表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小大名出身の俺が疱瘡で苦しんで独眼になったけど豊臣や徳川と渡り歩いて仙台の大大名になっちゃった件について  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/61

第10話: 「父ちゃんと飯食う!…俺の夢、でかく育てるぜ!」

「おいおいおい!やっと飯抜きが終わったぞ!俺の隻眼、力全開だ!」


天正9年、米沢城(山形県米沢市)の広間。初陣から数週間経ったある朝、伊達梵天丸が木刀を手にキレ気味に叫んでいた。


人取橋(福島県本宮市)の戦いで二本松勢を蹴散らし、竺丸との木刀勝負で再び飯抜きを宣告された罰がようやく明け、目の前には飯が並んでいる。


広間の柱には木刀の傷が目立ち、家臣たちが遠巻きに「やっとか」と呟き合っていた。


近くで片倉小十郎が汗だくで手をバタバタさせる。苦労人の顔には疲れがにじんでいる。


「殿!飯抜きが明けて良かったですが、そんな大声で叫ばなくても分かりますよ!少し落ち着いてください!」


「落ち着く?小十郎、飯抜きで腹減ってたんだぞ!これで俺の隻眼が天下を獲る力になる!」


梵天丸はニヤリと笑い、木刀を振り回す。小十郎が「うわっ!」と飛び退き、「胃が……」と呻く。


「殿、小十郎の言う通りよ。飯抜き明けたんだから、少しはゆっくり食べなさい。私だって応援してるんだから」


片倉喜多が穏やかな声で諫める。


小十郎の姉は、梵天丸の肩を軽く叩いて落ち着かせようとする。


「喜多!応援なら飯もっと持ってきてくれよ!俺の隻眼、腹いっぱいにして夢をでかくするんだ!」


「腹いっぱいになるまで食べてね。義姫様が許してくれたんだから」と、喜多がクスクス笑うと、梵天丸は木刀を下ろして飯に手を伸ばした。


そこへ、輝宗が広間に現れ、笑顔で言う。


「梵天丸、飯抜き明けたんだな。父ちゃんと一緒に食おうぜ」


「父ちゃん!一緒に飯か!いいぜ、俺の隻眼、父ちゃんに見せるぜ!」


梵天丸がニヤリと笑うと、輝宗が穏やかに座る。飯を手に持つ輝宗の顔には、息子への愛情がにじんでいる。


「初陣で足軽と斬り合った話、母ちゃんに怒られたんだろ。でかい夢持ってるのはいいが、少しは頭使えよ」


「父ちゃん、頭使うって母ちゃんと同じこと言うなよ!俺の隻眼で天下獲るんだから、これくらい平気だ!」


「お前が元気ならそれでいいさ。飯食って夢をでかくしろ」と輝宗が笑うと、梵天丸も飯を口に運びながらニヤリと笑った。


その時、時宗丸がドカドカと広間に飛び込んできた。幼い従兄弟は木刀を手にニヤニヤしている。


「殿、飯抜き明けたって!?俺は昨日も飯食ったから元気だぜ!」


「時宗丸!お前、飯食ったなら俺に分けてくれても良かっただろ!初陣の主役は俺なんだから!」


「何!?俺だって足軽斬ったんだぞ!飯は俺の分だ!」


「殿が主役です!時宗丸殿は飯を分ける前に考えてください!」と小十郎がツッコむが、時宗丸は「うるさい!」と笑って木刀を振り回す。柱に新たな傷が増え、小十郎が「胃が限界です……」と呻く。


その騒ぎを見ていた鬼庭左月が、馬から降りて渋い声をかける。白髪交じりの老家臣だが、背筋はピンと伸び、槍を手に持っている。


「殿、時宗丸殿、飯抜き明けて騒ぐのもほどほどに。初陣の足軽戦は義姫様を怒らせましたな。わしなら馬で我慢するが」


「左月じいちゃん、母ちゃんがうるせえだけだよ!俺の隻眼で足軽倒したのが何で悪いんだ!」


「義姫様がそう言うなら仕方ないですな。だが飯食って元気なら、わしも馬で走る楽しみが増える」と左月が渋く笑うと、小源太が勢いよく飛び込んできた。


「殿!俺も飯抜き我慢したから、今日一緒に飯だよ!」


梵天丸と同い年の幼馴染、小源太は目をキラキラさせ、小さな木刀を手に持っている。


左月の息子だ。


「おお、小源太!お前なら分かるよな!飯食って俺とお前で最強になるぞ!」


「小源太、お前は落ち着け!飯食う前に暴れるな!」と左月が諫めるが、小源太は「殿と一緒なら飯がもっと美味い!」と木刀を振り回す。


その時、広間の奥から鋭い声が響いた。


「梵天丸!何!?飯抜き明けてまた騒いでるのか!?」


義姫だ。梵天丸の母ちゃんが、ドスドスと足音を立てて現れる。


長い髪を結い上げた姿は威圧感たっぷりで、手には扇子を握り潰す勢いで持っている。隣には竺丸がちょこちょこついてくる。梵天丸の弟だ。


「母ちゃん!竺丸!飯抜き明けたんだから騒ぐだろ!」


梵天丸が木刀を下ろすと、義姫が一気にまくし立てる。


「騒ぐだと!?初陣で足軽と斬り合い、竺丸と木刀で勝負した罰がやっと明けたのに、まだ反省してねえのか!大名の若殿がそんな下賤な真似をするなんて、あるまじき行為だ!」


「反省?母ちゃん、俺は初陣で勝って竺丸とも絆深めたんだぞ!飯抜きばっかりじゃねえか!」


「絆だと!?足軽と斬り合い、弟と木刀で遊び回るのが絆か!お前、伊達家の恥だよ!」


義姫が扇子を振り上げると、梵天丸は「うるせえ!」と木刀を地面に叩きつけた。


竺丸がニコニコしながら言う。


「母ちゃん、兄ちゃんの隻眼カッコいいよ!飯抜きでも強かった!」


「竺丸!お前、母ちゃんにそう言えよ!俺の隻眼、飯食ってもっと強くなるんだ!」


「梵天丸!竺丸を巻き込むな!竺丸、お前は黙ってなさい!」と義姫が一喝すると、竺丸は「はーい」と縮こまる。


小十郎が慌てて仲裁に入る。


「義姫様、殿と竺丸殿は兄弟で仲良くしただけです……胃が痛い俺が言うのも何ですけど、少し落ち着いてください!」


「小十郎、お前まで甘やかすな!この子は跡取りなんだぞ、足軽や弟と斬り合うなんてありえん!」


喜多が穏やかにフォローする。


「義姫様、殿と竺丸ちゃんは元気でいいですよ。私が見てるから大丈夫です」


「喜多、お前は優しすぎる!この子はもっと厳しくしないとダメだ!」


時宗丸がニヤニヤしながら言う。


「母ちゃん、殿が飯抜きでも俺が飯食ってカバーしたよ!足軽斬ったくらい平気だ!」


「時宗丸、お前も黙れ!お前まで足軽斬ってたら許さん!」


小源太が目を輝かせて叫ぶ。


「俺も殿と一緒に飯抜き我慢したよ!今朝の飯、最高だ!」


「小源太、お前までか!左月、お前の息子だぞ、なんとかしろ!」と義姫が怒鳴ると、左月が渋く笑う。


「義姫様、小源太は元気なだけですな。わしも飯食って馬で走るのが楽しみですよ」


「左月、お前までふざけるな!この家、どうなるんだ!」


騒ぎが続く中、輝宗が梵天丸に近づき、穏やかに言う。


「梵天丸、お前の夢、でかいのは分かるよ。母ちゃんもお前の元気を認めてるさ。ただ、少し頭使ってやれ」


「父ちゃん、頭使うってまたそれか!でも母ちゃん、少し分かってくれてもいいよな?」


「少しは分かってるさ。お前が元気なら俺はそれでいい」と輝宗が笑うと、梵天丸もニヤリと笑った。


その時、義姫が扇子を手に持ったまま呟く。


「元気ならいいだと?輝宗、お前が甘やかすから……まあ、夢がでかいのは認めるがな」


梵天丸が「母ちゃん!?」と驚く中、義姫が小さく笑って目を逸らし、竺丸が「母ちゃん、兄ちゃんの夢カッコいいよね」と呟く。


輝宗が「ほらな」と笑い、喜多が「殿、良かったね」と微笑む。小十郎が「胃が……」と呻き、虎哉が飄々と現れる。


「梵天丸、飯抜き明けて欲が膨らんだな。執着は捨てなさい」


「虎哉じいちゃん、執着が俺の燃料だよ!父ちゃんと飯食って、俺の夢もっとでかく育てるぜ!」


時宗丸が「母ちゃん強いな」と笑い、小源太が「殿、頑張れ!」と応援する中、物語の第十歩が、こうして賑やかに刻まれたのだ。


……とはいえ、母ちゃんの目はまだ怖いな、と梵天丸は思ったんだけどな!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ