特待生オリエンテーション
扉を開けた瞬間、陽光が差し込む落ち着いた部屋の中に、学院長セレスタンと、数人の教師が待っていた。
セレスタンは穏やかな笑みを浮かべ、手を広げて迎える。
「よく来てくれました、カナさん。王国でも稀なる才能を持つ者を、
この学院に迎えられたことを心から嬉しく思います。
どうかここで、安心して学んでください」
「……ありがとうございます……よろしくお願いします」
カナは緊張しつつも、一歩前に出て深く頭を下げる。
セレスタンは柔らかく頷き、手元の冊子を開いた。
「まずは、学院生活の基本的な規則について説明します。
寮生活の決まり、授業や実技演習の進め方、そして精霊との接し方……」
落ち着いた声が静かな部屋に響く。
カナは一つひとつを真剣に聞き、時折メモを取りながら、
胸の奥に新しい日々の輪郭を感じていた。
説明を終えると、セレスタンは背後に控える教師たちを紹介した。
「こちらは精霊科の教師陣です。
まず――レフル先生。精霊学の基礎理論を担当しています」
眼鏡をかけた中年の男性が、穏やかに会釈をした。
「ようこそ、カナさん。
授業では精霊の歴史や理論をしっかり学んでいただきますが、焦らなくて大丈夫ですよ」
「そして、ソフィーネ先生。実技と精霊との対話を担当します」
淡いラベンダー色のローブを纏った女性が、優雅に微笑む。
「精霊との会話に関しては、あなたに学ぶことの方が多いかもしれませんね。よろしくお願いします」
「最後に、ハルド先生。精霊魔法の応用と防御術を教えます」
大柄な男性が一歩前に出て、低い声で言った。
「学ぶことは多いですが、あなたならきっと大丈夫だ」
教師たちの紹介を終えると、セレスタンが再びカナに視線を向けた。
「カナさん。昨日もお話ししましたが、あなたには、通常の課程に加えて、特別な授業を設けます」
カナは思わず息を呑む。
「……はい。伺いました」
セレスタンはその様子を和らげるように、ゆっくりと語り続けた。
「まずは今日の午後から、精霊科の授業に合流し、クラスの皆と学んでください。
そして、別途用意する特別授業で、魔力の覚醒と制御を学びます」
「魔力……覚醒……」
カナが首をかしげると、レフルが優しく答えた。
「今はまだ魔力の流れが閉ざされています。
けれど、精霊があなたを選んだのですから、その力は必ず目覚めるでしょう。
それを安全に導くのが、我々教師陣の役目です」
ソフィーネが頷き、やわらかな声を添える。
「心配しなくていいの。特待生だからといって、特別扱いされるばかりではありません。
むしろ、皆と一緒に学ぶ時間を大切にしてほしいのです」
カナはその言葉に胸の緊張が少しほどけ、静かに微笑んだ。
「……わかりました。よろしくお願いします」
セレスタンは満足げに頷き、最後にこう告げた。
「では、午前中は学園の生活に慣れ、午後から精霊科の教室に行ってください。
授業が終わったら、初めての特別指導を始め、……あ、いや」
セレスタンは一瞬、逡巡したのちに続ける。
「カナさん、もしよければ、魔力覚醒に向けた“感応練習”を始めてみませんか?」
カナは一瞬目を見開き、すぐに頷いた。
「……やってみたいです」
セレスタンは満足げに微笑む。
「では、先生方と一緒に訓練室へ参りましょう。
午後からは精霊科の授業に合流し、他の生徒たちと共に学んでいただきます」
立ち上がった教師たちと共に、カナは部屋を後にした。
長い回廊を抜けると、魔力の流れを感じる特別な訓練室が待っている。
これから始まる新しい世界に、カナは少しわくわくしていた。
――ここから、自分の新しい日々が始まるのだ。




