらありません。
動機を決めるのは、感情だけです。
―――それが“怪物”と言われる由縁です。




