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学院長面談

朝食を終える頃には、カナの表情は来た時よりもずっと柔らかく、口調も砕けたものになっていた。

ミリアが勢いよく話し、サラが時折たしなめる――そんな賑やかなやり取りが、不思議と心地よかった。


「またお昼一緒に食べようね!」


ミリアが手を振ると、サラも軽く笑って頷く。


「次は校内の案内もしてあげる。じゃあ、また後でね」


「うん、ありがとう。」


カナは胸の奥がほんのり温かくなるのを感じながら、手を振り返す。


ホールを出ると、待っていたマーサが近づいてきた。


「初めてのホールで、よく頑張られましたね。

……それでは、この後は学院長先生との面談になります。どうぞこちらへ」


カナは少し緊張を取り戻しながらも、先ほどの温かい空気が心を支えてくれるのを感じた。





寮を出て学園の中央棟へと向かうと、荘厳な建物が目の前にそびえる。

大理石の階段を上り、重厚な扉の前で立ち止まると、マーサが軽くノックした。


「カナ様をお連れしました」


内側から「お入りください」と穏やかな声が響く。

扉がゆっくりと開き、精霊の紋章が刻まれた静謐な室内が広がった。


書棚に囲まれ、古い魔導書と精霊石が並ぶ学院長室の奥で、

白髪の老紳士がゆったりと席を立ち、優雅に一礼した。


「遠路はるばる、よく来てくださいましたね。

――私はこのセレス王立学院の院長、セレスタンと申します。

あなたが、特待生のカナさんですね」


その声は、静かで包み込むような響きを持っていた。


「はい。はじめまして。カナ、です。

よろしくお願いいたします」


カナは深く頭を下げる。

セレスタンは頷くと柔らかな笑みを浮かべ、奥の席を示した。


「そして……もうお一人、ご紹介しましょう」


カナの視線の先、窓辺の光の中に立つ青年が、ゆっくりとこちらに歩み出た。


金色の髪が光を受けて輝き、深い蒼の瞳がまっすぐカナを見つめる。

その立ち居振る舞いは気品に満ち、普通の生徒ではないことは一目でわかった。


「王国第一王子、レイナルト殿下です」


セレスタンの声に、カナは思わず息を呑んだ。


(お、王子……様!? なぜここに……?)


レイナルトはゆったりと一歩前に出て、優雅に一礼した。


「はじめまして、カナ。

遠路よく来てくれたな。旅はさぞ大変だっただろう」


その声音は穏やかだが、どこか凛とした威厳がある。

カナは慌てて立ち上がり、ぎこちなく頭を下げた。


「は、はいっ……! ありがとうございます……」


レイナルトは軽く微笑んだ。


「私はこの学院の高等部で騎士科を専攻している。

精霊学とは分野が違うが、君が不自由なく学べるよう、後見役を務めることになった。

困ったことがあれば遠慮なく頼ってくれ」


セレスタンが頷きながら付け加える。


「殿下は学院の生徒であると同時に、あなたの安全と学びを支えるお立場です。

また、精霊学を深く理解するため、時折、特別授業にもご一緒いただく予定です」


(王子様が……後見役……? 一緒に授業まで……?)


カナは情報量の多さに目まいがする。

レイナルトが席に座るのを横目に見ながら、胸の鼓動を落ち着けようとした。


「……あの……どうぞよろしくお願いいたします……」


深々と頭を下げるカナの様子に、レイナルトは柔らかな笑みを浮かべていた。

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