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【18万PV突破!】精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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獣人の少女3

カナとエフィ、そしてレイナルトからの報告に、辺境伯ギルノード・クラヴィスは、重々しく眉根を寄せた。

別室では、イリシャとリゼアの看病の下、獣人の少女が、昏々と眠り続けているという。

カナの癒しの力がなければ、とっくに命を落としていただろう。


目を覚ましたという知らせは、まだない。


「そうか……そんなことが」


ギルノードの低い声に、暖炉の火がわずかに揺れる。

その声の奥に、静かな怒りが潜んでいた。


「お父様。

……彼女はおそらく、ゼンウェール族長のお身内ではないかと」


エフィの言葉に、ギルノードは腕を組み、頷いた。


「……ああ。そうだな。俺もそう思う」





ゼンウェール――。


イリアム帝国の辺境――深い霧に包まれた「ゼンウェール自治領」は、帝国内にありながら、地図には空白の地として記されている。

深い森と、切り立った崖に守られる、美しくも孤高の地。

同時に、帝国が欲してやまぬ資源の宝庫。


帝国に属すると言いながら、その民――獣人は、帝国にとって下賤とされる。


だが、帝国騎士団でさえ、その深部を征することは叶わなかった。

ゆえに、族長グレイゼルの自治を認める代わりに、代価として、彼らは貴重な薬草と、希少鉱石を献上している。


それが、帝国とゼンウェールの、脆く危うい均衡であった。


ギルノードは、腕を組んだまま呟く。


「ゼンウェールは……帝国にとって、都合のいい搾取対象に過ぎん」





その頃――。

グレイゼルは、人の姿のまま、切り立った崖の端に立っていた。

漆黒の髪が夜風に揺れ、鋭い金色の双眸が西の彼方を射抜く。


『兄様、見て。

この薬草、きっと母様の熱に効くわ』


数日前――。

無邪気に笑った、妹ティリアの姿が脳裏に浮かぶ。

国境付近の薬草を摘みに行ったまま、まだ戻らない。


「……ティリア……」


拳を、きしむほど固く握りしめる。

胸の奥底で煮えたぎる怒りが、理性を喰らい尽くそうとしていた。

グレイゼルの喉奥から、人の声ではない低い唸りが漏れる。


彼は静かに目を閉じた。

次の瞬間――彼の肉体は隆起し、闇夜に溶け込む漆黒の毛並みが、全身を覆う。


四肢が大地を掴む。

爪が岩を抉る。

息遣いが野生へと変貌する。

そこには、雄々しい黒豹がいた。


――闇の狩人。


怒りと悲しみをその身に宿し、彼は崖を音もなく跳躍する。

影は、夜の底へと消えた。

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