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【19万PV突破!】精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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隊商主・ジグ4

夕食は、穏やかで心地よい時間となった。


ジグは話し上手だった。

彼女は巧みに話を紡ぐ。


隊商として、各地を巡ってきた冒険譚を生き生きと語る。

名も知らぬ遠国、見たことのない風景。

砂の海を越えた話、雪深い峠を抜けた話――。

そして、夜の焚き火の匂い。


イリシャとリゼアは身を乗り出し、その一言一句に耳を傾け、目を輝かせて聞き入った。


ジグの言葉は、聞く者の脳裏に、鮮やかな情景を描き出していく。

口にしたことのない料理や菓子。

異国の香辛料の刺激や、甘い果実の舌触りまでが、言葉となって描き出される。


折々に、小さな笑い声がこぼれた。


そうして気づけば、皿は空になり、杯も満たされては空になっていった。

誰もが、料理と語られた物語、そのどちらもを静かに味わい尽くしていた。


それは不安や緊張を忘れさせ、本当に、心に残る楽しい夕食となったのだった。





カナが部屋に戻り、就寝の支度を整えていたとき、控えめなノックの音が響いた。


(あ……。 

エフィさん? それともティリアさんかな?)


「はい」


そっと扉を開けたカナは、思わず息を呑んだ。

廊下に立っていたのは、ジグだった。


「……えっ! ジグ様……?」


ジグは柔らかく微笑むと、丁寧に一礼する。


「聖女様。夜分に失礼いたします。

少し……お話しできませんか」


カナは驚きから我に返ると、慌てて扉を大きく開いた。


「あ、はい。もちろんです。

どうぞ、お入りください」


「失礼いたします」


室内に足を踏み入れたジグは、穏やかな調子で付け加えた。


「あ、聖女様。念のためですが……レイナルト殿下の許可は得ております。

どうぞ、ご安心ください」


「そう、なんですね」


微笑むカナに、ジグは肩をすくめるように言った。


「はい。『俺とカナの時間を奪うのか!』と、ひどく怒られましたが」


「……えっ!?」


驚きに目を見開くカナに、ジグは肩を揺らした。


「すみません。冗談です。

あ、ですが、そう思われていたことは確かだと思います」


くすくすと笑う声が、夜の静けさに溶ける。

だが、ほどなくジグは表情を引き締め、その笑みを消した。


「聖女様」


ジグは声音を改める。


「レイナルト殿下とエフィ様をお連れするにあたり……。

聖女様には、私が受けた呪いについて、包み隠さずお話ししておくべきだと考えました。

そのために、こうして伺った次第です」


ジグは一度視線を落とし、静かに息を整えると、再び顔を上げる。


「何からお話しするべきか、正直迷いました。

ですが……ご覧いただくのが、一番早いでしょう」


そう言うと、彼女はマントを外し、留め具を解き、装備を一つずつ外していった。

やがて軽装になると、ジグはまっすぐにカナの目を見つめる。


「……聖女様。これが、今の私の現状です。

お見苦しいものをお見せする無礼を、どうかお許しください」


そして彼女は、左腕を吊っていた布に手を掛けた。

結び目が解かれ、覆いが外されていく。

静まり返った部屋に、布の落ちる音だけが、ひどくはっきりと響いた。


その瞬間、部屋の空気が、ひたりと止まった。

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