ヴェルデン王宮―夜のサロン―
夜。
カナとレイナルトは並んで歩き、静まり返った廊下を抜けて、サロンへと向かった。
扉を開くと、セオとミリアが、驚愕の表情を浮かべている姿が見えた。
「……すまない、遅くなった」
レイナルトはそう告げると、カナと共にソファへ腰を下ろす。
ユリアンが、穏やかな表情で口を開いた。
「兄上。
セオとミリア嬢には、私とサラ、そしてアルから、一通りお伝えしました。
それと、母上のところへも三人で伺い、報告も済んでおります」
「……そうか。さすがだ、ユリアン。
ああ、陛下にノーザリアの魔脈の件を報告したところ、後ほどサラ嬢、アルトリウスと共に私室へ、とのお言葉だ」
「わかりました。兄上」
ユリアンの返事に、レイナルトは頷く。
セオはまだ呆然としたまま、何度もまばたきをしながら、兄とカナを交互に見つめる。
「……ねえ、兄さん、カナも……。
僕、全然理解が追いつかないよ。
ノーザリアの魔脈の話も、すごく驚いたけどさ……!
でも……! エルハイムとの交流なんて……っ!
すごい、本当にすごい話だよ!!」
驚きと興奮で、セオの声が大きくなる。
レイナルトは、弟に穏やかに微笑みかける。
「……ああ。本当にな。
俺も未だに信じられないくらいだ」
ミリアはセオの横で目を丸くしたままだった。
やがて、はっとしたようにカナへと向き直る。
「……カナ。
カナとアル様の、エルハイムでのお話も……ほんと全部がびっくりしすぎて……!
ほんとにもう……何を聞いたらいいかもわからないくらいだよ」
カナはミリアに笑顔を返す。
「すごく楽しかったよ。
エルハイムって本当にきれいな国で、見たことのない精霊たちがたくさんいて。
知らないことばかりで……とても貴重な経験をたくさんさせてもらったの」
ミリアは胸に手を当て、感嘆の声を漏らす。
「はぁ……やっぱり……カナって、すごいんだね……」
まっすぐな瞳で向けられた言葉に、カナは照れたように首を傾け、微笑んだ。
ミリアの声に、サラがくすっと笑みを漏らす。
「ミリア。私も初めて聞いたとき、まったく同じことを言ったよ」
「えっ? サラも?」
サロンの魔導灯がゆらめき、皆の影を優しく揺らしていた。
*
レイナルトが静かに口を開く。
「レオニス殿下とリュシエル殿下の件に入る前に……。
まずは、今後の学院の在り方について、話しておこうと思う」
「え? 学院の在り方?」
セオが瞬きをし、眉を寄せて問い返す。
「ああ」
レイナルトは頷くと、ユリアンとサラへと視線を向けた。
「まずは――ユリアンとサラ嬢。
君たちは飛び級が認められた。
休みが明けたら、ふたりは高等部だ」
ユリアンとサラは、同時に目を見開いた。
「えっ! ……高等部、ですか?」
ユリアンが思わず聞き返す。
レイナルトは続けた。
「そうだ。
二人とも成績優秀者であることに加え、ノーザリアへの貢献が評価され、勘案された。
そして――今後のノーザリアとの関与も見据えて、という判断だ」
ユリアンは言葉を探したのち、静かに息をついた。
「そう……ですか……」
サラは、少し緊張した面持ちで頷いた。
「承知いたしました。
不安もありますが……精一杯努めます」
「……良い返事だ」
レイナルトは穏やかに頷いたのち、今度は視線をカナ、セオ、ミリアへと移した。
「次は精霊科についてだが……。
中等部と高等部の内容を、一年間で行うことになった」
「えっ?」
カナは思わず身を乗り出す。
「ど、どういうことでしょうか?」




