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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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カナの夢

加奈は、ふわふわとした夢の中を漂っていた。

遠くで、自分を呼ぶ声がする。


――カナ!


……誰だろう? 知っている声のはずなのに。



はっと目を開けた。

そこは、見慣れた学校の教室だった。


「おはよ。加奈ちゃん、ぐっすりだったねー? もう授業終わったよ」


隣の席から、友達の美玖(みく)が笑いかけてくる。


「え……? 私……寝てた?

そ、そうなんだ。ありがとう」


「ねえ。もう帰るでしょ? 駅まで一緒に行かない?

あ、もし時間あったら、駅前のドーナツ屋さん寄ってかない? 新作が出たんだってー!」


「あ、うん。いいね」


加奈は立ち上がりながら、胸の奥に小さな違和感が広がるのを感じた。

けれど、その正体はまだ、言葉にならなかった。





美玖と並んで校門を出て歩き出す。

横断歩道の信号が青に変わった瞬間、加奈はふと足を止めてしまった。


「どしたの? 加奈ちゃん?」


美玖が振り返る。


「あ、ううん……ごめん。なんでもない」


慌てて歩き出し、笑顔を作ってみせる。

そのとき、美玖の視線がカナの手首に向いた。


「ねえ、そのブレスレット、可愛いね。

加奈ちゃんが学校にそういうのつけてくるのって、珍しいよね」


「……え? あ、これ?」


カナは無意識にブレスレットに触れる。


「素敵だな、と思って。

……買った、の……」


――買った? 私が? いつ……?

胸の奥に、説明できない違和感がじわりと広がっていく。


「そうなんだー」


美玖は軽く笑い、そのままカナの髪へ視線を移した。


「その髪飾りも、リボンも可愛い。似合うねー!」


「あ、ありがとう……?」


――髪飾り? リボン……?

いつ買ったのか、まったく覚えていない。





美玖と一緒にドーナツショップに入る。

甘い香りに包まれ、色とりどりのドーナツを選んでいく。


「買えてよかったー!」


満面の笑みで振り返る美玖に、カナも微笑み返す。


「あってよかったね」


二人の手には、紙箱に入ったドーナツ。


「うん。付き合ってくれてありがとう!

じゃーね! また明日」


「うん、バイバイ」


駅の改札で手を振り合い、カナは電車に乗った。

最寄り駅で降り、自転車をこいで帰路につく。


自宅のドアを開けると、キッチンに立つ母の姿が見えた。


「おかえり、加奈ちゃん」


「……お母、さん?」


母が手を拭きながら近づいてくる。


「あら、どうしたの?」


「あ、ごめん……えっと、あ、これ、おみやげ」


手にしていたドーナツの紙箱を差し出す。


「まあ、ありがとう」


「……着替えてくるね」


カナは靴を脱ぎ、まっすぐ自分の部屋へと向かった。

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