表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小大名出身の俺が疱瘡で苦しんで独眼になったけど豊臣や徳川と渡り歩いて仙台の大大名になっちゃった件について  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/61

第12話: 「雉肉汁の後で!…俺の隻眼、母ちゃんとも絆だぜ!」

「おいおいおい!母ちゃんの雉肉汁、美味かったぞ!俺の隻眼、力全開だ!」


天正9年、米沢城(山形県米沢市)の広間。初陣から数週間経ったある朝、伊達梵天丸が木刀を手にキレ気味に叫んでいた。


人取橋(福島県本宮市)の戦いで二本松勢を蹴散らし、義姫から雉肉汁をもらった翌日、興奮と満足感で木刀を振り回している。広間の柱には木刀の傷が目立ち、家臣たちが遠巻きに「またか」と呟き合っていた。


近くで片倉小十郎が汗だくで手をバタバタさせる。苦労人の顔には疲れがにじんでいる。


「殿!義姫様の雉肉汁が美味かったのはいいですが、そんな大声で叫ばなくても分かりますよ!少し落ち着いてください!」


「落ち着く?小十郎、母ちゃんが飯くれたんだぞ!俺の隻眼、天下獲る力がもっとでかくなった!」


梵天丸はニヤリと笑い、木刀を振り回す。小十郎が「うわっ!」と飛び退き、「胃が……」と呻く。


「殿、小十郎の言う通りよ。雉肉汁もらったんだから、少しはゆっくりしなさい。私だって応援してるんだから」


片倉喜多が穏やかな声で諫める。小十郎の姉は、梵天丸の肩を軽く叩いて落ち着かせようとする。


「喜多!応援なら俺と勝負しろよ!雉肉汁食った俺の隻眼、負けねえぞ!」


「私は勝負より見守る方がいいよ。殿が元気ならそれで十分」と、喜多がクスクス笑うと、梵天丸はムッとして木刀を柱に叩きつけた。


そこへ、時宗丸がドカドカと広間に飛び込んできた。幼い従兄弟は木刀を手にニヤニヤしている。


「殿、母ちゃんの雉肉汁食ったって!?俺と勝負しろよ!足軽より面白いぜ!」


「時宗丸!お前なら勝負してやるぜ!初陣の主役は俺だから、負けねえぞ!」


「何!?俺だって足軽斬ったんだぞ!お前より俺が強いって!」


「殿が主役です!時宗丸殿は突っ込む前に考えてください!」と小十郎がツッコむが、時宗丸は「うるさい!」と笑って木刀を振り回す。柱に新たな傷が増え、小十郎が「胃が限界です……」と呻く。


その騒ぎを見ていた鬼庭左月が、馬から降りて渋い声をかける。白髪交じりの老家臣だが、背筋はピンと伸び、槍を手に持っている。


「殿、時宗丸殿、雉肉汁で騒ぐのもほどほどに。義姫様の飯は貴重ですな。わしなら馬で我慢するが」


「左月じいちゃん、母ちゃんの雉肉汁、美味かったぞ!俺の隻眼、これで天下獲る力が強くなる!」


「義姫様がそうやってくれるなら、わしも馬で走る楽しみが増えますな」と左月が渋く笑うと、小源太が勢いよく飛び込んできた。


「殿!俺も雉肉汁欲しかったよ!飯抜き我慢したから勝負だ!」


梵天丸と同い年の幼馴染、小源太は目をキラキラさせ、小さな木刀を手に持っている。左月の息子だ。


「おお、小源太!お前なら勝負だ!雉肉汁食った俺とお前で最強になるぞ!」


「小源太、お前は落ち着け!勝負する前に暴れるな!」と左月が諫めるが、小源太は「殿と一緒なら負けねえ!」と木刀を振り回す。


その時、広間の奥から穏やかな声が響いた。


「梵天丸、竺丸、ちょっと来なさい」


義姫だ。梵天丸の母ちゃんが、扇子を手に持って現れる。


隣には竺丸がちょこちょこついてくる。梵天丸の弟だ。


「母ちゃん!竺丸!何だよ、また飯抜きか!?」


梵天丸が木刀を下ろすと、義姫が少し目を逸らして言う。


「飯抜きじゃないよ。昨日雉肉汁食ったんだから、今日は少し静かにしろ。竺丸もだ」


「母ちゃん、雉肉汁くれたのに静かにしろって!?俺の隻眼、騒いで強くなるんだぞ!」と梵天丸が驚くと、義姫が扇子を軽く振る。


「お前が嫌いなわけじゃないよ。隻眼で天下獲るなら、ちゃんと食って元気でいろ。だが騒ぐのはほどほどにな」


竺丸がニコニコしながら言う。


「兄ちゃん、母ちゃんの雉肉汁美味しかったね!俺、兄ちゃんの夢応援してるよ!」


「竺丸!お前、最高だな!母ちゃん、少し分かってくれてるなら嬉しいぜ!」


梵天丸がニヤリと笑うと、義姫が小さく呟く。


「少し分かると!?梵天丸、調子に乗るなよ。だが夢がでかいのは認める」


小十郎が慌てて言う。


「義姫様、雉肉汁の次に静かにしろなんて……胃が痛い俺が言うのも何ですけど、殿が喜んでますよ!」


「小十郎、お前は胃のこと気にしてろ!この子が元気なら少しはいいが、足軽と斬り合うのはもうやめなさい!」


喜多が穏やかにフォローする。


「義姫様、殿と竺丸ちゃんが元気でいいですね。私も嬉しいですよ」


「喜多、お前は優しすぎる!この子は厳しくしないとダメだ!」


時宗丸がニヤニヤしながら言う。


「母ちゃん、殿が雉肉汁食っても俺がカバーするよ!足軽斬ったくらい平気だ!」


「時宗丸、お前も黙れ!お前まで足軽斬ってたら許さん!」


小源太が目を輝かせて叫ぶ。


「殿、俺も雉肉汁欲しかったよ!次は一緒に食おうぜ!」


「小源太、お前までか!左月、お前の息子だぞ、なんとかしろ!」と義姫が怒鳴ると、左月が渋く笑う。


「義姫様、小源太は元気なだけですな。わしも雉肉汁なら馬で走った後に食いたいです」


「左月、お前までふざけるな!この家、どうなるんだ!」


騒ぎを見ていた輝宗が、笑顔で言う。


「義姫、梵天丸と竺丸が元気で何よりだろ。雉肉汁まで出して、お前も少し分かってるじゃないか」


「輝宗!お前が甘やかすからこうなるんだ!だが……元気なら、まあいいさ」と義姫が目を逸らす。


「父ちゃん!母ちゃんが少し分かってくれたなら最高だ!俺は天下獲るんだから、雉肉汁で夢をでかくする!」


「夢をでかくする?お前、隻眼で天下獲るなら頭使え!足軽や弟相手に暴れるな!」と義姫が言うが、声は少し柔らかい。梵天丸が「母ちゃん、少し分かれよ!」と笑うと、輝宗が「ほらな」と微笑む。


そこへ、虎哉が飄々と現れ、静かに言う。


「梵天丸、雉肉汁で欲が膨らんだな。執着は捨てなさい」


「虎哉じいちゃん、執着が俺の燃料だよ!母ちゃんの雉肉汁食って、俺の隻眼、母ちゃんとも絆だぜ!」


時宗丸が「母ちゃん優しいな」と笑い、小源太が「殿、頑張れ!」と応援し、竺丸が「兄ちゃん、雉肉汁また食べたいね」と呟く。


小十郎が「胃が……やっと少し楽に……」と呻き、喜多が「殿、良かったね」と微笑む中、物語の第十二歩が、こうして賑やかに刻まれたのだ。


……とはいえ、母ちゃんの愛情、もっと欲しいな、と梵天丸は思ったんだけどな!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ