序章
薄暗い部屋の中。煌々と灯るランプの光を頼りに、机に広げた地図を睨むは老齢の魔法使い。
ゆったりとした貴色である紫のローブを身にまとい。
気難しげに眉を寄せ、自慢の美髯を揺らして地図の一点に指を当てる。
示された先にあるのは、世界に覇を唱え、勇者によって討滅された魔王の残滓。
世界に刻まれた魔の爪あと……大迷宮であった。
目を閉じ。何かを思い出すように空を見上げ思案する。
―――放置は危険。
―――真っ当な攻略も不可能。
―――勇者は“いない”
考えても考えても、答えは出ず。
日が昇り沈むを三度繰り返すも、答えは出ない。
希少なお宝から、用途不明のガラクタまで、乱雑にモノが置かれた研究塔。
ぶつぶつと呟きながら歩き回るも答えは出ず。
悩みに悩み、苛々が募り癇癪を起こすも答えは出ず。
八つ当たりを反省し、後片付けをしても答えは出ず
されど、崩れたガラクタの中から転がりでた、一つのモノに目が止まる。
それは、不可思議な素材で出来たガラス張りの板。
―――勇者の忘れ物。
思い起こされるは、勇者と過ごした日々。
今思い返しても、破天荒で無茶苦茶な旅であった……。
無鉄砲で、常識外れで、涙もろくて、負けず嫌いで、蛮勇を好む愚者。
運に恵まれ、才に富み、機転と奇抜な発想で窮地を覆し、不可能を可能とする勇者。
そうだ、発想を変えれば良い。
真っ当な攻略が不可能なら……真っ当でない方法で攻略すれば良い。
暴論ではあれど、他に選択肢も無い。
成功率も低いが、リスクも低い。
―――“コレ”は蛮勇ではない。
ならば試してみるかと、老魔法使いは腰を浮かせ部屋を出ていった。
契機となった勇者の遺品。
それには……欠けたリンゴのマークが刻まれていた。
――――
―――
――
ふと目を覚ます。
「知っている天井だ……」
そりゃ当たり前だろう。
学校から帰って、夕飯食べて、宿題をテキトーに終わらせてからベットにダイブ。
スマホ片手に寝落ちするまでネットしてたんだから、知らない天井だったら怖いわな……。
ふぁあぁ~さて、時間は……七時前だな。
ちょうど良いくらいだ、とりあえず鳴らないように目覚まし止めて……ん?
なんか暗くないか?
あくびを堪え、目を擦りながら窓際に向かい、カーテンを開けて外を見る。
「よく見えん……」
よく見えないと言うか、真っ暗だ。
停電? いや家電の待機ランプが光ってる。
家以外全部が停電? それとも大雪でも降ったのか?
まあいいや、とりあえず顔でも洗って目を覚ますか……って、はぁ?!
ドアを開け、部屋から出たオレの目に飛び込んできたのは、知らない天井ならぬ……知らない廊下だった。
「……は?」
短めの文で、気軽に更新できるようにしてみるテスト