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立てたフラグは即回収。
懇親の願いを込めた、人生初の魔法攻撃は、ゴブシャーマンに直撃こそしたものの……あんまり効いて無い。
以前オレが食らった時は、一発で大やけどを負って、痛くてまともに動けなくなるくらいだったが……目の前の相手は、赤く腫れて、少し焦げた程度で済んでいた。
コレはアレか? シャーマンとオレの魔法抵抗の差か?
それとも、オレの技量や、魔力っぽい何かが、インプより低いだけか?
―――いずれにせよ不味い。ピンチだ……。
魔法が発動したは良いが……目の前の相手を倒せなかったのはもとより……使うタイミングが拙かった……。
こいつらの人数は一定じゃない。理由は知らないが少なくなった時に試すべきだった。
チッ……オレが魔法を使える者だと認識されちまった。
これまでオレが、五感を潰されなかったのは……同族が嬲られる様を見せて、反応を愉しみ。拷問に苦悶の声を上げるのを見て聞いて嗤う……こいつらの悪趣味な嗜虐心のおかげだ。
しかし、魔法を使えると思われたらどうなる?
危険と判断して殺してくれるならば……望むところだが、そうはいかない。
こいつらは、オレが何度でも黄泉帰りするのを知っているフシが有る。
―――だったらどうするか?
簡単だ……喉を潰せば良い。
ソレこそ猿ぐつわでも噛ませば良い。
無詠唱で魔法が行使できるかどうかは知らないが……少なくとも今のオレにソレは無理だ。
そもそも、たった今使った魔法すら、マグレだと言われても否定は出来無い。
魔法理論を全く知らない状態で、見様見真似だけで使えたことが、我ながらスゴイと思うが……そんなことは相手には関係ない。
オレが魔法を普通に使えるものとして、相応の対応を取るだけだろう……つまり、詰み、だ。
しかして、ゴブシャーマンの反応はと言うと……予想外にも逃亡だった。
「……は?」
オレは逃げていくゴブシャーマンの背中を唖然としたまま見送る。
たいして効いてないように見えたが……実はめっさ効いてたのか?
それとも驚いてビビって逃げただけか?
―――違うな、仲間を呼びに行ったんだ!?
これまでの経験上……。
インプとコボルトは臆病で、ゴブリンはアホだが、ゴブシャーマンはバカだ。
ついでに、オークとゴーレムは間抜けで、オーガは脳筋だ。
しかし、獣よりはマシな……少なくとも、頭の悪い人間並の知能は有る。
だとしたら時間がない! 早く逃げなくては!? ……しかしどうやって?
―――先ずは、自由の確保っ!
「―――火を放てっ!」
括られた縄を魔法で焼き切る。二度目の魔法も無事成功。
MPとかリソースどうなってるのか不明だが、今はソレどころじゃない!
―――良し、これで動ける!
だが、今のオレの状態じゃ、走って逃げるることは物理的に不可能だ……。
どうする?
どうすればいい!?
グズグズしてたらアイツらが戻って……「ぐぎゃぐぎゃ!!」……きちまったよ!?
クソ、こうなりゃ一人……一匹でも道連れに大暴れしてやるっ!
「我は人生を呪……うわっ!?」
ヤケになったオレは、無理矢理立ち上がり、強引に詠唱を唱えようとするが、途中、何かに躓いた。
「がふっ!?」
受け身も取れないまま、叩きつけられるように倒れたオレは、床にしこたま顎を打った。
そして……喋りながら顎を強打したため、ブツッと舌を噛み切り……オレの口の中が、激痛と鉄錆た匂いで満たされる。
あははっ……結果おーらい、だ……。
呼吸が止まり、薄れゆく意識の中。
最後に見えたのは、愕然とした目でオレを見ているゴブシャーマンと……悪魔から、オレの救世主へと転職した―――
―――部屋に転がる使いふるしの拷問用具だった。




