SS エフィ・クラヴィス辺境伯令嬢3
放課後。
精霊科の温室。
エフィは、一人で精霊との調律を行っていた。
いつもの場所。
いつもの時間。
「……エフィさん? やっぱり、ここだったか」
背後から、穏やかな声がした。
振り返ると、エリアスが立っていた。
手には、ノートを持っている。
「あ、ごめん。邪魔だったかな?」
「いいえ。……用件は?」
エリアスは少し考えてから言った。
「今日の君の契約理論の術式、ずっと気になってた。
あれ、教科書どおりじゃないだろう?
それを聞きたくって」
エフィは、わずかに目を細める。
(……気づくのね)
「ええ。効率が悪いから、変えているだけ」
「やっぱりか。
すごいな。精霊が嫌がってない。
むしろ、居心地が良さそうだった」
その言葉に、エフィの心が微かに揺れた。
(……そんなところまで、見ている)
沈黙。
だが、不快ではなかった。
(……この人は、本当にすごい)
「……ねえ」
エフィは、初めて自分から声をかける。
「エリアスさん……もしよければ……。
次の演習、一緒に組まない?」
エリアスは一瞬驚き――それから、柔らかく笑った。
「光栄だよ。
君となら、きっと楽しい。
……ああ、さん付けはいらないよ。エリアス、でいい」
その返事に、エフィも微笑む。
「それなら私も、エフィ、でいいわ。
よろしくね、エリアス」
その瞬間、二人は理解した。
この相手なら。
肩書きも、期待も、孤独も越えて。
――対等に話せる。
そして、もっと知りたいと思える相手だと。




