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川里俊生シリーズ  作者: 川里隼生


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川里紀行NEXT

2011年6月19日日曜日。川里が朝から飛行機を乗り継ぎ、一週間前に運用が再開されたばかりの仙台空港に着いたのは12時14分だった。

川「キレイになったな・・・」

川里が仙台に来たのは初めてだが、ついそんな感想を持った。どうでもいいが、川里は楽天イーグルスは好きではない。新球団は東北より北陸か四国に作るべきだと思っていたからだ。


午後2時21分。今回の目的地である岩手県大船渡市に着いた。大船渡市は鳥栖市と違い、何もない。見る物がないということではなく、建物がない。あれは3ヶ月前だった。この町をマグニチュード9.0の地震と高さ40メートルの津波が襲った。大船渡市の住民320人が流されていった。当時川里は仕事中で、夜に帰宅した後のJNNニュースを見て状況を理解した。


その時は明日も仕事だし、親戚は全員九州に住んでいるので、ほとんど無関心だった。だが、今目の前の光景を見て川里も無関心ではいられないと思った。


午後2時53分。川里が郊外の畑に来た。一人の男が大きな穴を掘っていた。

川「何してるんですか?」

男「・・・墓」

つぶやくように言った。かなり重い話になりそうだ。

男「あんた、悪い事言わねえがら、山さ逃げろ」

川「何故ですか?地震が起きたわけでも無いのに」

そう言った時だった。この男は度重なる余震で地震が起きる直前の異様で独特な空気を知っていたようだ。地面が恐ろしい音と共に揺れ始めた。1分もないほどの時間だったが、川里は全く動けなかった。

男「山さ行け!離れろ!」

川「あなたも山に逃」

男「いい!おらはこの畑がねがったらどの道生きられねえ!」

男に背中を押されるようにして川里は山に逃げた。


午後3時1分。川里が充分な距離と高さのある場所から町を見下した。まだあの男がいたが、黒い波が町を包んだ。


午後6時37分。山の裏側にある駅から仙台行きの普通列車が出ていた。川里はあの男を忘れることにして、仙台に向かった。

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