辺境伯領へ5
城の大扉が開かれる。
ギルノードに導かれ、レイナルトとカナは城内へと足を踏み入れた。
外の花々とは趣を異にする、落ち着いた香木の匂いと、磨き上げられた石床の冷ややかな感触。
高い天井から差し込む光が、柔らかく回廊を照らしている。
やがて広間に入ると、そこには、たおやかな佇まいの夫人と、二人の少女が並び、深く頭を下げて待っていた。
「ようこそお越しくださいました、レイナルト第一王子殿下、聖女カナ様」
柔らかくも凛とした声が響く。
夫人は穏やかに微笑んだ。
「ギルノードの妻で、エスティーヌと申します。
こちらは、エフィの妹でございます。双子の――イリシャとリゼア」
その言葉に合わせ、二人の少女が揃って一礼する。
「「どうぞ、よろしくお願いいたします」」
そしてエスティーヌは、優しい眼差しをエフィへ向ける。
「そしてエフィ……お帰りなさい。元気そうで何よりよ」
「お母様……ありがとうございます」
エフィは一歩進み、丁寧に礼を返す。
「イリシャ、リゼアも……元気そうね」
「「はい。お姉さま」」
双子は声を揃え、少し照れたように微笑んだ。
エフィは軽く息を整えると、レイナルトとカナに向き直る。
「レイナルト殿下、カナ様。
二人はこの春より、王立学院へ入学することになっております。
諸事情により中等部からの編入ですが、初等部の課程はすでに修了しております」
エフィは言葉を区切ると、双子を振り返った。
「イリシャは精霊科、リゼアは魔術科を志しております。
未熟な点も多いかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします」
「そうなのですね……!」
カナは思わず声を上げ、ぱっと表情を明るくした。
「中等部でしたら、ご一緒ですね。
こちらこそ、どうぞ、よろしくお願いいたします」
その言葉に、イリシャは頬を淡く染め、胸に手を当てる。
「聖女様とご一緒できるなど……感激しております。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
リゼアも一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。
「至らぬ点も多いかと存じますが、精一杯学ぶ所存です。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
そのやり取りを見守っていたギルノードが、軽く咳払いをする。
「こらこら、お前たち。
殿下と聖女様を、立たせたままではないか」
「あ……まあっ!」
エスティーヌははっとして、目を見開き、慌てて一礼する。
「これは大変失礼いたしました。
どうぞ、こちらへ」
そう言って身を翻し、奥へと導く。
花咲く辺境伯領の城の中で――温もりが溶け合う、静かな時が流れていた。




