<13>
唄を歌う。
オレは別に歌手志望でもなければ声優志願者でも無い。
それでも、声を出して歌う事くらいは出来る。
オレに絶対音感は無い。
それでも真似て歌う事くらいは出来る。
呪文を唱えるのも―――
死を呪い、怪我を遠ざけよと、謳うのも―――
声に出して唱える文句であることには変わらない。
「ぐぎゃぐぎぐぐぎゃぎゃぐぎゃぐぐ……ぐぎゃあっ!」
―――しかし、何も起こらなかった。
ぐぬう……オレの発音がオカシイのか?
何度も何度も、淡々と同じ文句を唱え続ける。
なあに、手本は目の前で何度も見せてくれるどころか、体感させてくれているんだ……覚えないほうが……出来ないほうがオカシイんだよッ!!
痛みを忘れ、苦しみと絶望から目をそらすように、オレは魔法の行使に集中する。
途中……中学生の頃に、マンガやゲームの必殺技を真剣にヤッてた黒歴史を思い出した。
途端に気力が萎え、ヤル気が音を立てて減っていく。
ゴブリンと人間では声帯が異なるので、発音不可能ってオチはないだろうな?
いやいや、猫の鳴きマネなど、モノマネ芸の定番で動物の声を真似るってのがあるから大丈夫だ! ……と思いたい。
それに、なぜだか分からないが……言葉の意味が理解できるのは大きい。
―――待てよ?
ぐぎゃぐぎゃ言ってるのは、ゴブリンが唱えてるからであって、人間が唱える場合は違うのではないか?
だとすると……。
「我は死を呪う、怪我を遠ざけよ―――
―――治癒せよっ!」
……ヒーリングっ! …ヒーリングっ! …と言う声が辺りにコダマした。
―――だが、良しっ!
辺りには何も起きなかったが……何かが反応した。
もちろんオレの声に反応したゴブリンの事じゃない。
うるさいとばかりに棍棒で殴られ、目の前に星が飛ぶがソレも違う。
これまでと違って、確かに、何かが、オレの中で反応した。
―――手応えありっ!
しかし、それから何度唱えようと、それ以上の反応はなかった。
やはり……オレじゃ……無理なのか?
主人公にチートはありませんが何か?




