SS エフィ・クラヴィス辺境伯令嬢
エフィ視点のSSになります。
読まなくても、本編に影響はありません。
王国の盾と称されるクラヴィス辺境伯家は、代々、王家に連なる者たちを守護する役目を担ってきた名門である。
エフィ・クラヴィス。
その長女として生を受けた彼女は、幼い頃から、己に流れる血の使命を、疑うことなく受け入れていた。
そして同時に――その期待に応えるだけの才を、早くから示していた。
座学、実技。
どの分野においても、彼女は常に頭一つ抜けていた。
その実力は、歴代でも類を見ないものだと評されるほどであった。
やがて、その才に惚れ込んだ王家の人間たちが、次々とエフィの力を求めるようになる。
近衛、護衛……あるいは……“陰”として。
誰もが羨むほどの名誉ある誘い。
そして名誉ある地位を約束されていた。
――だが、エフィは決して首を縦に振ることはなかった。
王妃を前にした時でさえ、彼女は静かに目を閉じると、首を横に振った。
(魅力的な誘いなのは、分かる。
皆が私の力を必要としてくれていることも……)
だが、胸の奥に、どうしても拭えない感覚があった。
(……ダメだ。
光が、見えない)
力を求められ、人と会うたびに。
エフィの心は、少しずつ疲弊していった。
(この人も……違う)
そうして彼女は、やがて“声”を聞くようになる。
澄んだ、静かな呼び声――精霊の声を。
そして彼女は、王立学院精霊科への進学を選んだ。
*
入学後も、その才能は群を抜いていた。
誰かと競う意識すら持たぬまま、気づけば成績表の最上段に名を連ねている。
当然のように首位を走り続け、当然のように首席の座を守ったまま、中等部へと進級する。
周囲がどれほど努力を重ねようとも、その位置が揺らぐことは、ついぞなかった。
周囲の視線は、いつしか畏敬から諦観へと変わっていった。
(……皆、この程度なのね)
自覚はあった。
己が優れていることも、周囲との隔たりも。
だが、それを否定する材料は、当時の彼女の周りには存在しなかった。
自分が“選ばれる側”であること。
その自覚が、いつしか慢心へと変わりかけていた、その時――。
天狗になりかけていたエフィの鼻を、容赦なく折る者が現れた。
留学先から帰国し、中等部より精霊科へ編入してきた一人の少年。
その名は――エリアス・グラン侯爵令息。




