奴隷を、自宅へ迎え入れる事にした。
任務の帰りにその出会いはあった。
今、歩いて自分の家に向かっているところだ。
普段は組織の個室に寝泊まりをしているのだが、約2年ぶりに自分の屋敷に帰る事にした。今更庭の薔薇が心配になったからだ。
「ん……?」
『~♪~♪』
マヌケな音楽と共に現れた馬車の男が僕を見つけるとこう言う。
「おっ、イケメンなお兄さんよ一人買っていかないかい?
若者が揃っているぜ?奴隷にするもよし。愛人にしてもよし。
今見せてやるよ。 」
「チッ、」
人身売買か面倒臭いな…それに僕は一応女だ。
「えーと、一人目は…」
長々と男と女の奴隷を売り込む店主。
眉ひとつ動かさない僕に焦りを覚えたのだろうか。
「あ、こ、こいつはどうでしょう!?青髪の若い男!愛人や労働者にいかがでしょうか?!色白の肌、このガラスの様な緑!素敵でしょう?!」
ガタガタと震え、目には光を宿さず、脅えきっているその奴隷が顔を上げた瞬間。僕は息を飲んでしまった、
似ている、これ以上に無いほど彼に似ているのだ、
数年前連れ去られたフィアンセのセラに、
あの柔らかなグリーンの瞳。クセッ毛ではねた横髪
「セラ…」
「兄さん?あー、こいつは傷物だからな、半額で良いけど男だからなぁ…」
ぶつぶつと言う。
「おい、こいつはどこで手に入れた?どこから連れてきた!!!」
思わず胸ぐらを掴み吠えるように言う。
「?!分からない!俺もこいつは別の奴から売って貰ったんだ!」
「そうか…」
がっくりと肩を落とす。
「ごほっ、ごほっ…でーこいつは買って貰えますかね…」
「ああ、こいつを貰おう。」
買ってしまった。
普段なら絶対に買わないのだが…
今日はついうっかり買ってしまったのだ。
「まーいど!!!!家まで連れていってやるよ。」
「あぁ、頼む。」
「乗りなぁー♪」
その瞬間。
鎖と手錠で拘束されたソイツは黙って僕を見た、虚ろな瞳で。
馬車の席に座り、隣に彼を座らせる。
「おい、」
「はい…ご主人様…」
一瞬激しくびくついたがすぐに返事をする。
「…名前は?」
「い、イブレットです、イブレット・ステファー…おきに召さなければお好きにお呼びくださいませ。」
彼は震えながら言う。今にも消えそうな声で。
「…イブレットか…」
彼はセラではなかった、しかし買ったからには面倒を見なければいけないだろう。
面倒臭い…
「…イブレット…血が出ているが大丈夫か?」
「?!!!」
彼は慌てて傷を拭いて血をぬぐっていた
「そんな薄汚れた服で拭いたら雑菌が入るぞ…」
僕は堪らなくなりハンカチを取りだし彼の腕に巻いた。
「あ、ありがとうございますご主人様。」
驚いた様子で彼は僕に礼を言っていた。
ただ僕はケッペキショウなダケだ。