ヴェルデン王宮―夜のサロン2―
思わず前のめりになるカナに、レイナルトは微笑んだ。
「これは精霊庁の強い意向もあるのだが……。
あれほどの力を秘めた者たちを“早く欲しい”そうでな。
中・高等部の座学を、一年ですべて行うことになった。
精霊科は高等部不在、という部分も大きいな。
まあ……事実上の飛び級と考えてくれて良い。
つまり、君たちも――あと一年で卒業になる」
セオが息を呑む横で、ミリアが恐る恐る手を上げた。
「えと、あの、殿下……座学だけ、と仰いましたか?」
「そうだ。実技は申し分ないと、精霊庁長官と、学院長のお墨付きを貰っている」
レイナルトはそう告げ、一度言葉を切って全員を見渡す。
そして、静かに続けた。
「――そして。
これは学院初の試みだが……。学科の“横断交流”を行う」
その言葉が意味する未来が掴めず、皆が目を丸くする。
*
セオが首を傾げた。
「え? 横断交流?
それって例えば、精霊科と魔術科とか?」
「ああ、そうだ」
レイナルトは静かに頷き、続けた。
「精霊科は特殊な学科だから、他の学科から入ることは難しいだろうが。
だが――君たちは、他の学科へ行くことができる。
例えば……アルトリウスが騎士科に行く、とかだな」
その言葉に、アルトリウスの瞳がぱっと輝いた。
「それは……ぜひ! お願いしたいです!!」
立ち上がりそうな勢いで答えるアルトリウスは、隣のセオを振り返る。
「セオも! 一緒に行こうよ!」
セオは、その勢いに苦笑しつつも、どこか嬉しそうに頷いた。
「なるほど……それは面白い試みだね。
そういうことができるのか……」
レイナルトはその反応に目を細め、言葉を続ける。
「これは、以前から検討されていたことだ。
騎士科と言えど、剣には魔力を乗せるからな。
魔術科にも騎士の才能を持つ者はいるだろう。精霊科にも……な。
ゆえに、互いの強みを学び合うため、学科を越えた横断交流が図られることになった」
ユリアンが問いかける。
「具体的には、何をするのですか?」
「主に合同授業だ。連携授業なども組まれる予定だ」
サラが確認するように言葉を添える。
「それはつまり……騎士と魔術師、そして精霊術師の、合同連携実践も含まれるということですね」
「ああ、そのとおりだ」
レイナルトははっきりと頷いた。
そしてしばし間を置くと、言葉を重ねた。
「これは……アルトリウス、すでにお前が来ていることと、さらにレオニス殿下とリュシエル殿下を受け入れることが、大きく後押しになった。
持ちうる力を最大限に活かすため……最適な環境を整えるために、横断交流を行うべきだ、と通したんだ」
皆は言葉を失う。
だが、それぞれが胸の内で、新しい未来の訪れと、変化を感じ始めていた。




