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【書籍化】追放されたおっさん鍛冶師、なぜか伝説の大名工になる〜昔おもちゃの武器を造ってあげた子供たちが全員英雄になっていた〜  作者: 青空あかな
第二章

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第26話:処罰(Side:バイヤー②)

「さて、バイヤー教頭。詳しく説明しなさい」

「うっ……」


 その後、ワシは学院長の前に突き出されていた。

 女王陛下と同じ絶世の美女……。

 なのだが、その美しい顔からは烈火のごとく怒りが迸っている。

 おまけに右手には鞭が……。


「聞こえないのかしら? 寝ているのかもしれませんね。今起こしてあげましょう」

「ああああ! い、いえ! 聞こえています! 起きています! 話しますので鞭はやめてください!」


 全身をめった打ちにされ気絶しそうになる。

 たった数秒で体力は限界になった。

 な、なぜこの偉大なるワシがこんな目に遭わなければならないのだ……。


「魔法学院の教頭でありながら、危険な闇魔法を杖を生徒に与えるなど言語道断です。どうなるかわからなかったのですか?」

「そ、それは……」

「わからなかったようですね」

「ああああ!」


 瞬時に襲い掛かる鞭。

 もはやワシの身体に無事な部分はどこにもない。

 鞭のダメージは心まで届き、あっけなく折れてしまった。

 もういっそのこと殺してくれ……。

 これ以上苦しむなんてイヤだ。


「さらには、怪しい人物を秘書にしていましたね。しかも、私に報告もなしに。彼女は今どこにいますか?」

「わ、わかりません……ああああ!」

「闇魔法の杖を配った目的を話しなさい」


 も、目的……。

 それを話すのだけは絶対にダメだ。

 話したらどんなひどい目に遭うのかわかったもんじゃない。

 まだ鞭の方がマシだ。

 これだけは話すな、バイヤー。

 よし、意志を強く持っていけ!


「話さないのなら拷問にかけます」

「生徒たちに杖を与えた理由は、学院の中で反乱を起こすためです……ああああ!」


 すかさず襲ってくる鞭。

 もはや、ワシの身体はボロ雑巾のようだ。

 もう勘弁してくれ……。

 しかし、学院長はなおも激しく鞭で叩きながら詰問する。


「学院で反乱を起こしてどうするのです。まさか、それで終わりではないでしょう」

「わ、わかりません……ああああ!」

「早く言いなさい」

「ほ、本当にわからないんです……信じてください……」


 呼吸すら困難になり、人間としての尊厳を完全に失ったような気分だ。

 学院長は呆れた様子で、ため息交じりに口を開いた。


「まさか、我が校の教頭からこのような愚か者が出るとは思いませんでした……デレート殿がいなければ、今頃どうなっていたことでしょうね」

「くっ……」


 反論しようにも、何も思い浮かばない。


「バイヤー、そなたは監獄行きとします。一生牢獄で反省していなさい」

「え……?」


 突如告げられた言葉に頭の理解が追いつかない。

 かん……ごく……行き……って、なに?

 混乱に包まれている間にも、魔法の縄がワシを縛り上げて行く。


「お、お待ちください! 学院長! もうしません! もうしないのでお許しを! 申し訳ございませんでした!」

「謝るくらいなら始めからしなければいいでしょう」


 容赦なく縄で縛られる。

 み、身動きが取れない……。

 学院長が合図すると、何人かの衛兵が入ってきた。

 ワシを雑に掴むと、外にズルズルと引きずっていく。

 向かう先には囚人の運搬に使う馬車が。

 押し込まれながら後悔が湧き上がってきた。


 ――今思えば、あの女は怪しさ満点だったじゃないか。あんなヤツの口車になんて乗らず、素直にデレートたちに話せば良かった……。


 今となっては遅すぎる後悔の海に、ワシはいつまでも、そしてどこまでも沈んでいった。


◆◆◆(三人称視点)


『連日の失態……さすがに見過ごせないな』

「……申し訳ございません」


 作戦の失敗を悟るや学院を抜け出したエージェンは、人目につかない路地裏であの鏡を見ていた。

 黒い影はすでに映り込んでいる。

 顔は映っていないものの、作戦失敗の怒りは彼女にも伝わっていた。


『我らが魔族軍の準備は大詰めを迎えている。不意になってしまったらかなりの損害だ』

「……はっ」

『どうして貴様は失敗してしまうのだろうな』


 魔族の言葉に、エージェンは少しも反論できなかった。

 今回、彼女がバイヤー教頭に接触したのも魔族軍の命令による。

 優秀な魔法使いを輩出する学院を破壊し、グロッサ国を弱体化させるためだ。

 そのために、魔族から貴重な【ドラゲニム鉱石】を貰い鍛冶師に提供、バイヤー教頭を通して生徒に与える。

 秘密裏に進んではいたが、一人の男に阻まれた。

 鍛冶師、デレート。

 おまけに、どさくさに紛れてあいつも始末する予定だったがそれも敵わなかった。


『我らを裏切って、わざとやっているわけではなかろうな?』

「そ、そのようなことはございません! 私は魔族様たちの繁栄を願って行動しております! 信じてください!」

『どうだかな』


 すっかり魔族の信用を失ってしまったようで、彼女がいくら訴えても曖昧な返事をされるばかりだった。

 エージェンは硬く唇を噛み下を向いている。

 彼女は悔しさを感じるとともに、デレートに対する憎しみが募っていた。

 あの男さえいなければ私は……。

 そういったどす黒い感情が心に渦巻く。


『……わかった。今までの貢献を命じて、最後のチャンスを与えよう』

「ありがとうございます! 計画はすでに考えております!」


 エージェンはその詳細を説明する。

 今回の計画は今までのように、裏で画策するものではない。

 もっと直接的に、王宮へ大きなダメージを与えるものだ。

 最後まで聞くと、連絡役の魔族は一言だけ告げた。


『……期待している』


 その言葉を残して、鏡から黒い影は消える。

 取り残されたエージェンは静かにため息を吐いた。

 まだだ……まだ挽回できる。

 立て続けに失敗してしまったが、次の作戦を成功させれば大丈夫だ。

 全てを帳消しにできる。

 しばらく深呼吸すると気持ちも落ち着いた。

 彼女は誰にも見つからないように、グロッサ王国の王都へと急いだ。

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


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