表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/53

<14>


 ―――手応えはあった。

 

 ならば何が足りない? 努力か? 才能か? 根性か?

 

 いやいや、違う……もっとこう、根本的な手順が間違ってる気がする。

 

 さあ思い出せ……。

 心の棚をひっくり返し、思い浮かべろ……。

 

 オレが見た魔法らしきモノは二種類。

 

 一つは、幾度と無く身に受け、火傷からの衰弱死をもたらしてくれた……インプのファイアショット。

 

 もう一つは、現在進行形で唱えられている、ゴブシャーマンのヒーリングの二つだ。

 

 ぐぎゃぐぎゃとくぐもった声で有りながら、妙に甲高いと言う耳障りな発音で、それでも、一定の韻を踏んだ呪文(スペル)が唱えられる。

 

 杖を振りかざすと、杖の先端に燐光が灯る。

 続けて杖を一定の拍子で振り回すと、中空に魔法陣(フサルク)が展開され。

 方陣(スクエア)を描き終えて、ぐぎゃあ! と……吠えるように、締めの言葉(ピリオド)を叫んだと同時に、光る刻印(ルーン)は淡く輝き霧散する。

 

 そして、何処かで、何かが、動いたような気配がして、術の対象……オレの身体に、何かが、作用する。

 

 痛みが消え、傷が塞がり、曇っていた意識が晴れ、体力(スタミナ)活力(ライフ)気力(ウィル)が回復していくのが分かる。

 

 空腹すら改善される万能な回復魔法だが、流石に潰された手首、足首が生えてくる程ではないようだ。

 

 それでもめがっさ強力で、いんちき臭いほど便利であることには変わらない……これゲームだったら弱体化の修正必死って感じだよな……。

 

 ………うん、体調が改善された事で、思考がクリアになり、わずかに余裕が生まれる。

 

 どうせまたすぐに、拷問が再開されるから、グズグズはしていられない。

 

 ―――さあ、今の手順を振り返ろう。

 

 呪文は完璧に真似(トレース)できてるはずだ。

 実際に、唱えれば何かが(・・・)、動く感覚はする。

 

 だが、ゴブシャーマンのように、魔法陣が展開される事は無い。

 

 杖……発動体が必須なのか?

 

 いや、インプは杖なんて持ってはいない。

 

 口から吐き出すように撃たれた火弾も、口内に魔法陣が展開されていたから、特殊能力ではなく、ゴブシャーマンと同系統の“魔法(アート)”のはずだ。

 

 だったら杖の有無は無関係である可能性が高い。

 

 だったらオレの場合、なぜ魔法陣が展開されないのか?

 

 ……身振り手振りが必須なのか?

 いや、インプは特にオカシナ動作はしていない……違いはどこだ?

 

 いやいやいや、違う。逆だ……同じ所……共通点は何だ?

 

 杖から放たれるのと、口から放たれるのでは、雲泥の差がある。

 

 しかし、呪文らしきモノを唱え、魔法陣のようなものが展開されてから、魔法効果が発現する。この手順は共通している。

 

 魔法陣を展開。

 中空に描かれる魔法円と文字。

 

 ―――描かれる(・・・・)

 

 もしかして、唱えただけで自動展開されるのではなく……手動で描く必要があるのか!

 

 ゴブシャーマンは杖で、インプは……恐らく“舌”で魔法陣を描いているのでは無いか?

 

 方陣の図形と書き順を思い出せ……まずは真円を描き……。

 

 ―――斜め上、真下、斜め上。

 ―――宙に刻む文字は“yr(エイワズ)

 

 言葉の意味は……文字の意味は……死と再生。

 

 インプの方は……たしか二文字で……そうコレだ……それを意訳して……。

 

 「エゴ人生(ビィビル)呪う(イムプレカティオ)フォティア、嗤え(イルジンテス)―――」


 

 続けて腕を振り、空中に文字を描く……いや、理に銘を刻む(インスクリプト)っ!

 

 ―――斜め上、真下、斜め上。

 ―――宙に刻む文字は“yr(エイワズ)

 ―――続けて、くの字を描くように斜め下、逆斜め下。

 ―――最後に刻む文字は“ken(カノ)

 

 言葉の意味は篝火……二文字繋がれば……灯火と弓……。

 

 ああ、なんとなく理解した……してしまった。

 

 これが真理(エメス)

 オレの中の、何かが、欠け……オレの知っている常識は死んだ(メス)

 

 描かれた方陣を見て、嫌らしい笑いを浮かべたまま固まるゴブシャーマンを睨みつけ、締めの言葉を叫ぶ。

 

 「―――火を放て(ファイアショット)っ!」

 

 淡い光を残し、描いた方陣と文字は溶けて消え、赤い閃光が目を覆い尽くし、汚い花火が炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 ……やったか?





 主人公は凡才です。

 逸般人でもではなく、普通に一般人です。


 可もなく不可もなく……凡人に出来ることなら、努力すれば普通に出来ます。

 例え異世界であっても、異世界人の凡人が出来ることなら、努力すれば普通に出来ます。


 ―――ある意味、異常です。


 “万能の凡才” それが、この主人公の特徴であり、強みです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ