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6 非リア充 楽しい社会科見学 の巻

 なんと一件だけお気に入り登録がされていました。

 御愛読有難う御座います。

 スターウォーズep7の制作決定の時と同じくらい嬉しいです。

 さてさて。

 今回は一話で書ききれなかった為、何部かに分けての投稿となります。

 一話は大体四千字前後と決めているのですが、今回はほぼ五千字です。

 でもいつも通りまったり日常です。

 冒険は……もう少し先かなあ。

「あっれー。迷子になっちゃったのか?」


 オレは頭をポリポリと掻いた。多分迷子だ。絶対迷子だ。ここに来るのは初めてだから、安全な王宮と違いどんな不足の事態が起こるのか分からない。早いとこ、彼方くんと奈川木と合流したい。

 まったく、どうしてこんなことになったのだろうか。ねえ、ロクロウさん?


「たった今、王宮に使い魔を送りました。カナタ様とワカナ様は御一緒の筈です。王立騎士隊の皆さんは二人組に別れて捜索を。混乱を避ける為、またお二人のお顔を知る者は少ないので、人員は少なめに使い魔を中心に捜索します。キリリアはオダケン様を王宮まで護送。私も戻り次第探知魔法を使用し、関係各所にお二人の位置情報を連絡します。以上、解散」


 ロクロウさんの号令で、護衛でついて来ていた人達が散っていく。こりゃあ中々の大事になったなあ。二人が迷子になったせいで。


「それではオダケン様、王宮へとお送り致します」

「はーい」


 オレはキリリアさんと一緒に王宮へと歩き出す。

 何でこんなことになったのかというと、事の発端は今日の朝に遡る。



 オレは朝食のパンをモギュモギュと齟齣していた。噛むたびに口中に魚介の旨味が広がる、なんとも不思議な潮味のパンだ。他のおかず、チーズのように濃厚な味わいの葉野菜やこんがりと焼けた肉との相性もバッチグーだ。思わず口に詰め込んでしまう。ああ、フォークが止まらない。止まらないよ、母さん!


「ほうおふごうっへはんはっへ?」

「口いっぱいに頬張りながら喋るのはお行儀が悪いですよ、オダケンくん」

「ング……ング……プハッ。今日の授業って何だっけ?」

「ええと、確か……」

「明日は特別授業を行うから楽しみにしておけ、って昨日ロクロウさんは言ってたな。内容については教えてくんなかったけど」

「う~ん。ロクロウさんの楽しみにしててはいろんな解釈が出来るからなあ」


 単純に明日はお楽しみにって意味と、ビシバシ鍛えてやっから楽しみにしておけって意味の二つだ。以前後者の時があった。あの時は日が暮れるまで簡易ポーションを作らされた。簡易と侮るなかれ。全ての手順を正確に行わないとダークマター化してしまうのだ。しかも、この簡易ポーションの作成は難関と名高い魔法調薬師の免許取得に必須なのだ。ロクロウさん、オレ達は一体何を目指してるんだい?


 食後のお茶を飲んでいたら、ロクロウさんが後ろに女性を連れてやって来た。キリッとしたクール系眼鏡美人だ。オレ達が召喚された時にも見かけたなあ。彼女か? 彼女なのか? オレに言ったあの言葉は嘘だったのか? 泣くぞ?


「お食事中申し訳御座いません。こちらは私の部下のキリリア・ ユーマンです」

「キリリア・ユーマンです。宜しくお願い致します」


 なーんだ、部下か。オレはロウロウさんを信じていたよ。そんなことより何か御用? そしてキリリアさん、オレは今フリーですよ? 今度お食事でもいかが?


「実は今日の授業は、街で社会科見学を行います。なので授業開始の時間に第二南大門に集合をお願いします」


 街? 社会科見学? オレ達城から外に出るの初めてじゃないですか。いやあ、悪い意味でなくて良かった~。これは楽しみだ! ドキドキワクワク!

 その後は各自部屋に戻り、準備をしてから集合場所へと向かった。

 門の前には馬車が用意してあって、ロクロウさんとキリリアさんが待ち構えていた。その周りには何かの制服を着た五人のオッサンやお兄さんお姉さんが整列している。どちらさん?


「今日は王立騎士隊の小隊、チームプレデターの皆さんが一日護衛をしてくれます」

「エッヘン! ワタシがチームプレデターの隊長だ。チュウマ・カリシキ、気軽にチュウマ隊長とでも呼んでくれ。ヨロシクな、未来の救世主たち!」


 一番歳上そうな、冴えない中年のオッサンが前に進み出てきた。「救世主たち!」はビシッとサムズアップで決めポーズ。なんかオレと似たニオイがする。絶対この人独身だ。同い年の奴らが次々と結婚していく中自分は良い機会に恵まれず焦り、そしてその鬱憤を仕事にぶつけて日々の酒量も増え続けている人だ。おお、非リア充の同志よ。共にリア充を呪おう。

 てかプレデターは補食者っていう意味だよね? その補食者さんが護衛? 何だろう、嫌な予感がする。


「いよ! いいぞ、永遠の中間管理職!」

「護衛任務なんて凄く久しぶりね。何年振りかしら?」

「いつもは暗殺や殲滅の荒事中心だからね。皆も流石に今回は問題起こさないよね?」

「暴れらんねぇとかマジ萎えるわぁ……」

「コラッ! ワタシの自己紹介が終わったら皆は一斉にクラッカーを鳴らして盛り上げる、と事前に打ち合わせしていただろ! クラッカーはどうした!」

「「「「部屋に忘れました!」」」」


 ビシッと四人の敬礼が揃った。

 あー、不安だ。彼方くんと奈川木も不安そうな表情だ。完全にこの人達護衛に向いてないでしょ。攻撃こそ最大の防御を地でいく人達でしょ。最後の人なんかバトルジャンキーでしょ。ロクロウさんも苦笑いしてるし。キリリアさんは無表情だし……そんなお顔も素敵です!


「それでは……ワカナ様。王立騎士隊について説明してみて下さい」

「え、えっと……。国王直属で王国騎士団とは別の命令系統を持つ騎士隊。言わば国王の私兵で、国内外を問わず活動する精鋭。でしたっけ?」

「はい、完璧です。今日はこのように社会科見学の所々で皆様に質問を致します。全て以前に私が教えた内容の復習です。お答えになられないという事は御座いませんよね? もしそのような事があったら……」


 あ、あったら……? ゴクリ。


「内緒です」


 ロクロウさんはニコニコと笑っていた。

 ひ、冷や汗が止まらない……!



 ガラガラと車輪が石畳の上を転がる音がする。

 現在は冒険者組合本部へと向かって移動中の馬車。そう、ギルドです。いよいよファンタジー感が溢れてきた。ようし、いろんな美人受付嬢と仲良くなっちゃうぞ。ニシシシ。


「王都シットーを東西に分ける、このカラン大通りが現在のような姿になったのはリヴィア歴8年からです。それまでは剥き出しの地面で排水設備も備わってはおらず、道の両端には店舗や商会が軒を連ねていませんでした。この通りの工事が開始されたのは前年のある事件が原因です。それは何でしょう? カナタ様」

「簡単。ランシー事件だな」

「正解です。魔法学者アメフ・ランシーが日照りで悩む農村の為に開発していた天候魔法の暴走が原因です。この雨は事件三日後に、バカンス中だった醒剣賢者ケン・ジャキーが帰ってくるまで降り続けました。その後ランシーは投獄されましたが、獄中で書かれたランシー空雲理論は後の天候魔法開発に大きく貢献しました」


 馬車に乗ってからずうっとロクロウさんの王都シットー解説が続いている。しかもいつ当てられるか分からないから、聞き流すことが出来ない。ああ、早くギルドに着いてくれ。


「あと五秒程で目的地に到着します。準備をお願いします」


 願いが通じたのか、御者台のキリリアさんから突然声がかかった。オレ達は以心伝心だね! って、五秒前? 四、三、二、一、馬車停止。わお、ぴったり。

 馬車から降りると、冒険者ギルド本部のエントランスが悠然と構えていた。多くの冒険者と思しき人達が出入りしている。頑丈な鎧に身を包む者、杖を持ちローブを纏う者、背丈を越える大剣を背負う……ってバトルジャンキーそうな護衛の人じゃん。なんかストレッチしてるし……。闘う気満々だ。あ、「問題起こさないよね?」発言の苦労人そうな護衛の人がジャンキーさんを羽交い締めにして全力で止めにかかってる。

 大丈夫かなあ、この人達……。


「それでは、私は馬車を駐車場に停めてきます」


 キリリアさんが行ってしまった。実はあの馬車を牽引していた一角馬はキリリアさんの召喚従魔なのだ。なので、今日はキリリアさんは運転手役。まさか、その為だけに呼ばれてたりして。意外とロクロウさんは部下遣いが荒い?

 ちなみに従魔とは調教して家畜となった魔物のこと。普通の動物と違い労働用にされるものが多い。なんでも、例外はあるがほとんどの魔物の肉は堅くて不味いそうだ。それでも薬に利用されたりするらしい、とロクロウさんが出発前に言っていた。


 オレ達がギルド内に入ると、中々の賑わいを見せていた。例えるなら、休日のジャスコのフードコートだろうか。食堂が併設されているので、事実そのような有り様だ。ただ雰囲気はかなり剣呑だ。何かあったのだろうか?

 どうやらカウンターで数人の冒険者が言い争っているようだ。なんでも二つのパーティーでクエストのブッキングがあったらしい。それで、ギルドはクエスト報酬を半分ずつにしようとしているんだとか。

 そりゃあギルドの不備だな。カウンターのお姉さんなんか、責められすぎて小さくなってしまっている。ああ、一方のパーティーの人が剣を抜いてしまった。


「皆様、運が良かったですね。これから凄いものを見られると思いますよ」


 良いの? 一触即発の乱闘寸前だよ? ジャンキーさんが参加したそうな目でウズウズしてるよ?

 おや、奥からいかついオッサンが出てきた。


「黙れ、このたわけ者共! 手前ぇらがうるさいせいで、子供が起きちゃっただろうが!」


 オッサンはドカンとカウンターを殴り、騒いでいた冒険者達を一様に黙らせた。大きな背中に隠れて見えないが、赤さんを背負っているようだ。静まり返ったギルド内に赤さんの泣き声が響く。

 一応ギルドの制服着てるし、腕章からかなりの役職というのは分かるのだが……何者?


「あちらの男性は冒険者組合本部ギルドマスター、つまり全ギルドのトップを務め、元S級冒険者で付いた異名が“赤獅子”のエチゾウ・オーオカさんです。彼の冒険者間の揉め事を仲裁する手腕は、“オーオカ裁き”と呼ばれる生きる伝説なのです。これを見られるとは、皆様は本当に幸運ですね」


 オッサンは顔を真っ赤にして、騒いでいた冒険者達に詰め寄る。まるで怒り猛る獅子の形相だ。夜トイレに行けなくなるくらい恐い。


「手前ぇらがバカでかい声でぎゃあぎゃあと騒ぎやがるから、うちの子供が起きちゃったでしょうが! これ……どうやって落とし前つけてくれんだ、あぁん?」

「ひ、ひい! ごご、ごめんなさい……!」

「も、もう二度としませんからどうか命は!」

「だったら、それぞれクエスト報酬持って、とっとと出ていきやがれ! このたわけ者共がっ!」


 冒険者達はひえぇぇぇ、と情けない悲鳴を上げながら荷物を置いてギルドから飛び出していった。

 オッサンはおーよちよちいいこいいこと背中の赤さんをあやしながら、カウンターのお姉さんと話をしていた。


「足りない分の金は、俺がポケットマネーから出す。だから、それぞれにちゃんとしたクエスト報酬を払え」

「え、でも……」

「口答えすんじゃねぇ。あいつらが口論していた理由は、自分達の仕事が適正に評価されないかもしれなかったからだ。あいつらはどっちとも仕事はきちんとこなしていた。ギルドその分に見合った報酬を払わなきゃなんねぇ。ギルドはそういう所の信用が大事なんだ。いいな?」

「は……はい!」

「おい、何見てんだ手前ぇら! こちとら見世物じゃねぇぞ!」


 オッサンの一喝で、ギルド内の張りつめていた空気も元に戻っていった。

 ……ナニコレ?

 なんか良い感じにまとまっているような気がするけど、職場に子供連れこんでるオッサンが完全な私事でキレて冒険者の人がとばっちりをくらっただけだよね。でも損をしたのはオッサンだけだし……。

 あの方法も、ギルドとしては勝手にポケットマネー出される方が駄目じゃない? あれを真似して報酬を二倍手に入れようとする輩も出るんじゃないの? 信用の前に面目が……。


「どうですか? 凄かったでしょう、彼の剣幕は。ああやって彼は揉め事をうやむやにするのが得意なのです。今ではその姿から“子連れ獅子”と呼ばれています」


 注目するのは裁量ではなく剣幕の方でしたか……。

 実はチームプレデターの皆さんの名前は考えてあります。

 ただ、この先また登場するかどうか……。

 作者は気に入っているんですけどね。

 今回は新キャラクターが多かったからな~。

 その内、活動報告あたりで登場人物をまとめるかも。

 過度な期待はしないでください。

 作者のメンタルはちびまる子ちゃんの山根くんの胃腸並みです。

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