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第一話


(注 この小説は完結しません。

    ―大地の歴史―



 初夏、浜辺に二人の人間が現れた。


 「くっ、ここはどこだ?」

と、学校の制服を着た、17歳ほどの少年がつぶやく。

 「私にも、よくわからないけど・・・たぶん二週間くらい前じゃないか、ここに来る前にきいたからな、『二週間前から変えてくれ』って・・・」


少年のつぶやきにそう答えたのは、白の制服を着た少年とは対称的な漆黒のマントで全身を覆っている人だった。かろうじて露出している口元やあごのラインは、少女のようだが、はっきりとは断定できない。


 制服姿の少年は、その人に

 「変えてくれって、何をすれば変わる? 亜人、心当たりはないのか?」


 どうやら、漆黒のマントの人は亜人(あと)という様だ。

 「二週間前は、まだ私はいないんだから、君のほうが詳しいだろ。二週間前にあった特別なことはなんだ?」


 二週間前、つまり現在、少年は記憶を辿り、クソッと顔をしかめた。

 「そういうことかよ! くそったれ!」

 

 どすっ、と少年の拳が白い砂浜に突き刺さった。



 

 ―失われた未来―


 それは、梅雨が明けて、初夏もとっくに忘れ去られた、蒸し暑いある日の出来事。


 「やっとテストおわった~」

 期末テストが終わり、机にグデ~っと突っ伏しそんなことを言ったのは、宮岡隆史。

 祖父が市長という以外は、ごく普通の高校生である。


 そんな隆史のもとに、

 「今日のテストどう? 俺は全く駄目だったよ。どうせお前もそうだろ」

と、話の内容はブルーなのに、声のトーンが異様に明るい奴が来た。


 彼の名前は、桝谷仁(ますたにひとし) 、メガネを掛けたインテリ風の外面と、クラス1の変人という内面をあわせ持つ変人だ。


 「あぁ、俺も全然できなかった。それよりも、俺は腹が空いたんで弁当にしようぜ」


 「確かに。じゃあ、屋上で食べないか? 今日は雲ひとつ無い快晴だしな」


 「それもいいな。俺は早姫を呼んで来るから先に場所とっといてくれ。」


 「りょーかいしやしたぜ、隊長! 必ず生きてかえってこいよ、親友!」


 「それ、死亡フラグだから・・・」

 隆史は、冷静なツッコミをきめたが、仁はすでに走り去っていて、いつもどうりと言えばいつもどうりの仁のボケに、隆史は肩に疲れを感じた。

  

 「さっさと早姫を探すか」

  

 教室で早姫を探すのは苦ではない。なぜなら彼女は、いつも話題の中心にいて、笑顔の絶えない天真爛漫な性格だからだ。

 そして今日も、彼女はテストの話で友達と盛り上がり、笑顔だった。


 そんな彼女に、

 「早姫、弁当にしようぜ。仁が屋上で場所を取ってくれてる」

 と、声を掛けると

 「あっ、うん。ちょと待って、今すぐいく」


 と、友達との話を切り上げて、早姫はシンプルなチェック柄の袋に入った弁当を取り出し、

 

 「隆史、お待たせ。じゃあいこっか」

 と言って、ちゃっかり隆史の隣に並ぶ、

 

 だけならいいのだが・・・


 「ひゅーひゅー・・・リア充氏ね!」


 とか言う、非リア充代表の小林の冷やかし(罵声)や、


 「本当!? やっぱり私たちラブラブに見えるんだね~」


 といった、完全に天然ガチでそれに答える早姫。


 小林はともかく、早姫は絶対に確信犯だ。俺の周りには、ツッコミが少なすぎるだろ。と隆史はため息をつき。


 「早姫は、ただの従妹だし、お前も自分でラブラブとか言うな! まだ、そんな関係じゃねいだろ!」


 と、盛大にツッコンだ。これで、みんな分かってくれるだろうと思った。


 しかし、


 「・・・まだ、そんな関係じゃない……ってことは、もうすぐ、そんな関係ってことか?」

 と、小林にツッコまれて気づく

 

 ・・・やっちまったぜ。


 「全非リア充に告ぐ、あのリア充を取り押さえるぞ!」

 小林の意味不明な号令と共にクラスの男子がこっちを見た。

 

 ・・・なんてこった。 


 「ん? ちょっとまて、現在進行形のリア充が混ざってないか?」


 「楽しいからいいだろ」


 拳をポキポキと鳴らしながら、近づいてくる。・・・なんて奴らだ。もはや人じゃない。逃げよう。

 

 隆史は自己完結して、早姫の手を握り、

 「早姫、逃げるぞ」

 と声を掛けて、走り出す。


 そんな、早姫はというと

 「恋人と手を繋いで逃避行、こうして二人は愛を深めるんだね」


 「このごに及んでまだ言うか! うわっ、もう来た!」


 こうして、隆史と早姫の逃避行が始まった。


   *


 そして、五分ほどして、

 校舎の屋上で、金属の鈍い音が響いた。

 隆史は早姫をつれて、勢い良く屋上の扉を開け、地面にへたり込んで大きく肩で息をする。 


 「ぐ、ハァハァ・・・さすがに、皆を撒くのは簡単じゃねぇな。まさか、校舎一週させられるとは」

 そんな隆史の隣で、早姫はというと……

 「いやー、本当にしんどそうだね。そんなに息あがってるし……全く、いったい誰のせいよ」


 ケロッと、言う早姫に対して、隆史は、お前のせいだよ!! とツッコむ気力も体力も残ってなく、

 「しかし早姫は、こんなくそ暑い真夏に全力疾走したのに、汗ひとつ掻いてないし、息もほとんど乱れてないってどういうことだよ……」

 と、ボソッと言う。


 確かに、早姫は中学まで陸上部で長距離を走ってたし、地方の大会で優勝するすごい奴なのだが……


 「うんうん、久しぶりに走ったのは気持ちよかったねー」


 もしかして、こいつはちゃんと今でも続けてたら、全国いけんじゃないのか?


 

 そんな隆史たちの所に、先に屋上に来ていた仁がやってきた。

 「お~、お前ら遅かったな。ン? どうしたんだ隆史、屋上の床はそんなに綺麗じゃないぞ」

 仁の言うとおり、隆史の座り込んでる場所はコンクリで固められただけのところだった。


 この学校の屋上は一応開放されてるが、ベンチが数台あるだけの一見閑散とした場所で、あまり生徒の来ないところだ。

 

 それでも、見所はある。


 「わぁ、やっぱり屋上からの景色はいいわね」

 早姫は、一番景色の良く見えるフェンスに寄りかかりながらため息をついた。


 山腹にあるこの学校は、高台という、通学する生徒に厳しく、景色を眺める生徒には最高のつくりになっていて、そこからは、波の打ち寄せる浜辺や、活気あふれる商店街などが遠くに望める。



   * 

......ここは、本土よりかなり南に浮かぶ神津島(こうづじま)。飛行機は一日一本、人口が1800人にも満たない小さな島。簡単に言えば、ド田舎だ。


 20年前、柳田海洋会社の進出により、飛行場は出来るし、島南部の地形が半分ぐらい変わったりで、大きく経済発展し、マイナーながらも、その道では、結構名の知れた島となった。


 そして、隆史達の通う『城正学園』(じょうしょうがくえん)は、島の南方にある。生徒数92人、校長入れて先生は7人。

 さらに、経費削減でエアコンはもちろん、この真夏に扇風機は一部屋一台が当たり前。

 過疎化の進む島の影響を、もろにくらっている学校だ。


 しかし、校風は良く、学生達は、穏やかな毎日を過ごしている.......


 

 

  *

 日が沈むには、少し早い夕暮れ時

 テトラポットに砕かれる波の音が響き、潮が香る堤防の上を、隆史と早姫、仁が歩いている。

 

 「ねぇ、もうすぐ夏休みだから、何か皆でパーっと、夏休みらしい遊びをしない?」

 「それじゃあ、僕の兄貴のペンションにしないか? ダイビングの道具も揃ってるし、大学生のお姉さんも来るらしいから」

 「あぁ、ダイビングは大いに結構だが、仁の場合はお姉さんが目的だろ」

 「へぇ、隆史って年上がいいのかなー。よしわかった、私も隆史のためにセクシーな悩殺水着を持っていくよ」

 「オイオイ止めろよ。絶対にそんな阿保みたいな理由で悩殺水着とか着るなよ」

 「ふぅ、やっぱり早姫さんは隆史一直線ですか」


 なんでこんな話になったのか、とため息をつく隆史。実際は彼自身にも責任があるのだが、気づかないのは本人の特権。


 そこで、三人は足を止めた。

 ここは、仁と早姫との別れ道。

 

 「んじゃ、遊びに行く話しは考えとく」


 と、隆史は去って行く彼らに軽く手を振り、再び歩き出す。

 

 ひどく湿気を含んだ潮風が、隆史を通り抜ける。 夏の太陽は、もう半分しか顔を出してない。

 

 そんな太陽を横目で見た刹那、


 目の前に黒衣の人が立っていた。


 「久しぶり。いや、はじめましてだな。宮岡隆史」


 突然だった。

 黒衣の人は、隆史が余所見した少しの時間に、隆史の視界に割り込んだ。

 まるで、超能力を使ったかのように……



   *

 太陽が目の前の黒衣を赤く淡く光らせる。

 辺りを蹂躙していた生ぬるい潮風と、肌に纏わりつく汗がいっせいに奪われたようだった。


 いったいいつ現れた……?


 もちろん隆史は、素通りすることも出来たはずだ。


 しかし、黒衣の人がそうさせなかった。

 漆黒のフードの様なもので目は隠れているのだが、まるで猛獣に睨まれたかの様に体が動かない。

 

 太陽だけが急速に沈んでいく感覚に襲われ、三日月は不気味に存在を主張する。

 波の音はどこか遠くへ行ってしまったのか、隆史の鼓膜にとどかない。


 先に口を開いたのは黒衣の人だった。というより、隆史は何もいえなかった。


 「ン、改めて自己紹介をしようか。私は亜人、性別は見たとおり……君の想像に任せるよ」


 黒衣の人は、亜人(あと)というらしい。明らかに偽名だ。勝手に話を進めるし。ふざけているのだろうか?

 

 とか思っている隆史だが、


 顎のラインとか、鼻立ちから察するに女の子か?

 いや、立ち方が男っぽいような気もする。


 と、わざわざ考ええいる辺りを見ると、結構お人良しなのかもしれない。


 しかし、はっきり言って、相手をしてられない。

 もう今は、強張っていた身体も動く。


 「亜人さん、その話はまた今度で、今急いでるんで」


 隆史は、適当な嘘を吐いて、その場を離れようとする。


 しかし、


 「この名は、君から貰ったものなんだよ。それと、君は今人生の分岐点に立っていると思ってくれ」


 空気が凍りつくような錯覚に捕らわれる。

 たった一言に心臓を掴まれる。


 「何を……」


 亜人という名前は、俺が付けたらしい。

 馬鹿げてる。

 そもそも、何故このタイミングで現れたのか、仁や早姫がいる時では都合が悪いのか。

  

 そんな隆史を他所に、亜人はほぼ一方的に話す。


 「簡潔に話そう。後二週間もしない内に、この神津島が危機に陥る。その運命をを回避してほしい。私の頼みはそれだけだ」


 「私は、この状況を見て少し希望をもった、今ならまだこの島を、救えるかもしれない」


 もう、隆史には何を言ってるか理解できなかった。


 しかし、亜人は続ける、


 「そして、私の目的は警告ともう一つ、この石を君に渡すことだ」


 そういって亜人は、黒衣の袖口から、蒼い六角形の石を取り出した。

 何かのアクセサリーの様に、紐に繋がれたそれは、少し輝いて見えた。 

 

 「これは『賢者の石』、君とこの島の運命を左右する大事な石だ。わかるね」


 もちろん、さっぱり分からないので、


 「ごめん、さっぱり―――」


 と、言おうとした瞬間、亜人は、口だけでキッと苛立ちを見せる。


 「そこまで気が付かない君は始めてみた」


 と同時に、隆史の鳩尾に鈍器のように重い拳が突き刺さる。


 隆史は、亜人が何を言ったのかも聞き取れなかった。まだ、隆史の脳に正しい情報が来ない。


 そして、隆史身体はくの字に折れ曲がり、ほんの僅かに中に浮く。

 僅かな沈黙の後、砂袋が落ちるような音と共に、隆史は地面に転がる。


 そこで、初めて痛覚が脳に届く。


 「がぁぁッ!」


 肺の空気がごっそり持っていかれた様な感覚が隆史を襲い、うまく声が出せない。


 何が、起きた?


 一撃で隆史の意識は朦朧としていた。


 そこに、亜人の影が覆いかぶさる。


 「悪く思わないでくれ、少し急いでいてな。…これも……必要なんだ」


 亜人の声が、途切れ途切れにしか聞き取れない。


 「未来は、君にかかってる……気おつけて―――――」


 そこで、隆史の意識は完全に落ちた。


 亜人は、『賢者の石』確かめ、瞬きする間もなく虚空へ消えた。

 

 



 

どうも、はじめまして。

今回の話は、序章にあたる部分です。

解りにくいと思った方も、多いかも知れませんが、広く寛大な心で受け止めてやって下さい。



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