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8 非リア充 市場を満喫する の巻

 どうしても文章がぎゅうぎゅう詰めになってしまう。

 無駄が多い。

 展開も駆け足気味。

 もう少しテンポをゆっくりとさせたい。

 やはり、他人の作品をよく読んで研究するのが上達への道かしらん?

 文を書く事は難しいなあ。

 ゴトゴトと馬車に揺られながら、オレ達は次の目的地である市場を目指す。本当はそこで昼食を買って食べる予定だったらしいけど、工房が長引いてしまい市場が最後の見学場所となった。

 実はあの後も色々とあったのだ。ガンコウさんの強引な勧めで自慢の鎧をアレコレと試着することになり、もはやオレ達はお人形もとい装着変身状態だった。

 鎧の種類は多岐に渡り、実用的なものから装飾過多なものまで。和風の鎧武者甲冑から、アニメ的な戦乙女鎧まで何でもござれだった。ビキニアーマーなんてのもあった。それを作っているガンコウさんを想像したら、いろんな意味で職人だなあって思った。

 その後もガンコウさんの勧めで色々な武器を試した。刀剣はもちろん、槍に爪に斧に鎚に鎌に弓等々。それらから派生した武器や変形武器まで何でもあった。中には弦楽器と大剣を合わせたものや、横笛と短剣を合体させたもの等の珍しい武器もあった。異世界に特撮ってあったっけ?

 そしてガンコウさんの目利きで、オレ達の得物が勝手に選ばれることに。ガンコウさん曰く、一流の職人はその人を見ただけでどんな武器が合うのか分かるんだとか。そんなことを言いながら、ガンコウさんはオレ達の体をベタベタ触っていた。ガッツリ調べてますやん。流石に奈川木の時は自重して手だけだったけど。

 そんなガンコウさん調べの結果、奈川木は弓だった。奈川木は高校でも弓道部だったし、きっとマメでもあったんだろう。

 彼方くんは徒手空拳が良いらしい。喧嘩ダコでも見つけたんだろうか? 彼方くん本人は二刀流なんかを期待していたらしい。ぷぷぷ、やっぱり彼方くんは中二病でありますなあ。なんてことを言ってからかってたらデコピンされた。痛い。

 オレの時はガンコウさんもうんうんと唸っていた。あれれ、見ただけで分かるんじゃないんですかい? まあ、オレは格闘技とか武道の経験ないからね。中学は吹奏楽、高校は帰宅部だったし。この流れからいくとオレは横笛短剣かなあ。なんて考えてたら、オレに合うのはチャクラムだってさ。中二武器! 嬉々として彼方くんがいじってきましたよ、コノヤロー!



 ここが市場ですかあ。人が沢山で賑わっていますなあ。流石王都シットー観光名所、ツッキージ市場。

 ロクロウさんの解説によると、この市場は魚や青果などの食料品、その他日常必需品をおもに扱っているんだとか。多くの店舗が軒を連ね、安くて質の良いものを販売しお互いしのぎを削りあいながらも、庶民の大きな味方なんだとか。一言で言えば、巨大なスーパーマーケットだ。

 今日は実際にここで商取引、つまりお買い物をしてみよう、というのが社会科見学の一環なんだとか。

 もちろんこの市場は安全ではあるが人が多い分何が起こるか分からない上に、いざという時の行動にも制限が加わるから絶対に離れて行動してはいけないと、ロクロウさんは口がたこになってオレ達の耳が酸っぱくなる程言っていた。それってフラグだよなあ……。

 オレは何を買おうかなあ、とロクロウさんからもらったお小遣いである銀貨を握り締める。

 この国の貨幣価値は小さい方から順に鉄貨、銅貨、銀貨、半金貨、金貨、半白金貨、白金貨である。大体十、百、千、五千、万、五十万、百万と考えて構わない。この世界の国のほとんどがハーチポーチ連合という国家間の衝突を避けるための組織に属していて、貨幣も統一しているのだとか。

 ちなみにリヴィア王国は島国である。北西に大陸があり、そこの国々が連合の中心国なんだとか。そうロクロウさんに道中叩き込まれた。

 オレはちょっと難しいことを考えたせいで頭から煙を出しながら歩いていく。

 この市場には買い食いが出来るような屋台も数多くある。あっちでは串焼き肉をじゅうじゅうと焼いており、こっちでは新鮮な魚をその場で捌いてお刺身にしてくれるようだ。ああ、色々と目移りしてしまう。

 どっちにしようか……いや、どっちもだ!


「ロクロウさん! あそこの串焼きが食べたいです!」

「分かりました。一旦止まりましょう」


 オレは串焼きをモキュモキュと頬張る。肉はしっかりと火が通り噛む度に旨味と脂が溢れ出し、特製のタレが少し焦げてて香ばしく食欲をそそり、時折スパイスがピリリときいていて美味しい。

 おや、ちゃっかり彼方くんとジャンキーさんも買ってる。


「ロクロウさん! あそこのお刺身が食べたいです!」

「分かりました。でも、また食べ物ですか?」


 オレはお刺身をハムハムと頬張る。白身魚で味は淡白だが身は締まっていて歯応えがあり、噛み締める程に旨味が増して味わい深い。この国に生魚を食べる習慣があって良かったなあと思う。

 醤油はこの国にないので、お塩でいただいた。通だねえ。

 そろそろ甘いものが食べたいなあ、なんて思ってたら甘味処を発見。ここは天国なのか!?


「ロクロウさん! あそこへ寄っていきましょう!」

「……分かりました。オダケン様はきちんと昼食をいただきましたか?」

「うん。おかわりもしたよ」


 ロクロウさんがあきれた目でオレを見てきた。だってタタラさん美人だし、手料理もおいしかったからさあ。おかわりするっきゃないよねえ?

 甘味処につくなり、オレはお茶とお菓子を頼んだ。奈川木と護衛唯一の女の人も何か頼んでいた。紅一点だから……紅さんと心の中で呼ぼう。

 お菓子はケーキのようなもので、生地は口の中でふわふわとほどけミルクの風味が凄かった。クリームは使っていない。かかっていた赤い果物のソースも酸味が強めで良いアクセントになった。奈川木と紅さんも同じものの味違いを頼んでいたので一口ずつ交換した。ケーキは幸せな味だった。

 これで残金銅貨二枚。お茶で一服しながら、何に使うのかを考える。うーん、どうしようか。ズズー。ああ、お茶が美味しい。

 茶葉を買うことにした。この国は茶葉の名産地なので安い。この店は甘味処と茶葉売り場で一つの店舗だったらしい。気に入ったらすぐに買えるという訳だ。そしてオレはまんまと術にはまった訳だ。恐るべし……って元の世界でもこういう店あったな。

 さて、お金もなくなりましたしどうします? 帰りますか?


「オダケン様は即刻使い切ってしまったようですが、時間はまだありますのでお二人はゆっくり、よく考えて、使って下さいね」


 ロクロウさんが「よく考えて」を強調して言った。

 これってオレは遠回しに怒られてるの?


 その後は色々な店をまわった。糸屋に金物屋に靴屋に包丁砥。市場の場所によって売り物の種類が違うらしい。

 とても雰囲気怪しげな薬屋の軒先にはカエルやクモが釣り下げられていた。その下で魔女っぽい格好をした女の人が蛍光色のジュースを売りながら、こちらを手招きしていた。髪が長く顔は隠れてよく見えなかったが、声は思いの外可愛かった。

 結局、奈川木は本屋で本を、彼方くんは魔女っぽい人に気に入られたのか、しきりに魔導書っぽいもの勧められそれを購入。

 ちなみにこの世界の読み書きはロクロウさんに授業と同時進行でビシバシと鍛えられたため全員習得済み。教科書が読めるようになってからは授業が比較的楽になった。教科書で涙を流す程感動したのはその時が人生初だった。

 全員がお金を使い切りましたし、そろそろ帰りますか。そんなことを思っていた時、事件は起こった。


『ピンポンパンポーン。これより十分後に鮮魚コーナーでタイムサービスを行います。数に限りが御座いますのでお一人様一点まで、走らずに歩いての移動をお願い致します。ピンポンパンポーン』


 まさかの口頭でのチャイム音の後、魔法具で市場全体にアナウンスが響いた。

 瞬間、地鳴りがした。

 この音、何処かで聞いたことがある。……ああ、あれだ! いつだったかテレビで見たバッファローの大移動だ。……ここ市場だよね?


「まさか、このタイミングとは……! 皆様、早く近くの店に避難して下さい!」


 あのロクロウさんが青ざめていた。

 一体……何が起こるんだ!?


「ツッキージ市場名物、予告無し突然のタイムサービスとそれに合わせた主婦の大移動。下手に巻き込まれりゃおれでも死ぬぜ。けど……いつか!」


 近くにいたジャンキーさんに聞いたら武者震いしながら答えてくれた。

 え……買い物で死ぬの? タイムサービスは命懸けなんだなあ。

 おや、地鳴りがすぐそばまで近づいている。早く避難しなければ。

 オレが近くの手拭い屋に逃げ込むと主婦の大群が通りを駆け抜けていった。その光景はまさに圧巻。自然の雄大さと主婦の偉大さに改めて気づかされた。

 主婦がいないなったのを確認し、皆と合流する。あれ? 彼方くんと奈川木がいない。


「あっれー? 迷子になっちゃったのかなあ?」


 オレは頭をポリポリと掻いて、ロクロウさんが指示を飛ばすのを聞いていた。

 護衛の人達が散っていく。ロクロウさんも転移魔術で王宮へ行ってしまった。オレは今、キリリアさんと二人きりだ。

 待って! オレはまだ心の準備が出来てないんだけど! せめて深呼吸……って、キリリアさんいつの間に! さっきまでいなかったよね!?


「ずっといましたよ。私のスキルで気配を消していましたから、気づけなくとも無理はありません」


 じゃあギルドの時から本当はいたんだ。そういえば、工房で昼飯を食べる時もいつの間にかいたしな。隠密とか、そんな感じのスキルなのかな?


「それでは馬車に乗って下さい」

「あの……隣に座っても良いですか?」

「? 構いませんが」


 気づけばキリリアさんが目の前に馬車を召喚していた。かなりの早業だ。

 オレはキリリアさんの許可を得て御者台に座った。隣同士。自分で言っといてなんだが少し照れる。

 馬車はゆっくりと走り出した。出来ることなら、これ以上スピードを上げずにこのままのペースを維持してほしい。

 オレはこっそりとキリリアさんの綺麗な横顔を見る。多分バレてる。

 沈黙が続く。


「あの、キリリアさんって普段どんな仕事してるんですか?」


 口から出たのはとりとめのない質問だった。

 もっと気の利いたことは言えないのかねえ、オレ?


「普段は先輩の秘書業務を。最近は書類仕事の手伝いが増えています。三人の新しい弟子が出来たので本人も何かと忙しい様子です。まあ、以前より楽しそうで何よりなのですが」


 先輩……ロクロウさんのことだな。エチゾウさんの話だと確か、ロクロウさんはパーティー解散後少しの間だけ魔法大学に通っていみたいだし、その時に知り合ったのだろうか。


「秘書ですかあ。キリリアさんって何でもそつなくこなしそうですし、なんかそういうの似合いますね」


 具体的に言うと黒スパッツにタイトスカートの秘書ルックが。

 あ、想像の鼻血が。


「そんな事はありません。私はどうやら表情の変化が乏しい質なので、人間関係では誤解を招き易く失敗することが少なくありません。なので、私はオダケン様が羨ましいです」

「オレがですかい?」

「はい。オダケン様は感情と表情が直結していますから。可笑しい時には笑って、悲しい時には泣く。その方が人間らしくて私は好きですし、そうありたいと思っています。無いもの強請りですが」


 キリリアさんはふふ、と自嘲した。その横顔は憂いを帯びていた。

 オレは今日初めてキリリアさんと出逢った。だから、普段のキリリアさんを知らない。どんな返事をしたら良いのだろうか?


「何故でしょう。オダケン様と話していると本音が溢れてしまいます」

「……そりゃあ……オレは人間自白剤ですからねえ」

「ふふ。何ですか、それ?」


 結局、オレはおどけてみせることしか出来なかった。でも、キリリアさんが笑ってくれたから良いかな。


 その後、彼方くんと奈川木はあの薬屋で見つかったそうだ。あの大移動に巻き込まれ、彼方くんが奈川木を体を張って庇ったせいでボロボロになっていたところ、偶然通りかかったあの魔女っぽい人が治療してくれたらしい。

 王宮に帰ってきた時の二人は手を繋いでいて、どことなく甘酸っぱい雰囲気だった。

 どろり。

 どろりどろり。

 主人公とキリリアさんが少し良い雰囲気?

 でも彼方くんと若菜ちゃんの方が良い雰囲気?

 そろそろリア充がエクスプロージョンの予感?

 遂に未だ出番のないチートが活躍?

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