はじまり
木々が揺れる、木漏れ日が濡れた土に射す、世界は光りに包まれてこんなにも綺麗なんだ。
コンクリート造りの無機質な教室の窓から景色を覗いていた。
外には同じような灰色の風景が広がり、この空間の無機質さを一層引き立てている。子供たちはこの機械的な空間の中で、スクリーンに向かって座り、授業を受けていた。
「…このように昔は地上で生活をしていたが、戦争によって今では地上はこのように汚染され荒廃し住むことができない場所になってしまっているんだ。」
初老の男性は、目の前の子供たちにそう話す。そして高層ビルやタワーなど昔の写真と、戦争によって崩れたそれらの建物たちを映し、戦争の悲惨さを語った。
この世界の人々は皆シェルターの中で生活をしている。
今から百五十年ほど前、人類は大規模な戦争を引き起こした。大国同士の争いに端を発したその争いは次第に世界に広がり、無関係な国たちも巻き込んでいくことになっていった。この国も直接の戦闘には参加していなかったが、補給をしているという理由で主要な町がが焼かれることとなった。建物が崩れ、木々が燃え、地上が住めない場所になってくると、世界の人々はその戦火から逃れるためにシェルター生活を余儀なくされた。戦争が長期化すると、国全体がシェルターとなり、その中での生活が日常となっていった。人々は地下での生活に順応し、その中で生まれた子供たちも増えていた。二世、三世と世代を重ねるうちに、地上での生活は昔話となり、子供たちにとっては教科書に載っている遠い世界という認識になっていった。