表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【18万PV突破!】精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

521/529

国境の森へ2

銀の鱗を震わせ、ディオリアは静かに大地を蹴る。

カナたちは再びディオリアに身を預け、国境の森へと向かった。


空気は澄み、遠ざかる辺境伯領の花の丘が、次第に視界の奥へと溶けていった。


国境へ近づくにつれ、ティリアの表情は少しずつ硬くなっていく。

耳は垂れ、先ほどまで無邪気に揺れていた尻尾も、いつしか動きを止めていた。


その変化に気づき、エフィはそっと彼女に視線を向ける。


「……ティリアさん」


名を呼ばれ、ティリアははっとしたように顔を上げた。


「あ……申し訳ありません、エフィ様。

あまりにも……夢のような時間を過ごさせていただいたものですから……」


風に紛れて消え入りそうな、小さな声。

ティリアは視線を伏せた。

膝で絡めた指先が、微かに震える。


「……戻りたい、という気持ちに、嘘はありません。

兄も、村の皆も……心配しているはずですから。

です、が……」


その声が、かすかに掠れる。

次の瞬間、ぽたり、と、金色の瞳から、一粒の雫がこぼれ落ちた。


「……エフィ、様……っ」


風に撫でられる髪の隙間から、細く震える肩が見える。


「どうして……私は……。

帝国に、生まれてしまったのでしょう……」


その問いは、ただ己の運命に向けられた、静かな嘆き。

押し殺した嗚咽が、風音に紛れて漏れる。


エフィは唇を噛みしめた。

どんな慰めの言葉も、この少女の問いに応えることはできない。

ただ、そっとティリアの傍らに寄り添い、背を撫でる。


ディオリアは何も言わず、翼の羽ばたきを、ほんのわずかに緩めた。


国境の森は、すでに遠くに見えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ