辺境伯領へ4
重厚な正門が開かれ、護衛たちが一斉に敬礼する。
その中心から、一人の壮年の男性がゆっくりと歩み出た。
漆黒の外套を肩に掛け、堂々とした立ち姿。
鋭さと温かさを併せ持つ琥珀色の瞳。
その視線には、領地を守る者としての威厳と、誠意が宿っていた。
「ようこそお越しくださいました、レイナルト第一王子殿下。
そして……聖女、カナ様」
深く礼をするその声は落ち着いていて、よく通る。
「辺境伯、ギルノード・クラヴィスにございます。
お二人のご訪問、心より歓迎いたします」
柔らかくも堂々とした気配に、思わずカナは背筋を伸ばす。
レイナルトが微笑んで応じる。
「急な訪問になったが、出迎えに感謝する」
「とんでもございません。
殿下とカナ様がお越しくださるなど、我が領の誉れ。
また、この花の季節にお越しいただけたこと、領主として心より嬉しく思います。
――どうか、お疲れを癒していただきたい」
ギルノードはそう言うとカナに向き直り、穏やかに目を細めた。
「カナ様。
この地は、厳しさを抱えながらも、美しさを誇る土地です。
どうか――花々と風の祝福が、あなた様に安らぎをもたらしますように」
その真摯で優しい言葉に、カナは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。
本当に……夢のような場所ですね」
その言葉に応えるように、花咲く木々の枝がそよぎ、花びらがふわりと舞った。
夕陽に染まる辺境伯領――。
こうして、カナとレイナルトの新たな数日が、静かに幕を開けた。




