SS エフィ・クラヴィス辺境伯令嬢5
やがて彼らは高等部へと進んだ
成績は相変わらず、首位と二位を競い合う関係のまま。
名前が入れ替わることはあっても、そこに並ぶ二人の名が消えることはない。
その頃には、互いの存在が当たり前のように隣にある、親友と呼んで差し支えないほどの絆が育っていた。
昼休み。
二人は中庭の奥にある、お気に入りの木陰に並んで昼食をとっていた。
柔らかな風が葉を揺らし、精霊の気配が穏やかに漂っている。
「ねえ、エリアス」
エフィがパンを口に運びながら、問いかける。
「卒業したらどうするの? 領地に帰るの?」
エリアスは少し考えてから、穏やかに微笑んだ。
「いや。
俺は、精霊庁の上級試験を受けるつもりだ」
「……え?
……上級、を? 新卒で?」
エフィは思わず目を見開く。
精霊庁の上級官試験は、精霊官として入庁した後、何年挑んでも受からない者がいるほどの難関だ。
そもそも試験自体が行われない年もあるという。
新卒で挑むなど、無謀だと笑われても不思議ではない。
エリアスは苦笑した。
「無謀だって言われるのは承知してる。
だから今、必死に勉強してるんだ。
……っていうか、落ちる可能性の方が高いしね」
そう言いながらも、その声に迷いはなかった。
エフィは、しばし彼を見つめ――やがて、静かに微笑んだ。
「さすがね……エリアスなら、きっと通るわ」
根拠はない。
それでも、エフィは、不思議とエリアスが合格する未来しか想像できなかった。
「……ありがとう」
エリアスは少し照れたように目を逸らす。
「なら……」
彼女は一瞬だけ間を置くと、はっきりと言った。
「私は大聖堂の上級神官試験を受けるわ」
「え?」
今度はエリアスが驚く番だった。
「エフィこそ……領地に戻らなくていいのか?」
エフィはにっこりと笑う。
その表情には、迷いが一切なかった。
「ええ。エリアスが精霊庁長官になるなら、私は大神官になるわ。
二人で、この国を支えていけたら素敵だな、って思ったの」
一瞬、エリアスは言葉を失い――やがて、穏やかに笑った。
「あはは、エフィらしいな」
そして、静かに言う。
「……いいな、それ。
そうか……君となら、できそうな気がする」
エフィは嬉しそうに頷いた。
「でしょ!」
二人の笑い声が重なり合い、青い空へと溶けていく。
まだ夢語りにすぎない未来の話だったが、その光景は不思議なほど、確かなもののように思えた。




