第30話:銃の修理と一波乱
「はぁ!? お前なんかにできるわけないだろ! 調子乗んな! 金属板もまともに加工できないだろうがよ!」
「どうせまた壊すだけだろうが。何を言ってるんだ、あいつは」
「もっと修行してから言えよな。ほんと理解できないぜ」
あっという間に非難の嵐が巻き起こる。
シーニョンはすっかり周囲の信用を失っているらしい。
当の本人はプルプルと憎しみに震えている様子だ。
「パパ~、あんなオジサンに修理されたくない~。だって大事な銃だもん」
「あ、ああ、そうだよな。じゃあ貸してごらん」
「僕にリペアさせろ! お前に力の差を見せつけてやるんだ!」
「うわっ、やめろよ、シーニョン」
いきなりシーニョンが襲い掛かってきて、ベイオネットの銃を力ずくで奪おうとする。
「シーニョン、離れろ! 乱暴に扱うな」
「僕がリペアするんだああ! お前に力の差を見せてつけてやる!」
「「何やってるんだよ! 今すぐ離れろ!」」
兵士たちが掴みかかるが、シーニョンは激しく抵抗していた。
無理やり俺から銃を奪うと天高く掲げる。
「僕は道具なんか使わなくても直せるんだあああ!」
「「あっ!」」
シーニョンが力いっぱい撃鉄を握ると、ポキリと折れてしまった。
「壊してんじゃねえか! ふざけんな! 何が道具なんか使わなくて直せるだ!」
「なんでそうしようと思ったし。考えてわからなかったのか?」
「あまりにもクソ過ぎて何も言えない。一回死んでやり直した方がいいんじゃないの?」
一同、大顰蹙。
こいつはマジで何がしたいんだ。
センジさんの一声でシーニョンは取り押さえられる。
「お前はどうしてそんなに無能なんだ!」
「僕は無能じゃない! 有能だ!」
めちゃくちゃにしばかれるシーニョン。
ベイオネットはそれを素通りして、俺の方に慌てて駆け寄ってきた。
「パパー! あのオジサンに銃壊されちゃったー!」
「すまなかったな。だが、大丈夫だ。すぐに直すから」
「やっぱりパパって頼りになるねー。変な臭いオジサンとは大違い」
シーニョンの歯ぎしりしまくる音が聞こえるような気もするが、まずは銃を持って鍛冶場に戻る。
もちろん、ミリタルとイズや兵士たちも一緒だ。
シーニョンも勉強させてもらえ! とセンジさんに連行されてきていた。
しかし、改めて見ると本当に素晴らしい銃だ。
スラリと伸びつつも頼りがいのある銃身、安定感のある銃倉。
魔法陣の術式だってめっちゃ難易度高いよな。
これを俺が造ったのか、信じられん。
「ねぇねぇ、どうやって直すの?」
「そうだなぁ。まずは分解して、清掃しながら歪みを叩いて直していくよ」
【シンケット】を銃身、フォアエンド、撃鉄などがくっついている機関部の3つにバラす。
所々薄っすらと汚れが溜まっていた。
布でふき取りつつ、ついでにオイルをさす。
銃身を抱え上げて後ろから見ると、先端がわずかに反っていた。
チェックしながら槌で叩いて修正する。
魔弾が通るからか、中も少しざらついているようだ。
砥石の粉を使って研磨しながら清掃。
撃鉄は【スチール鉱石】で造ろう。
作業すること小一時間。
「……と、まぁ、こんな感じだな」
ピカピカになった【シンケット】が完成した。
シーニョンに折られた撃鉄も復活しており、新品同様だ。
いや、新品の状態を見たわけではないのだが。
「パパすごーい! 大好きー!」
銃を渡すや否や、ベイオネットが思いっきり抱き着いてきた。
ぷにぷにぷに、と何かを押し付ける。
絵面がよろしくないのでやんわりと退けた。
ミリタルとイズの表情も厳しめだしな。
「ちょ、ちょっと持ってみてくれ。試し打ちとかも頼む」
「えぇ~、そんなの別にいいのに~」
「微調整とか必要かもだから」
「もうっ」
銃を押し付けると、ベイオネットはしぶしぶといった感じで受け取った。
ホッとすると同時に、ミリタルたちの表情が回復する。
「じゃあ、誰か的を用意して~」
「「はっ! 承知しました!」」
ベイオネットが気だるそうに言うと、隊士たちが急いで的の板を準備した。
ああ見えても、彼女はきちんとした隊長なのだと実感する。
ベイオネットが片膝をつき狙いを定めると、銃倉の魔法陣が紫色に光り輝いた。
一呼吸ののち引き金を引くと、銃口からこれまた紫色の波動が放たれる。
なるほど、あれが魔弾か。
初めて見たけどキレイだな……って。
うわっ!
魔弾は的に当たると勢い良く弾け、板は木っ端微塵に吹き飛んだ。
のだが、その衝撃が激しすぎて地面までがっぽり抉れている。
爆風が顔をさらりと撫でた。
「いえ~い、大当たりー! パパー、どうだった?」
「ず、ずいぶんと強い威力なんだなぁ。ビックリしたよ」
まるで大砲のような衝撃だ。
携帯式の銃であんな威力が出たら、それはもう敵にとっては相当な脅威だろう。
「パパの銃がすごいからだよ。ほんのちょっと魔力を込めただけであんなパワーになっちゃうんだから」
「ベイオネットの腕が良いからじゃないのか?」
「違う、違う。パパの銃のおかげ」
地面に空いた大穴を見て、周りの兵士たちもどよめいていた。
「やっぱり、隊長の銃は一味違うな。俺も試し打ちさせてもらったことがあるが、マジでヤバかったんだよ」
「しかも、全然疲れないときた。あんな銃は絶対他にはないな」
「俺の銃もデレートさんにメンテナンスしてもらお。最高の鍛冶師がいるってすごい安心だ」
ありがたいことに、銃士隊の面々も俺を受け入れてくれるようだ。
ホッと一安心だな。
「パパ、大好き~!」
ベイオネットはご機嫌といった様子で俺にくっついてくる。
だからベタベタはやめようね。
ミリタルとイズがピキピキしてるからね。
そして、その様子をこれまた青筋浮かべて眺めているシーニョン。
「なんでお前ばかりそうなんだあああ! 僕は元ギルドマスターなんだぞおおお! 許せない、許せない、許せないいいい!」
「あっ、こら! 待ちやがれ!」
シーニョンはキレながら、どこかへ走り去ってしまった。
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