第27話:魔法学院の特等講師
「デレート殿、ミリタルさん、そしてイズ筆頭教官。学院を魔の手から救ってくださりありがとうございました。まさしく、あなたたちは救世主ですね」
周囲からはパチパチと拍手が聞こえてくる。
バイヤーと鍛冶師を捕らえた後、俺たちは魔法学院の講堂で表彰されていた。
イズたちの必死の看病もあり、闇魔法の影響を受けていた生徒もみな復活している。
周りは笑顔で明るい表情だ。
(エレナ先生は学院長なのに見抜けなかったということで、女王陛下の鞭をいただいたようだ)
「魔力の余波で生じる黒ずみから製作者を見つけ出すとは、さすがは優秀な鍛冶師ですね。称賛に値します」
「お褒めの言葉ありがたく頂戴いたしします。ですが、鍛冶師なら誰でもできることだと思いますので……」
俺がやったことは、別に特別でもなんでもない。
でも、それを評価していただけるのは嬉しいな。
努力してきて良かったと素直に思う。
「デレート殿。貴殿をグロッサ魔法学院の特等講師に任命いたします。今後は鍛冶師の視点から杖の扱い方や整備にご尽力ください」
「ありがとうございます、エレナ先生。鍛冶師として誇りに思います」
特等講師の話は断ったが、結局断り切れなかったのだ。
エレナ先生からすげえ貴重そうなトロフィーを頂く。
大きな水晶みたいな形で、これほどまでに美しい装飾品は初めて見た。
とにかく落とさないように、慎重に慎重を重ねて抱える。
全身全霊だった。
「本当はもっと豪華な宴を開きたかったのですが、後処理が結構大変でして」
「いえいえ、開いていただけただけで嬉しいです。本当にありがとうございました」
昨日、最後の生徒の回復を待って大きな宴が開かれた。
俺たちの功績を讃えてるものだ。
飯と酒がめちゃくちゃ旨くて、最高の時間を送らせてもらえたな。
感謝感謝だ。
記念品の贈呈が終わると、表彰も終わった。
エレナ先生は学院の外まで案内してくれる。
「では、デレート殿。お別れは寂しいですが、またお会いできるのを楽しみにしております。貴殿のような鍛冶師は、グロッサ王国としても貴重な存在です。お身体に気を付けて」
「慌ただしくてすみません。国軍の方の仕事がどうなっているのか確認したくて……」
「ええ、それはそうですよね。こちらこそ引き留めてしまいすみません」
エレナ先生、イズの二人と握手を交わす。
今後は鍛冶場と学院を行き来する生活になりそうだ。
ありがたいことに、移動にはこれを使ってください、と転移ポーションも何個かいただいていた。
これがあればいつでも学院に来れるな。
ミリタルもイズと名残惜しそうに握手を交わしていた。
「イズ、元気でね。あなたにまた会えて私も嬉しかったわ」
「ありがとうございます、ミリタルさん……。わたくしも嬉しかったです」
「イズと離れるのは寂しいけど、また先生と二人っきりに……クックックックックッ」
ミリタルは嬉しそうに何かをぼそぼそと呟いている。
イズはそれを見ると、これまた嬉しそうに言った。
「お言葉ですがミリタルさん。わたくしも王都へ参ります」
「「えっ!」」
俺たちは揃って衝撃を受ける。
だって、なんかもう切ない別れって感じの雰囲気出ていたぞ。
「で、でも、あなたは魔法学院の仕事があるんじゃ……」
「ご心配なく。しばらく休暇をいただきましたので。学院長先生も少し休んで来なさいと快く送り出してくださいましたよ。つまり、わたくしはもう少しデレート様と一緒にいられるということです」
「へぇ……それは良かったわね」
突然、空気がピリついてきたのはなぜだ?
「デレート様、これからもよろしくお願いします」
「え? あ、ああ、そうだな」
ぷにゅっと抱き着いてくるイズ。
何がぷにゅっとしたのかは脇に置いておこう。
ミリタルも笑顔が怖いしな。
ということで、俺たちは三人で王都へ帰ることになった。
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