表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

夜伽

「じゃあ、俺は寝るけど、翠玉はどうするの?」


 なんやかんやで反政府軍のリーダーに就任した日の夜。

 人生で初めて風呂に入らずに寝るというのは俺にとって非常に重要なことであるのだが、それと同じくらい護衛である翠玉の寝床というのは大事なことだった。


「どうするって?」

「いや、一応俺の護衛だから」

「だから、私はここにいるけど……?」

「別に隣のテントで寝てていてくれればそれでいいんだけど、そういう訳には……」

「すぐに闇討ちに対応するにはここにいないと」

「ですよね」


 実際に翠玉は剣を肌身から離すことなく携え、少しリラックスした様子でベッドの傍に立っている翠玉。

 なんかベッド大きくなった?

 いや、そんなことより、こんなのでは翠玉のことが気になってしまって寝るどころではない。


「まさか夜の間ずっと立ってるつもり?」

「えっと……地面で寝るわ」

「背中痛めるからそれはやめなさい」

「御意」


 そこは大人しく従うのか。

 うーん、俺の事を考えてくれてるのはありがたいけれど、いい妥協点はないだろうか。


「翠玉が良ければだけど、昼間に比べて絶対大きくなってるこのベッドで一緒に寝る……とか」

「なるほど……いいわね」

「あくまでも俺の護衛のためであって………………マジ?」


 試しに言ってみただけなのに、すでに翠玉は主であるはずの俺よりも先にベッドに横になってしまっている。

 もちろん、剣を離すことは無い。

 いや、先に寝転がること自体は別にいいんだけど……。


「……寝ないの?」

「寝る! 寝るよ!」


 こういうところで後に引けなくなってしまう俺の性格は果たして良いのやら悪いのやら。


「失礼しまーす」

「失礼しますって……このベッドは一応あなたの物なのよ?」

「そうなんだけどさぁ……」


 翠玉の視線を受け止めながらベッドに寝転がる。

 改めて本当に大きいのだと感じる。

 翠玉と二人で使っているはずなのに、狭いと感じるどころか、むしろ余裕があるくらいだ。


「……なんでそんなに端っこで寝てるのよ?」

「いやほら、近づきすぎたら翠玉が嫌がるかなって思って」

「同じベッドで寝てるのに今更そんなこと気にしないわよ。別に嫌じゃないわ」

「そ、そう……」


 そう言う翠玉は本当に気にしていないみたいだった。

 翠玉からすれば近づかれることより、自分が守らなければいけないはずの主が自分に気を使っていることの方が気になるらしい。


「じゃあちょっとだけそっちに寄るよ」

「ええ」


 そして沈黙が訪れる。

 日本で住んでいた時とは違って電気がないため、テントの中は非常に暗い。

 それに、掛け布団なんてものは存在しない。

 やはり勝手はかなり違う。

 昼間は疲れからすぐに寝てしまったが、こうして落ち着いてみるとそういう細かいことが何となく気になってくる。


「……すぅすぅ」

「もう寝てるし」


 俺の護衛である翠玉は気持ちよさそうな寝息をたてて、早くも夢の世界へと誘われていた。

 もし俺が何も言っていなかったら、立ったまま寝ていたのだろうか。

 そんな世界線を想像しながら翠玉の方を向いてみる。


「……すぅ」

「…………」


 この子めっちゃ美人なんだよな。

 昼とは違って少し乱れている長い黒髪に、暗闇の中でもハッキリとわかるみずみずしい唇、小さめの鼻。

 全てがこの少女の美しさを構成していた。

 

 今まで彼女がいた事はなく、ベッドで女の子と一緒に寝るという経験は当たり前に無い。

 そんな俺は翠玉の顔を見ていると今夜は寝ることができそうになかったので、体を反転させて視界から翠玉を消す。

 それでもしばらく胸が高鳴っていたが、そのうち睡魔と興奮が戦いを始めて、俺も夢の世界に落ちていった。

読んでいただきありがとうございました!

良ければ、評価や感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ