ヴェルデン王宮-夜のサロン3-
レイナルトは深く息を吐くようにしてソファーの背に身を預けた。
柔らかな沈黙が落ちる。
「さて……ここからは、レオニス殿下とリュシエル殿下の話になるが──」
低く落ち着いた声に、場の空気が再びすっと引き締まった。
「お二人が学院に来られるのは……新学期が始まってから一か月後を目途にしたい」
その言葉に、一同が息を呑む。
「一か月後!? ずいぶん早いね、兄さん」
目を丸くしたセオが、思わず声を上げる。
レイナルトはゆっくりと頷いた。
「学院の新学期と、横断交流に関することで二週間。
さらに落ち着くまでに二週間は必要だろう。
ゆえに、一か月後あたりが妥当と判断した」
そして言葉を区切ると、続ける。
「恐らく──お二人は既に、行きたい学科を決めておられるだろう。
だが、横断交流を経てから正式な所属科を決める形にしたい。
……カナ。お二人へ、その旨を伝えておいてほしい」
「はい。わかりました」
カナは頷く。
「では、俺の話はこのくらいにしよう」
レイナルトは満足げに目を細めると、ゆるやかに上体を起こした。
部屋に再び静寂が落ちる。
「……さて。ここからは──」
彼の視線が、すっとセオとミリアへ向けられた。
「お前たちの話を、聞きたい」
その声に、セオとミリアは背筋を伸ばした。
*
セオはミリアと頷き合うと、静かに口を開く。
「ノーザリアにおける、北部鉄道事業は順調だよ。
……えっと、確認なんだけど……。
エルハイムとは“王室間の交流”なんだよね?
王国間の貿易ではないとすると……延伸はしなくていい、という理解でいいよね?」
レイナルトは頷いた。
「ああ。検討の結果、“交流”という形に落ち着いた。
その方が、多方面で互いに負担が少ないだろう」
セオはふっと表情を和らげ、笑みを浮かべた。
「わかった。うん、そうだね。
僕もそれが最善だと思うよ。
アルも、ベルトラム卿だけじゃなくて、枢密院にまで話を通してくれたようだし……サラのお父上、ライアスも最前で動いてくれている。
それで、ライアスがノーザリアに戻る前に、伯爵も一緒に、話をしに行くつもりなんだ」
レイナルトは満足げに目を細めた。
「……そうか。かなり順調に進んでいるようで何よりだ。
さすがだな、二人とも」
セオはにこりと頷くと、すっとミリアに視線を向けた。
短い視線のやり取り。ミリアもまた、小さく頷き返す。
レイナルトはそのやり取りを捉え、わずかに眉を寄せた。
「……何かあったか、ミリア嬢」
名を呼ばれたミリアは、ひとつ息を飲むと視線を落とす。
「……はい。
これは……父から聞いた話なのですが……」
彼女は両手を膝の上でそっと握りしめ、俯いたまま、ゆっくりと語り始めた。




