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【書籍化】追放されたおっさん鍛冶師、なぜか伝説の大名工になる〜昔おもちゃの武器を造ってあげた子供たちが全員英雄になっていた〜  作者: 青空あかな
第三章

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第36話:後悔と終わり(Side:シーニョン⑨)

「シーニョン、貴様はどこまで愚かなのだ? 悪霊を封じていた剣を折るなど……そのような愚か者に出会ったのはわらわも初めてだ」

「うっ……」


 兵士たちに捕まった僕は、“陛下の間”に連行されていた。

 全身を縄で縛られ、少しの身動きもできない。

 いや、身動きできないどころか、痛みで心身ボロボロだ。

 こうなったのもデレートのせいだな。

 どうしてくれる。

 この場にいないあいつに対して、沸々と怒りが湧いてくる。

 これが終わったら復讐してやるのだ。


「デレートという稀代の鍛冶師を師匠につけても、貴様の無能は治らなかったようだな。もう一生治らないものだと、わらわもよく分かったわ」

「な、なんですと!? その言い方には納得できません! そもそも、僕は無能じゃ……」


 真っ向から否定してやろうと思ったが、女王陛下の顔を見て言葉を飲み込んでしまった。

 哀れみと哀しみ……たった2つの感情しかない。

 怒り溢れる様子より、その表情の方がよほど恐ろしかった。


「さて、シーニョン。貴様の処遇だが……」

「は、はい」


 思わず素直に答えてしまったが、次の瞬間にはいつものように強気になれた。

 はっ!

 処遇?。

 今の僕じゃ地方都市のギルドマスターじゃ納得しないぞ。

 まぁ、最低限、国軍の専属鍛冶師だな。

 デレートの大事なポジションを奪ってやる。

 ついでに、あいつの女どももな。

 うん。

 やはり、僕は心が強い人間のようだ。


「我が国に死罪はない。よって、貴様は監獄行きとする」

「…………え?」


 女王陛下が放った言葉は、僕の心に冷たく突き刺さった。

 か、監獄行き……?

 死罪のないグロッサ王国では最大の刑罰だ。

 な、なぜ、この僕がそんな目に遭わなければならない。


「もう貴様の顔さえ見たくもないわ。さぁ、連れて行け」

「お、お待ちください、女王陛下! 僕はギルドマスターまで勤めた人間なのですよ! そんな有能な人間を監獄行きにするなど、国家としてのロスは測り知れませ……ああああ!」

「だから貴様は無能なのだ! なぜ自覚できない!」


 鞭の激しい衝撃が身体を襲う。

 も、もう勘弁してくれ。

 僕は悪くないのに。


「「さあ、来い! お前の居場所はここじゃない! 地下牢だ!」」

「うぐっ! こ、こら、もっと丁寧に接しろ!」


 兵士たちに身体を掴まれ、地下室へ連れて行かれる。

 牢屋に着くと、乱暴に押し込まれた。


「ここがお前の終の棲家だ。死ぬまで外に出られることはない。立派な家で良かったな」

「壁に向かって意識の高さとやらを一生語っていてくれ」

「こいつのせいで王宮は大変なことになった。でも、デレートさんがいれば大丈夫だろう。あのお方がいらっしゃってくれて本当に良かったぜ」

「ま、待て……待ってくれ」


 すがりつくように格子の隙間から手を出したが、兵士たちはスタスタと去っていく。

 一人、ポツンと取り残される。

 牢屋はどこからか雨漏りしており、常にじっとりと濡れている。

 壁には何匹もの気色悪い虫が。

 こ、こんなところで残りの人生を送るのか?

 そんなの絶対にイヤだ。

 認めてなるものか。


「時よ戻れ! 頼む、巻き戻ってくれ! 時間よ戻れえええ!」


 力の限りいくら叫んでも何も起こらない。

 ちくしょう……なんでだよ。

 僕は選ばれし人間なのに。

 がくりと膝をついたとき、僕は自分の愚かさをようやく理解した。


 ――間違っていたのは……まぬけは僕だったんだ。


 鍛冶ギルドにいながら槌も握らず根回しばかり。

 自分の仕事は同僚にやらせる。

 興味があるのは、自分を良く見せる方法を考えることだけ。

 人の評価ばかり気にする毎日を送る。

 金属板の加工もできないギルドマスター。

 考えれば考えるほど救いようのない愚か者だ。

 脳裏に一人の男が思い浮かぶ。

 こんなクズの相手を30年もしてくれた男だ。


「デレート……デレート! どこだあああ! 頼む、ここから出してくれええ! 修行するから! 修行頑張るからさあああ!」


 まさしく、最高の師匠だった。

 あいつの言う通りにすれば、槌を握ったことがない僕でも簡単に金属の加工ができた。

 指導は優しく、決して声を荒げることもなかった。

 あのまま努力を重ね改心していたら、周りの兵士たちも見直してくれただろう。

 それなのに、せっかく用意してくれたやり直しのチャンスを無駄にした……。

 鍛冶師として人生をやり直すチャンスを……。

 自覚した瞬間、頭の中が真っ白になり、目の前は暗くなっていく。


 ――明るい未来になるはずだったチャンスを……僕は全部自分で捨ててしまったのだ。


 後悔、後悔、後悔……。

 真面目にやれば良かったという遅すぎる後悔に、僕の心は木っ端微塵に砕かれた。

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― 新着の感想 ―
ゴミをどうにかしようと弟子なんかにする采配がそもそも無能の所業だろ 最初から打ち込んでおけば何も問題無かったのにアホか? 自分の無能さには罰を与えないんか?
[一言] エージュンは、無能じゃないんだよ、ただ運が悪かったのは、デレートの存在と、策で使った相手がことごとく無能だった事。 もう少し使えるやつだったら、分からなかったかもしれない。 運が悪かった…
[一言] 結局シーニョンはこうなったか。当然の末路ではあるけど出来ればこうなる前に 改心してほしかったな。
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