第四話
*
「え~と、じゃあこれから、第N回生徒会を始めます」
会長はパフェを食べていた手を一端とめて形式的な挨拶をするが、
「会長、第N回って・・・、まだ一学期なんですが・・・」
と、俺に言われ、
「別にいいのよ。大体あんた、何回目か覚えてる?」
「記念すべき5回目だが・・・。まぁ、まともに始まったのは今回が初めてだけど」
「はぁ、なにが記念すべきよ。いつもいつも、あんたと仁が馬鹿ばっかりするから始められないってのに」
会長は、心底疲れたようにため息をつくと、雑念を飛ばすように頭を振り、
「今日集まった理由は一つ・・・・・・はい早姫ちゃん答えをどうぞ!」
と、手にマイクを握ったような形にし、早姫に向ける。
突然マイクを向けられた早姫は、驚いた拍子に喉に詰まらせたパフェを飲み込むと、
「え、えーと、アーミリアちゃん?」
「残念ハズレ~。正解は、例の黒衣の男は誰か? そいつは校長と関係があるのか? でした~」
「うわ~、悔しいね、隆史」
「別に悔しくないから。しかしどうした会長。甘いもん食って頭がパーになったのか?」
今度は俺がため息をつき、グデーっと背もたれに身体を押し付けると、
「誰が、頭がパーになったですって」
会長は、今までの笑顔から180度離れた恐ろしい顔で、暗に――前言撤回しないとぶちのめすわよ――と言ってきたので、
「めっそうもございません」
素直に謝る。
「まぁ良いわ。じゃあマスター、お酒持ってきて・・・」
「オイ。どうした会長」
「いやー、ごめんな隆史。そのパフェお酒入ってるから酔ったんじゃないか? まさか千鶴ちゃんがお酒に弱いとは思わなかったよ」
ははは、と和也さんは頭を掻きながら笑ってる。
「ったく、なにしてんだよ。こんなんじゃ話進まないじゃないか」
俺は再びため息をつくと、会長が俺の肩に手を置いて、
「大丈夫らよ。意識はりゃんとあるらら・・・」
「呂律が回ってないぞ。まぁ、早姫に書記しといてもらえばいっか」
俺は、早姫に記録しとくように言って、もういちど挨拶をすることにした。
「グダグダになったんで、もう一度。今から第五回生徒会を始めます」
*
少しして、酔いもほとんど覚めた会長が、ふと言った。
「ねぇ、私の苗字覚えてるよね」
俺は、当たり前に答える。
「沼田千鶴だろ。それがどうかしたのか?」
「・・・じゃあ、校長の名前は分かるかしら?」
「校長の名前? 沼田だろ」
会長は、なにが言いたいんだろうか・・・・・・と、少し考えて俺は気づいた。
「苗字が一緒。もしかして、会長と校長は家族なのか!?」
「ええそうゆうこと」
それは知らなかった。
「あのジジィは、私の祖父なのよ。だから、あのジジィのしようとしている事がよく耳に入る」
「ジジィって。あいつ何たくらんでるんだ? しょっちゅう間接的に俺に嫌がらせしてくるけど・・・」
俺が質問すると、会長が頷き、
「ええ、もっと言うと、あんたの落ち度を指摘することで、あんたのお祖父さんでこの島の市長に泥を塗ろうとしてるの。ジジィの目的はこの島の市長になることなの」
俺は、正直そこまで考えていなかったが、それがどうしたというのだろうか?
確かに、俺の祖父さんが市長じゃなくなったら違和感があるけど・・・
「確かに校長先生は意地悪だけど、どうして市長になっちゃいけないの?」
早姫が代弁してくれた。以心伝心ってやつだな・・・いや違う気がする。
「そう・・・よね・・・」
会長はため息を吐いたが、一応説明してくれた。
校長は、神津島の市長になってから、この島の山を切り崩し海を埋め立てることで、一気に開発しようとしているらしい。
それは著しい環境破壊を生み出し、島の形が変わってしまう。
協力するのは、20年前この島に来た柳田会社らしい。
要約するとこんな感じだが、なんで開発するの? 状態である。
聞くと会長も、それ以上は知らないらしく、言葉を詰まらせる。
「けど、この島の自然を壊すなんてこと、私はされたくない」
俺は、その言葉に素直に賛同する。
いまや島に大きな影響を与えている柳田会社が、さらにこの島の自然に介入するようなことがあれば、400年以上前から島人が守り続けてきた環境は、ことごとく潰されることになる。
誰だって、自分の住んでいる場所の自然が壊されて、いい気はしないだろう。
しかし、
「それを、ただの高校生がどうやって止めるか・・・だ」
俺の祖父ちゃんに言って、信じてもらうの一つの手かもしれないが、
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙しか返ってこない、あたりまえだ、どうしようもない。
目の前に鍵の開いた扉があるのに、重たくて押してもびくともしない様な無力感・・・引いてみたら開くかも・・・やめようわけわからん。
会長は、パフェのスプーンを指でクルクルと回して悩んでいる。会長のくせらしい。
早姫もあまってるパフェを口に運びながら、考える振りをしている。あくまで振りなのだが・・・
仁は、ノックダウンしたまま動かない。
こいつはこんなネガティブな奴じゃなかったはずだが、どうも今は違うらしい。疲れてるのかな?
俺は、そんな三人の様子を見た後、ガラスの外の景色に目を向ける。
「うわっ、いつの間にこんな土砂降りになってたんだ・・・」
今まで気づかなかったが、かなり降っているらしく、小さな川が出来ているほどだ。
「うわぁ、これじゃあ家に帰れないよ~」
早姫も俺の言葉に反応してそういった。
すると、会長がパッと顔を上げて言う。
「それよ! なぜジジィは島を開発するのか。これさえ解ればなんとかできるかも」
う~ん。もっともなことを言っているのだが、『それよ!』ってどれだよ・・・
「そうだな。会長は思いつくところがあるのか?」
「それが解ってたら苦労しないわよ・・・・・・」
ですよね~、と再び肩を落とす二人。
すると重い空気がなかなか拭えないペンションのガラス扉が、カランカランと鳴り女の子が入ってきた。
そして彼女はこういった。
「その答え、私が教えてさしあげましょう」
身長155前後、大きなリボンを着けていて、ここでは珍しい銀髪に碧眼、透き通るような白い肌の・・・誰だっけ?
「あっ、アーミーちゃん!」
早姫が、アーミーちゃーん、と席を立ち上がりアーミリアに抱きつく。
あぁ、今日転校してきたアーミリアか。
それにしても、女の子同士で抱き合ってるのはかなり刺激的な光景だな、うん。
「宮岡。この人は?」
会長が、尋ねてきた。
「あぁ、今日転校してきたアーミリア・D・エリヲズさんだよ」
「ふーん。明日終業式なのに転校生、か」
会長は一人うなずき、ふむふむといっている。
気が付くといつの間にか、アーミリアことアーミーは同じテーブルに座っていた。
「アーミーさん。答えってどうゆうことだ?」
俺が質問すると、アーミーは
「さきほどの、『何故島を開発するのか』についてですわ」
自信満々にすごいことを言いましたよこのお嬢さん。
なになに、RPGみたいに助言をくれる役ですかあなたは? タイミングよすぎだし・・・
もしかして見てたの今まで?
俺は、ツッコミ要素満載の登場の仕方に呆れ、解らなかった。
話を聞かれていたということに。
敵か味方かもわからない異国人が、島の政治に介入しようとしていることに・・・
・・・なんちゃって。
難しいことを考えるのは俺の役目じゃなく会長の役だし、アーミーはただの転校生さ。俺は自分の直感を信じていればいっか。
かなり期間があいちゃいましたな。
その間、ラノベ読んだりしてたんですけど、それを読んでこう書けばいいのか~と、一人でうなずいてました。
いろいろ書き方変えたつもりですが、読みにくくなったでしょうか?
それとも、読みやすくなったでしょうか?