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カラコーリチクの音
リンリンとなるカラコーリチク(すず)の音。
懐かしい鼻歌。
「ご主人様ぁ?」
不思議そうに首を傾げた彼を横目で見る
「どうした?」
「いえ、ご主人様がやけに嬉しそうだと思いまして。」
「そうか?」
ボクは自分の感情がよくわからない。
長いことそういうことを考えたことも無い。
国の犬は犬らしく従順に従えばいい、ボクの存在意義はそれだけだ。
“彼を見つけ出して、静かに暮らしていたい"なんて、そんな都合のいい願いはきっと、空に溶けて消えるのかもしれない。
「はい、ご主人様」
言う。
「そんなことはないと思うがな。」
「そうですか?俺にはかなりご機嫌に見えますが…」
「別に特別機嫌が良いわけではないが、懐かしいと思っていただけだ。」
「懐かしい?」
「昔、この音のする馬車が売っていた異国の人形が大好きだった。」
ボクは昔、あの馬車の来るたびにぬいぐるみを買っていた。』
懐かしい。
もう何年も買ってないが、今日みかけたなら、見るぐらいはしよう、思い出混じりにな。
リンリン、リンリン。
懐かしい音に耳を立てていた。
リンリン。リンリン。