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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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執務室へ

ギルノードの部屋の前で、エフィは足を止めると、静かに振り返った。


「殿下、お父様。ここから先は……私たちにお任せください」


「エフィ……」


ギルノードの声に、エフィは小さく首を振る。


「お父様。責任を感じていらっしゃることは、よく分かっています。

ですが、どうか……ここは私たちにお任せを」


そう言うと、隣に立つティリアへと視線を移す。


「ティリアさん。よろしくお願いしますね」


ティリアは背筋をぴんと伸ばし、力強く頷いた。


「はいっ! エフィ様。

何なりと、お言いつけください!」


ギルノードは深く息を吐くと、頷いた。


「……わかった。

必要な物があったら、すぐに言え。わかったな」


「はい。お父様」


ジグは、ギルノードに向かうと深く頭を下げた。


「お心遣い、ありがとうございます……団長。

では……お部屋を、お借りいたします」


エフィとティリアに付き添われ、ジグは扉の向こうへと姿を消す。

廊下には、カナとディオリアが残った。


レイナルトが、彼女に歩み寄る。


「カナ。どうか……彼女を救ってやってほしい。

だが、それ以上に、君の身も心配だ。

頼む……無理は、しないでくれ」


カナは静かに微笑んだ。


「ありがとうございます、レイナルト様」


そう言うと、ギルノードへと向き直る。


「それでは……ギルノード様」


まっすぐに告げる。


「行ってまいります」


「……カナ様、ディオリア様。どうか、よろしくお願いいたします」


その低い声に、カナははっきりと答えた。


「はい。

共に、全力を尽くすことをお約束します」


そして。

扉は、音も立てず、静かに閉じられた。





エフィは、部屋に張られた遮音の魔術を確かめてから、静かに告げた。


「……発動しました。大丈夫です」


その言葉に、ディオリアが小さく頷く。


『……始めようか、ジグ』


「はい」


ジグは、左腕を吊っていた布に手をかけた。

結び目をほどき、ゆっくりと腕の覆いを外す。


そこに現れたのは――腕とは呼び難い異様な()()

光を拒むような、黒々とした硬質の塊。

生気を失い、異質な存在感だけを放つ“何か”。


エフィとティリアは、思わず息を呑んだ。

その反応に、ジグは首を振る。


「……驚かせてしまいましたね。

これが……黒霧の魔獣の呪い、です」


続けて、彼女はシャツに手をかけ、ひとつ、またひとつとボタンを外していく。

露わになった上半身には、触手のように黒い呪いが這い、脈打ちながら絡みついていた。


「……っ!」


耐えきれず、ティリアは両手で口を覆った。

目を大きく見開いたまま、言葉を失う。


「な、んて……!」


さすがのエフィにも、震えが走った。

ジグは自嘲気味に微笑む。


「魔力を喰い、人の負の感情を喰って育つ……。

呪いとは、本当に恐ろしいものです」


そう言うと、彼女はカナとディオリアへと視線を向けた。


「……これで、よろしいでしょうか」


『うん』


ディオリアは答えると、カナを見た。


『……カナ、いこう』


「うん。

……私たちは、勝つよ、ディオリア。」


カナは、ゆっくりと膝をつき、跪いた。

手を組み、その中に、エリアスから託された精霊石を包み込む。


(……精霊石……。

お願い、私に、力を!)


目を閉じ、呼吸を整える。

精霊石に意識を乗せ、自身の内にある魔力を、ゆっくりと練り上げていく。


やがて――

傍らに在る、ディオリアの膨大で澄み切った魔力と触れ合った、その瞬間。


(……いくよ、ディオリア!)


刹那、光龍が咆哮した。

奔流となった魔力が、氷雪の指輪へと吸い込まれていく。

白銀の光が、指輪から溢れ、空気を震わせた。


瞬く間に、カナの髪が金色へと染まっていく。

髪は魔力に揺らぎ、額には、淡く輝く聖女の証が浮かび上がった。


カナは、ゆっくりと目を開いた。

その瞳には、()()の虹彩が浮かんでいた。


エフィとティリアが息を呑む。


「せ……聖女……様……?!」


呆然と声を漏らすジグに向けて、カナはそっとーー手を伸ばした。

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