有り合わせのビーフシチュー
ボクは彼を大広間に連れていき、椅子に座らせた。
「ほら……。」
テーブルの上にビーフシチューを置く。
冷凍庫から材料を引っ張り出して有り合わせのビーフシチューを作った
彼は隠しきれたとおもっただろうが、腹の虫が鳴いていたのはお見通しだ。
「…………。」
彼は固まってジッ、とビーフシチューを見詰めていた。
「何見てる。喰わないのか?」
「あっ、えと……ごめんなさい…その…」
「謝るな。どうした、腹が減ってないのか?どこか悪いのか?」
「あっ、すみません…あの、違います、どこも悪くないです、お腹も減ってますその、えっと……ごめんなさい」
謝るなと言ったそばから彼は謝っていた。
「……食べ方が分からない…とかか?」
「…はい……申し訳ございませんオレ…無知で…その……」
彼いわく日頃はパンと水のみ。
ラッキーな時は雇い主の食べ残しがもらえたそうだ。
彼はボクの顔色を伺いながら話している。
怯えは隠せていない、
「謝るな。すこし待ってろ。」
ボクは台所へ行くと自分の分も持ってきた。
「?」
「いいか、真似をしてみろ。こう持つ。」
『!はい』
彼はおぼつかない手つきながらも真似をする。
「出来ました」
「次はこうして、こう。」
口へ運ぶ動きをする。、
「んっと、こう…で、んっ!できまふぃた!」
ボロボロ溢しながらではあるが、一口頬張って嬉しそうに言う。
可愛い。
「くすくす…良くできました。」
少し笑いながら彼を誉める。
するとものすごく嬉しそうに笑った。
「ん゛む、んく」
コツを掴み出した彼はガツガツと、食べる。
「凄い食欲だな…」
そうとう腹が減っていたようで、すぐに空になってしまった。
ミルクも残さず口ひげをつけて美味しそうに飲み干す。
それでももの足りなさそうにしていたものだから、
つい、自分の分を与えると嬉しそうに食べた。
ミルクも新しく注いであげた。
「美味しいです、ご主人様!」
世話を焼くのも悪くないかもしれない。
ぐらりとボクの心が揺らいだ。