SS エフィ・クラヴィス辺境伯令嬢6
やがて、エリアスは合格を掴み取った。
精霊庁上級官試験――幾年挑み続けても届かぬ者が殆どという、あまりにも高い壁を。
その知らせを聞いた瞬間、エフィは、思わず声を上げていた。
「……本当に? 本当に合格したの?」
「うん。まだ信じられないけどね」
照れたように笑うエリアスを前に、エフィは堪えきれず彼の手を取った。
「すごい……! エリアス、本当にすごいわ!
本当に、おめでとう!!」」
間近で見てきたのだ。
夜遅くまで資料に目を通し、精霊の記録を何度も書き直し、理解できるまで決して諦めなかった姿を。
だからこそ、その喜びは、自分のことのように胸いっぱいに広がった。
「……ありがとう」
そう言うエリアスの声が、ほんの少しだけ震えていた。
――次は、自分の番だ。
エフィは、その夜から、さらに机に向かう時間を増やした。
上級神官試験。
精霊庁上級官ほどではないにせよ、超難関であることに変わりはない。
(みっともない姿は、見せられない)
エリアスが掴んだ場所に、自分も立ちたい。
並び立つと決めた未来に、置いていかれたくない。
ただ、その一心で。
*
そして、迎えた発表の日。
二人は、精霊科の温室に向かっていた。
柔らかな陽光が降り注ぎ、精霊たちが静かに光り輝いて舞う。
「……ああ、ほんといい天気だよなー」
エリアスが、つとめて明るく言う。
「ええ、ほんとね」
エフィは微笑んだ。
その気遣いが、胸にしみる。
(ああ、やっぱりこの人は、優しい)
沈黙が落ちる。
互いに言葉を探し、躊躇い、踏み出せずにいる。
エフィは、意を決した。
「エリアス……私……」
その瞬間、エリアスの喉が、ごくりと音を立てて上下した。
エフィは、一拍置いて――そして、弾けるように言った。
「合格したの!!」
一瞬の静寂。
次の瞬間、エリアスの表情が一気に崩れる。
「……っ、ほんとに!?」
「ええ! 本当よ!」
次の瞬間には、二人とも声を上げていた。
「やったな!! おめでとう! エフィ!!」
「ありがとう、エリアス!!」
笑って、笑って、喜び合って。
精霊たちがくるくると舞い、祝福するように光を散らす。
その中心で、二人は顔を見合わせる。
同じ高さに立てた。
同じ未来を、同じ速度で歩ける。
努力も、不安も、迷いも――すべてを越えて、今ここに立っている。
エフィは、ふと穏やかに微笑む。
「ね。二人とも……ちゃんと、未来を掴めたわね」
「ああ……本当だな」
言葉はそれだけで十分だった。
互いに並び立ち、それぞれの道を選び、そして同じように夢を叶えた。
この先、進む場所は違っても――支える未来は、きっと同じだ。




