表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】追放されたおっさん鍛冶師、なぜか伝説の大名工になる〜昔おもちゃの武器を造ってあげた子供たちが全員英雄になっていた〜  作者: 青空あかな
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/38

第37話:我らは永久に不滅だ(Side:エージェン①)

「おのれ、デレート! 私たちの計画をことごとく邪魔するなんて!」


 デレートが【カラミティ】を修復し、悪霊が再度封印された――。

 それを見届けた私は、すでに王都を後にしている。

 人目につかない森の中を抜け、下町に向かう予定だった。

 今は一刻も早くここを離れなければ。

 しかし……。


 ――……その後はどうする。


 魔族とは、連絡を取っていない。

 立て続けに3回も失敗してしまった。

 いくら私たちが特別な人間でも、さすがにお咎めなしとはいかないだろう。

 待つのは死だけだ。

 ならば、一度同胞の元へ戻るか?

 それでも厳しい状況が待っているのは想像に難くない。

 失敗者の境遇は私もよく知っている。

 思案しながら歩を進めているときだった。


「待ちなさい」


 突然、目の前に一人の女が舞い降りた。

 私と同じ黒い髪で、手には長い杖を持っている。

 魔法使いだな。

 そして、こいつは追手だ。

 目を見ればわかる。

 だが、まだ私が“理の集い”の人間であること、そしてシーニョンをけしかけたことは知られていないはずだ。


「はい。私に何のご用でしょうか?」

「とぼけないでください。あなたは“理の集い”の人間ですね? 全部わかっています。バイヤー教頭を操作して危険な杖を配ったのもあなたです。彼の記憶を復元しました」

「おっしゃっている意味がわかりませんが。申し訳ありません、急いでいますので……」

「今回の悪霊の件もあなたが関わっているのでは?」


 こいつは手練れだな。

 見たところ20代半ばだが、かなりの実力者のようだ。

 ここで捕まれば私の記憶も洗われてしまう。

 いや、それよりもシーニョンが捕まれば、芋づる式に私の行いも明らかとなる。

 そして、あの無能はすでに捕らえられているだろう。

 ということは……。


「私が“理の集い”の一員だからどうした。そんなことは関係ない。貴様はここで死ぬのだから」


 隠し持っていたナイフを引き抜いた。

 逃げ切るにはこいつを殺すしかない。


「……そのナイフにも闇魔法が宿っていますね。禍々しいオーラです」

「さすがにわかるか。これに切り裂かれると、傷口から闇魔法が身体を浸食するぞ」



【闇侵しのナイフ】

属性:闇

ランク:S

能力:切り傷や刺し傷から闇魔法を送り込む。耐性のない者は、瞬く間に体が腐り落ちていく。



 私が持っているのは魔族より授けられた一刀。

 完全なる殺戮の武器だ。

 今まで、どんな邪魔者もこれで抹殺してきた。


「これ以上罪を重ねてはいけません。投降しなさい」

「……」


 慎重に間合いを計算する。

 こいつがいくら強くても問題はない。

 魔法使いたちは必ず呪文の詠唱が必要だ。

 そして、発動する魔法が強力であればあるほど長くなる。

 相手がいかに手練れだろうと、一瞬の隙をつけば十分に勝機はある。

 かすっただけでいいのだから。


「はっ!」


 両足に力を込め、猛ダッシュで間合いを詰める。

 たった三歩の距離。

 私の身体能力なら、中級魔法でさえ余裕を持って躱せるはずだ。

 そう、詠唱の隙があるのだから……。


「<セイント・ロック>!」

「な、なに!?」


 突然、女の杖から白い光線が放たれた。

 いや、光でできた縄だ。

 避ける間もなく私に襲い掛かる。

 ぐるぐると巻き付き、少しも身動きが取れなくなってしまった。

 女は涼しい顔で私を見ている。

 こ、これはまさか……。


「無詠唱魔法だと!? 貴様、何者だ!」

「私はただの魔法使いですよ。いいえ、正しくはデレート様が造った杖を持っている魔法使いですね。この杖は無詠唱魔法を可能にしてくれるのです」

「デレート……」


 その名を聞いた瞬間、怒りを通り越しもはや呆れるばかりだった。

 またあいつか……。

 稀代の鍛冶師、デレート。

 あの男はどこまで私の邪魔をすれば気が済むのだ。


「もうあなたは逃げられません。観念しなさい」


 縛られた衝撃で【闇侵しのナイフ】を落としてしまった。

 これ以外の武器はない。


「そうか……私の負けか。あの男に負けたんだな……」


 私の計画は全てデレートによって破綻した。

 ここまで私を追い詰めるなど、敵ながらあっぱれと言わざるを得ない。

 だが……。


「私たちは永久に不滅だ! 魔族が支配する世界を必ず創ってやる! お前たちが間違っていることを絶対に証明してみせる! 私の同胞が必ず……!」

「<セイント・スリープ>」


 女が呪文を唱えた瞬間、急速に眠くなってくる。

 まずい……寝てはダメだ……。

 必死に寝まいと抵抗するが、瞼が容赦なく垂れ下がってくる。


 ――デレート……あいつは要注意人物だ。ただの鍛冶師ではない。同胞に知らせなければ……。


 あがく間もなく、私は暗い意識の底へ深く深く落ちていった。

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


少しでも

・面白い!

・楽しい!

・早く続きが読みたい!

と思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!


評価は広告下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にタップしていただけると本当に嬉しいです!

ブックマークもポチッと押すだけで超簡単にできます。


何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ