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第8話: 「竺丸と木刀勝負!…俺の隻眼、弟にも見せるぜ!」

「おいおいおい!飯食ったんだから俺の隻眼、もっと強くなるぞ!」


天正9年、米沢城(山形県米沢市)の庭。人取橋(福島県本宮市)の戦いから数週間経ったある昼下がり、伊達梵天丸が木刀を手にキレ気味に叫んでいた。


初陣で二本松勢を蹴散らし、飯抜きの罰を乗り越えた勢いで、庭で木刀を振り回している。


庭の柵には木刀の傷が目立ち、家臣たちが遠巻きに「またか」と呟き合っていた。


近くで片倉小十郎が汗だくで手をバタバタさせる。苦労人の顔には疲れがにじんでいる。


「殿!飯抜きが明けて良かったですが、そんな大声で叫ばなくても分かりますよ!少し落ち着いてください!」


「落ち着く?小十郎、飯食って俺の隻眼が力取り戻したんだ!天下への夢がもっとでかくなるぞ!」


梵天丸はニヤリと笑い、木刀を振り回す。小十郎が「うわっ!」と飛び退き、「胃が……」と呻く。


「殿、小十郎の言う通りよ。飯抜き明けたんだから、少しはゆっくりしなさい。私だって応援してるんだから」


片倉喜多が穏やかな声で諫める。


小十郎の姉は、梵天丸の肩を軽く叩いて落ち着かせようとする。


「喜多!応援なら俺と木刀で勝負しろよ!飯食った俺の隻眼、負けねえぞ!」


「私は勝負より見守る方がいいよ。殿が元気ならそれで十分」と、喜多がクスクス笑うと、梵天丸はムッとして木刀を柵に叩きつけた。


そこへ、時宗丸がドカドカと庭に飛び込んできた。幼い従兄弟は木刀を手にニヤニヤしている。


「殿、飯抜き明けて木刀振り回してるって!?俺と勝負しろよ!足軽より面白いぜ!」


「時宗丸!お前なら勝負してやるぜ!初陣の主役は俺だから、負けねえぞ!」


「何!?俺だって足軽斬ったんだぞ!お前より俺が強いって!」


「殿が主役です!時宗丸殿は突っ込む前に考えてください!」


と小十郎がツッコむが、時宗丸は「うるさい!」と笑って木刀を振り回す。


柵に新たな傷が増え、小十郎が「胃が限界です……」と呻く。


その騒ぎを見ていた鬼庭左月が、馬から降りて渋い声をかける。


白髪交じりの老家臣だが、背筋はピンと伸び、槍を手に持っている。


「殿、時宗丸殿、飯抜き明けて騒ぐのもほどほどに。初陣の足軽戦は罰になりましたな。わしなら馬で勝負するが」


「左月じいちゃん、罰?俺の隻眼で足軽倒したのが何で罰なんだよ!お前とも勝負してやる!」


「わしとやるなら馬で来なされ。木刀じゃ物足りん」と左月が渋く笑うと、小源太が勢いよく飛び込んできた。


「殿!俺も木刀で勝負だよ!飯抜き我慢したから負けねえ!」


梵天丸と同い年の幼馴染、小源太は目をキラキラさせ、小さな木刀を手に持っている。


左月の息子だ。


「おお、小源太!お前なら勝負だ!俺とお前で最強になるぞ!」


「小源太、お前は落ち着け!勝負する前に暴れるな!」と左月が諫めるが、小源太は「殿と一緒なら負けねえ!」と木刀を振り回す。


その時、庭の奥からちっちゃい声が響いた。


「兄ちゃん、俺とも勝負してよ!」


竺丸だ。梵天丸の弟が、ちっちゃい木刀を手に持ってニコニコしながら現れる。


義姫の影は見えないが、竺丸は一人で庭に飛び出してきたようだ。


「竺丸!お前、木刀持ってるのか!?いいぜ、勝負してやる!」


梵天丸が木刀を構えると、竺丸がニヤリと笑う。


「兄ちゃんの隻眼、カッコいいから俺も強くなりたいんだ!負けないよ!」


「おお、竺丸!お前が強くなりたいなら俺が教えてやる!でも俺には勝てねえぞ!」


そのやりとりを小十郎が慌てて止める。


「殿!竺丸殿と勝負なんてやめてください!義姫様にバレたらまた飯抜きですよ!」


「小十郎、うるせえ!竺丸がやりたいって言うんだから勝負だ!」


庭で二人が木刀を構えると、時宗丸が「面白くなってきた!」と笑い、小源太が「俺も混ざる!」と飛び込む。小十郎が「胃が……」と呻き、喜多が「竺丸ちゃんも元気ね」と微笑む。


左月が「若造どもの勝負か」と渋く笑う中、梵天丸と竺丸の木刀がカチンとぶつかった。


「兄ちゃん、強いね!でも俺だって!」と竺丸が木刀を振り回すと、梵天丸が「竺丸、お前やるじゃねえか!」と笑う。竺丸の木刀が梵天丸の足に当たり、「痛っ!」と梵天丸が飛び跳ねる。


「兄ちゃん、大丈夫!?」と竺丸が慌てると、梵天丸がニヤリと笑う。


「竺丸、お前、なかなかやるな!俺の隻眼、弟にもビビらせてやるぜ!」


二人がまた木刀を構えると、輝宗が庭に現れて笑顔で言う。


「梵天丸、竺丸、兄弟で元気だな。木刀勝負なら俺も見守るぞ」


「父ちゃん!見てろよ、俺の隻眼が竺丸に勝つぜ!」


「兄ちゃん、俺だって負けないよ!」と竺丸が叫ぶ。


その時、義姫がドスドスと現れた。


「梵天丸!竺丸!何!?木刀で勝負だと!?」


「母ちゃん!竺丸がやりたいって言うからだ!」と梵天丸が言い返すと、義姫が扇子を振り上げる。


「言い訳するな!大名の若殿が弟と木刀で斬り合うなんて、あるまじき行為だ!竺丸、お前もだ!」


「母ちゃん、うるせえよ!竺丸が強くなりたいって言うんだからいいだろ!」


「強くなるなら頭使え!木刀で遊ぶなんて馬鹿のすることだ!」


義姫の毒舌に、梵天丸が「何!?」と立ち上がる。


竺丸が「母ちゃん、俺も楽しかっただけだよ」と呟き、輝宗が「まぁまぁ」と笑う。


小十郎が「胃が限界です……」と呻き、喜多が「みんな元気でいいね」と微笑む中、虎哉が飄々と現れた。


「梵天丸、竺丸と勝負して欲が膨らんだな。執着は捨てなさい」


「虎哉じいちゃん、執着が俺の燃料だよ!竺丸と勝負して俺の隻眼、もっと強くなるぜ!」


義姫が「強くなると!?梵天丸、今夜また飯抜きだ!」と叫び、梵天丸が「うるせえ!」と返す。


時宗丸が「母ちゃん強いな」と笑い、小源太が「殿、頑張れ!」と応援する。


竺丸が「兄ちゃん、また飯抜きだね」と呟き、小十郎が「胃が……誰か助けて……」と嘆く中、物語の第八歩が、こうして賑やかに刻まれたのだ。


……とはいえ、母ちゃんの飯抜きがまた来るなんてな、と梵天丸は思ったんだけどな!



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