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4 非リア充 魔法を教わる の巻

 主人公達が魔法を使えるようになります。

 『エクスプロージョン』を覚えるのはあと少し先です。

 そもそもあれはユニークな魔法ですから。

 前半はちょっとした説明。

 後半は妖怪ホノボーノさんの出番。

 ちなみに作者はプリチー族至上主義です。

 ふぶき姫登場回は「萌えキャラキター!」とイナホちゃんばりに叫びました。

 でも初登場が本編より先にニャンパチ先生とはね。

 オープニングにはよく出ていたのにね。

 ジリリリリリリッ! とけたたましい目覚まし時計の音で目が覚める。オレはベッドから這い出て、スパコーンとそれをはたき落として止めた。オレの眠りを妨げる奴は何ぴとたりとも……グウ。ジリリリリリリッ!! わかりました! もう起きますから止めて! ああ、メイドさんに起こしてもらいたかったのに……。

 昨夜は彼方くんの部屋で遅くまで盛り上がったので、まだまだおねむなのである。枕投げはしなかった。オレも色々なほらを吹いたので疲れました。結局、彼方くんが一番恥かいてたなあ。

 オレは水差しから直にグビグビッと水を飲む。すぐに、なくなった分が補充される。

 この異世界は魔法技術が発達している。そのせいか、オレ達の世界と生活の差があまりない。

 例えば今の目覚まし時計。これ一つをとっても多くの魔法が使われている。この時計は太陽から放出される微量の魔力を感知する事で、適切な時間に調整するような魔法陣が設置されている。さらにこれを構成する歯車やバネは、寸分の狂いも無いように魔法加工されている。また音にもこだわりがあり、目が覚めるが決して不快過ぎないものにされている。それらには職人の高度な魔法の技術が使用されている。外観にしてもどこを見ても職人の息遣いまで伝わってくるような逸品だ。勿論、その分お値段は張るので、庶民には手の届かない高級品である。

 他にも、この世界には上下水道が存在する。空間魔法と浄化魔法の魔法陣を水瓶やトイレに設置しているのだ。王都内は各家庭に完備され、隣村にも徐々に普及し始めている。この水差しにもその魔法陣が使われているが、それは一般的ではなく実はこれも贅沢品だ。

 なんでも、この世界は魔法陣が開発されてから一気に発展したらしい。何処にでも設置が可能で、魔力を供給すれば半永久的に活動が可能。作った人天才だね。

 そんな超弩級な調度品に囲まれながらオレは起き上がった。さてさて、朝食です。ないなんて言われたら超ショックです。おお、今朝のオレの調子は絶好調のようだ。と下らないことを考えながらオレはいそいそと着替え始めた。

 この世界の服は若干独特。ボタンがないのだ。ズボンと下着を着たら、羽織りのようなものを帯やベルトで締めるのが基本。なんかこう、ジェダイの騎士っぽい。つまりもの凄くカッコイイということ。鏡の前ではいポーズ。

 ワイシャツはあるけど、前の部分が魔法のように、てか魔法でピタッとくっつく。どんな原理なんだろう。

 部屋を出て、オレは道行くメイドさんに声をかけながら食堂へ向かう。挨拶は大事です。出来ればこれを機にお近づきになりたい。そんな邪な思いを抱くオレに、働き者のメイドさん達は穢れのない笑顔で「おはようございます」と返してくれる。くっ、静まれオレのジャネンバ!

 そんなことしてたら、いつの間にか着いていた。二人とも、もうお揃いのようだ。彼方くんに遅いと怒られた。先に食べてて良いよと言ったら、また怒られた上にデコピンまでされた。その光景を奈川木に温かい目で見守られた。理不尽!



「チチンプイプイ!」

 オレの指先から炎が出た。

 おお、凄い! オレにも魔法が使えたよ、瞬平! もちろん、ヘルハウンドは手伝ってないですよ。

 という訳で、ロクロウさんに魔法を教わっていました。理論を頭に叩き込む前に、まずは魔法を実感する所から始めるとのことです。なんでも、魔法を使うにはイマジネーションが必要なんだとか。

 オレと奈川木は成功したが、彼方くんが中々上手くいかない。それに焦って余計に集中力を欠いてしまっている。負のスパイラルだ。


「カナタ様、落ち着いて下さい。焦ってはいけません。心を穏やかにして、自分が魔法を使える事は当然だと考えるのです。イマジネーションです」

「そうそう、深呼吸して落ち着きなよ。ほら、ひっひっふー」

「ひっひっふー。ってこれ深呼吸違う!」

「オダケンくん、彼方くんをからかっちゃ、めっ! ですよ」

「ごみんなさーい……しゅん」


 昨夜以来、奈川木の態度が何処かよそよそしかったものから、親しみ深いものへと変わった。会話も増えた。でもなんか……こう、違うんだよな。同い年の異性に対すると言うより、弟や子供に接する感じ。ちょっと母性本能をくすぐり過ぎたかしらん?

 しかし依然として彼方くんの魔法は上手くいかない。これはオレがいっちよ一肌脱いでやりますか。


「彼方くん、想像力がたりないよ」

「じゃあ、どうしろってんだよ!」

「昔を思い出すんだよ。具体的には中学二年生の頃のことを。あの頃に戻る……違う、進化するんだよ」

「…………マジで?」


 彼方くんが青い顔になる。そりゃあねえ。昨日明かした黒歴史を再現するんですから。公開処刑なんて生半可なものじゃありませんよ。閻魔裁きレベルですよ。


「ねえ、してよ! メガシンカしなさいよ!」

「く、くう………………。フ、フハハ。フハハハハハハハハ!」

「彼方……くん?」

「大丈夫ですか……カナタ様?」


 顔を真っ赤にしてうつむいていたと思ったら、急に高笑いをし出した彼方くん。奈川木もロクロウさんも困惑している。きっと、どちらも中二病の末期症状をみるのは初めてなのだろう。

 さあ、今こそ真なる己を解き放つんだ!


「フハハハハ! 我が名は【永遠彼(ビヨンド)()超越者(ネバーエンド)]】! 力無き弱者よ、我圧倒的存在の前に平伏すが善い! 爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! Vanishment this world!」


 おお、凄い! 凄いイタい! ビヨンド・ザ・ネバーエンドって矛盾してね? しかも最後の部分の発音がやけに良い。ああ、笑い過ぎて腹が痛い。

 彼方くんが手を頭上に掲げると、全ての光を飲み込んでしまいそうな漆黒の流体がオレ達を覆うように天球状に広がっていった。無事魔法も使えたようです。あれ、これオレ達大丈夫なの?

 チラッとロクロウさんと奈川木を窺ってみる。二人とも口をぽかんと開けたままでいた。


「彼方くんがおかしくなっちゃった……」

「素晴らしい。初めての魔法で上級闇属性魔法を成功させるなんて……!」


 まさかいきなり上級魔法とは……。まったく、とんだチート勇者様だ。

 そんな勇者様はパタリと倒れると、青白い顔で白眼を剥いて口から泡を吹き出した。漆黒のドームも同時に活動を停止し、崩れ落ちていく。死んで……はないね、うん。これ全然大丈夫じゃないよね?

 ハッとしたロクロウさんは、急いで彼方くんの口に青い液体の入った瓶を突っ込む。徐々に顔に赤みが戻っていった。


「どうやら魔力切れのようです。たった今ポーションを飲ませたので命に別状はありませんが、急いで医務室へ運びましょう」


 という訳で彼方くんをエッサホイサッサと担いで、医務室のベッドに優しく寝かせてあげる。放り投げたりはしない。


「ったくコイツ、初めてなのに無茶しやがって……!」

「無理をした彼方くんもいけませんが、オダケンくんも煽り過ぎでしたよ。反省してください」

「はーい。ごめんなさい、彼方くん。お詫びに今夜のデザートのプリン譲るよ」

「ハハ……言質は……取った……ぜ?」

「わお。回復早すぎ」

「彼方くん、もう目が覚めたんですか? 今ロクロウさんが薬湯を煎じて持ってきてくれるそうです。安静にしていてくださいね。オダケンくんもお静かに」

「「ラジャーラジャー!」」


 二人してどこぞの戦闘ドロイド並みの返事をする。

 どうやらオレは勇者の回復チートスペックのせいで今夜はデザートなしのようです。迂闊だった……ガク。まあ、何はともあれすぐに元気になりそうで良かった良かった。

 そーだ。二人に関して昨日からずっと気になっていたことがあるんだよね。昨夜のプチ秘密暴露大会でも話題にならなかったし、この際だから聞いてみようかな。


「そう言えばちょっと気になってたんだけど、どうして奈川木は彼方くんのこと初めから下の名前で読んでたの?」

「実は私達、幼馴染みなんです。家が近くて、小さな時はよく一緒に遊んでいました。でも小学校高学年の頃からだんだんと疎遠になってしまって。別々の中学に進学して、彼方くんが不良になったと聞いた時には驚きました。まさかあんな理由があったとは思いもしませんでしたが」


 彼方くんが顔を真っ赤にして頬を掻く。今の時点でこの病人をいろいろぶん殴りたい程羨ましいことがあるが、まだ自重しておく。話の続きを聞きたい。


「高校で再開して、二年生で一緒のクラスになれて、でも彼方くんがあまり学校に来ないので中々話しをする機会がありませんでした。それでやっと一緒に帰れる事になって、色々お話しして、やっぱり変わってないんだなあ、なんて思っていたらあの事故に巻き込まれて、いつの間にか此処に来ていました」


 なるほどねえ。くっっっっそ羨ましいぃぃぃぃ! 何だよこれ! ラブコメですか!? 昔の少女漫画ですか!? ガアアアアァァァァ! リア充は爆ぜろォォォォオオオオ!! はあ……はあ……。


「異世界に来ても本当に彼方くんは変わりませんね。昔から頼られたがりのお兄ちゃんみたいだったんですよ。無茶ばかりして大変でした。しかもからかい癖のある弟みたいなオダケンくんまでいますから、もっと大変です。だからもっともっと私がしっかりしないと、って思っちゃいます」


 そう語る奈川木の表情は笑顔だった。聖母のように慈愛に満ちたその顔に、オレは毒気を抜かれてしまった。

 あんだかな~。とりあえず、謝っておこうかな?


「うーん、なんだか面目ない」

「俺も……次からは気をつけるよ」

「はい、お願いします」


 医務室にオレ達三人の笑い声が響き渡った。


「さあ、カナタ様。薬湯が出来ました。とても効きますよ」


 タイミングを見計らったかのようにロクロウさんが現れた。その薬湯は長崎屋の手代さん顔負けのステュクス川の清濁だった。


「これを……飲むのか?」

「はい、勿論です。よぉ~く効きますよ。魔力切れは時と場合によっては死に至ります。私からも言いますが無茶は厳禁です」


 ロクロウさんはニコリと笑いながら頷いた。

 彼方は助けを求めるような目でオレ達を見る。ごめん。無理だわ。

 その後、医務室に蛙の断末魔のような彼方くんの悲鳴が響き渡った。チーン。

 若菜ちゃんはオカンキャラです。

 言っときますがヒロインじゃありませんから。

 ヒロインの子は酷い目にあう予定です。

 そりゃあもう、えろど……ゲフンゲフン。

 何かしらの障害がなきゃ、やっぱり恋愛要素は燃え上がりませんからね。

 ぶっちゃけると、主人公くんには悲恋をさせる積もりしかありません。

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