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【15万PV大感謝!】精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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森から来た少女

加奈が森の出口から姿を現した瞬間、村は騒然となった。


石畳の坂道の先、ブレザー姿の少女が一人、陽だまりを背にゆっくりと歩いてくる。

黒髪にリボン、膝下丈のスカート――この世界には存在しない、見慣れない服装。


「お、おい……あれ、女の子じゃないか?」

「森から……出てきたのか? いや、まさか……精霊の森に入るなんて――」

「人間か……? それとも――」


訝しげな視線が飛び交い、子どもたちは母親の後ろに隠れ、大人たちは警戒をあらわにした。

誰もが息を飲み、彼女を凝視した。


「あ……あの、私、迷ってしまって……」


「大丈夫かい? しっかりおし。倒れそうじゃないか」


恐る恐る声を出した加奈に、最初に駆け寄ったのは、小柄な老女だった。


(……え? 私、日本語でしゃべったのに……通じてる?)


それだけじゃない。周囲の人たちの声――この世界の言葉も、耳に自然に入ってくる。

まるで、頭の中で言葉が“変換されている”かのように。


(なんで……?)


戸惑う加奈に、老女の優しい手がそっと腕を取る。


「森を抜けてきたのかい? まさか、あの“精霊の森”から?」


その温もりに、加奈の張り詰めていたものがふっと緩んだ。

彼女は下を向いて頷く。


「村長を呼んできておくれ! 精霊の森から、娘さんが……!」





ほどなくして現れたのは、威厳と温和さをたたえた老人だった。

灰色の髭、穏やかな瞳、堂々とした立ち姿――彼が村長のエダンだった。


「わしが村長のエダンじゃ。安心していい。お嬢さん、名前は?」


「……深水加奈(ふかみかな)、あ……えっと、カナ、です」


「そうか、カナ。よく無事で出てこれたのう。

君の話を聞こう。ひとまず、うちに来なさい」


案内されたのは、村の高台にある大きなレンガ造りの二階建ての家だった。

外観は素朴だが、清潔でぬくもりのある空間。


風通しがよく、陽の光が差し込む、手入れの行き届いた家だった。


「まぁ……この子が。ほんとに、森から……?」


やわらかな声で出迎えたのは、村長の妻、マリナ。

緑のスカーフを巻き、少し丸みを帯びた姿から、穏やかさと包容力がにじみ出ていた。


「まあまあ、そんなに緊張しなくていいのよ。疲れてるでしょう?」


彼女は、カナの肩にそっと手を置いた。


「大丈夫。ここは安全よ。あなたのこと、私たちがちゃんと守ってあげるから」


その一言に、カナは胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。





マリナの用意してくれた温かいハーブティーと焼き菓子を前に、カナは森での出来事を話した。


気が付いたら森にいて目覚めたこと、風の精霊・シルヴィアと名乗る存在が現れ、声を聞いたこと――。

言葉に詰まりながらも、それが信じてもらえるかどうかもわからず、不安なまま語った。


だが村長夫妻は、最後まで遮らずにじっと聞いてくれた。


「精霊の声が……聞こえる、とな……。

……信じがたい話じゃが、わしらも昔から“精霊の森”には不思議があると聞いとる。

君がそこから出てきた時点で、何かの加護を受けとるのは間違いあるまい」


村長は深く頷いた。


 

その夜、マリナはふかふかのベッドを用意し、

夜にはあたたかいシチューと焼きたてのパンを出してくれた。


「しばらく、うちにいなさい。疲れを癒して、心を落ち着けてね」


「……ありがとうございます……」


カナは初めて、この異世界で、心から安心した。





それからの日々、カナは村で静かに過ごし始めた。


朝はマリナと一緒に洗濯物を干し、パンを焼く手伝いをする。

昼間は畑の野菜の収穫や、道具の手入れを教わった。


最初は物珍しさから距離を取っていた村人たちも、

カナが一生懸命に働く姿を見て、少しずつ打ち解けていった。


「カナちゃん、今日も手伝いありがとうな」


「ほら、これ食べてって。さっき採れたばかりのイチゴじゃよ」


笑顔で声をかけてくれる人たち。

子どもたちはすっかり懐いて、「カナお姉ちゃん!」と腕に抱きついてくる。


中でも、村長夫妻の孫の”ティオ”は、いつもカナの後をついてまわる。

最初は隠れて様子を見ていた彼も、すぐにカナになつき、毎朝「おはよう!」と大きな声で呼びに来るようになった。


「カナ、今日も森の話して! 風の精霊って、ほんとにいるの?」


「……うん。たぶん、いる。すごく小さくて、綺麗な光だったの」


「すっげぇ……!」


その無邪気な目を見つめながら、カナはふと、この世界に来てからの時間を思い出していた。


(私……こんなふうに、誰かに笑いかけられるなんて……)


異邦人であることに、違いはない。

それでも、ここには確かに「優しさ」があった。


風のそよぎ。土のぬくもり。人の温もり。

ここで過ごす日々が、カナの心に静かに根を張りはじめていた――。


「カナ。君はここに来る運命だったのかもしれないよ」


そう言ったのは、村長だった。

夜、火の灯る食卓で静かに言ったその言葉が、カナの胸に染み込んでいく。


彼女の新しい日々は、ここから静かに始まっていった。

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