風呂へ
「着いたよーここだろー?貴族の町か…兄さん金持ちなんだなぁー…」
「ボクには…無意味だかな。」
「ハハハ、兄さんは何者なんだい」
「…そうだな…死神、とでも名乗っておこう。」
「?!まさかぁー、ご冗談でしょう?」
「さぁな。そうだ、運賃は幾らが良い?1ゴペと三ペソで良いか?」
「太っ腹だなぁー勿論OKさ」
「さて、イブレット」
「はい、ご主人様。」
彼はボクに返事をする。
「手を出せ。」
「…はい。」
怯えた顔で手を恐る恐る差し出してボクの手に乗せた。
そのまま掴みゆっくりと馬車から下ろした。
「君は…腹は減ってないか?喉は?キズは痛むか?」
彼は物凄く驚いた様子で いいえ と言う。
「歩けるか?」
「???」
彼は戸惑っていた、今まで言われたことのない事なのかも知れないな。
「しょうがないか…」
ボクは彼を持ち上げた (いわゆるお姫様だっこ。)
「っわっ?!」
「動くな、すぐに家に着く。」
「っ?!はい、っ」
「しっかり捕まっておけ、落ちるぞ。」
「っ、はい、」
彼はボクにしがみついた
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ドアを開け、彼を下ろし電気を着けた。
「はぁ……はぁ……少し、そこで待っていろ。」
彼を玄関のカーペットの上に立たせ、暖炉に火を入れ、風呂を沸かし、
彼の方を振り返ると薄汚れている汚ならしい彼がいた。(暗くてよく見えなかった。)
髪はボサボサ、手足は傷と汚れで物凄い、男には見えぬほど痩せていてそうとう酷い扱いをされていたのだろう。
このスーツはもう捨てないといけないズタボロの上に泥が付き、酷い匂いがする。
「風呂に入れるからこっちへ来い」
そう言えばすぐにこっちへ走ってくる。
昔家族に内緒で飼っていた…捨て犬みたいだ。